vol.214 植物編から食物連鎖を考える

植物が繁殖のために他の生物を利用することも、自然界にはよく見られます。最も有名なのは、ミツバチとさまざまな植物との関係でしょう。ミツバチは花の蜜を吸う行為を通して花粉を運び、他の花に受粉させます。これは「送粉」といい、ミツバチだけでなく、チョウやガ、また地域や環境によっては、コウモリも送粉を行ないます。洞窟などといった特殊な環境では、ハチやチョウといった送粉者が存在しません。そのため、こうした環境下にある植物は、花の蜜をコウモリに吸わせることで、送粉をしてもらっているというわけです。

受粉して果実を作った植物は、その後、種子を散らし、より広範囲に繁殖していくことを目指します。その際に利用する生物、つまり種子の運搬という作業を協力してくれる存在が、鳥になります。昆虫などに比べると遠くまで飛べる鳥に果実を食べてもらうことで、広範囲に渡って種子を散布してもうらわけですね。
植物は、鳥に実を食べてもらうため、さまざまな工夫を凝らします。熟すと目立つように色づき、果実は鳥が好む味になります。さらに、胚は消化されずにフンとともに鳥の体外に出てくるよう、硬い殻で包まれています。こうした花粉や種子を運んでもらう行為も、昆虫や鳥などに利益があるため、「相利共生」のひとつ。

さて、食物連鎖の右の図をよくみてください。

人間をふくむすべての動物の食べ物は、植物が光合成によってつくる有機物(ゆうきぶつ)が源になっています。そして植物を食べる草食動物が肉食動物に食べられ、その肉食動物の遺骸(いがい)はバクテリアによって分解されるというように、たがいに「食べる・食べられる」関係を食物連鎖といいます。食物連鎖の最下位で、あらゆる命を支えているのが植物です。そんな植物とそれを食べる生物は、単なる捕食・被食の関係というわけではありません。上記にあるように、植物は自ら身を守り、ときには食物連鎖の上位の生物を利用して、したたかに生きています。
食物連鎖の構造にはいくつかの層があります。植物を草食性のこん虫が食べ、これらの草食性こん虫を肉食性のこん虫や小動物が食べています。さらにこれらを食べる、ワシ、タカ、フクロウといった猛禽(もうきん)類、キツネ、タヌキといった肉食ほ乳類がいます。このように生物の量を図にするとピラミッドの形になり、それを生態系ピラミッドと呼びます。生態系ピラミッドは、上位であればあるほど、生きていくために広い自然環境を必要とします。

上図の生態系ピラミッドのように、全ての生きものは他の生きものとお互いに支えあいながら生きています。例えば、特定の地域で、ある種類の昆虫や植物が減った場合、食物連鎖などの影響により他の生きものも減り、生態系全体の危機に繋がります。

人間は肉食動物だから、高次消費者?だから生態系ピラミッドの頂点にいる?そうでしょうか…。人間は火を使い道具を使うことで、上位に位置する動物たちでも倒す力を持った。だけど、そこにどれだけの「畏敬」があるのかは不明…例えば日本。文明を手に入れた人間は、アンブレラ種※と言われるヒグマやツキノワグマの強さを畏敬することを忘れ、開発によって彼らの生息域を狭め、深山に追いやった。
私たち人間は既に大自然を構成する一員ではないのかもしれないし、大自然にとっても、もはや単なる闖入者でしかないのかもしれないね。

※アンブレラ種とは、個体群維持のために、エサの量など一定の条件が満たされる広い生息地(または面積)が必要な種のこと。地域の生態ピラミッドの最高位に位置する消費者である。アンブレラ種を保護することにより、生態ピラミッドの下位にある動植物や広い面積の生物多様性・生態系を傘を広げるように保護できることに由来する概念。
日本では一般的にツキノワグマやヒグマ、オオタカ、イヌワシなど大型の肉食哺乳類や猛禽類がアンブレラ種と言われることが多い。

何も食べなくても成長できる生産者「植物」

すべての動物は食物を探し求め、動き回っています。自らの食物だけでなく、子に与える食物を探し求めて、あちらこちらへと動き回ります。これは、動物が生命を維持していくためには、食物が必要だから。ところが、草花や樹木などの植物は、じっとしていても生きることができ成長します。
私たちは摂食することによりエネルギー源であるブドウ糖を外から取り入れています。
植物はブドウ糖を体内で生産しています。光合成により、光と空気と水から自らのエネルギー源となるブドウ糖を作っている「生産者」です。

すべての生命のエネルギー源は太陽

植物(生産者)は、光合成により水と二酸化炭素からブドウ糖を作るとき、太陽からの光のエネルギーを吸収します。その結果、ブドウ糖の中に光のエネルギーが取り込まれ、蓄えられます。元をたどれば、生命のエネルギー源は太陽ということになります。

すべての動物の食料を賄う生産者「植物」

植物は生物として生きて、成長するために必要な物質(ブドウ糖、デンプン、タンパク質、脂肪、ビタミンなど)を自分で生産することができます。端的に言えば、植物は動物がいなくても生きていけるかもしれません。しかし、動物は植物がないと生きていけません。
食物連鎖の関係をたどっていくと、植物は、地球上すべての動物の食糧(エネルギー)をまかなっていることがわかります。私たち人間は、食糧を植物や動物に依存しています。ウシやブタ、ニワトリなどの動物は、植物の体である葉や茎、根や実などを食べています。「肉食動物」のライオンやチーターなどは、シマウマなどの「草食動物」の肉を食べ、草食動物は「植物」を食べて生きています。
食物連鎖の形態は、数多くありますが、どれも出発点は生産者である植物。植物は、すべての動物の食糧(エネルギー源)を作り出している「生産者」なのです。

 

参考:ACORNコラム、一般財団法人環境イノベーション情報機構、森林・林業学習館

 

 

 

 





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