217号(2024.1&2)」カテゴリーアーカイブ

vol.217 水は土壌に染み込むよね

土壌は、水や空気と同じように、私たち人間を含んだ生き物が生きていく上で、なくてはならない ものです。土壌は、地中にいる生き物が生活する場であり、土壌に含まれる水分や養分が、私たちの 口にする農作物を育てます。 土壌汚染とは、こういった働きを持つ土壌が人間にとって有害な物質によって汚染された状態をい います。原因としては、工場の操業に伴い、原料として用いる有害な物質を不適切に取り扱ってしまっ たり、有害な物質を含む液体を地下に浸み込ませてしまったりすることなどが考えられます。また、 土壌汚染の中には、人間の活動に伴って生じた汚染だけではなく、自然由来で汚染されているものも 含まれます。

土にはどんな役割があるの?
土は、水や空気と同じように、人や生物が生きていく上で重要な基盤(土台)です。また、水を浄化したり、農作物を育てたりする機能を持っています。

土壌汚染って何?
人の活動に伴って排出された有害な物質が土に蓄積されている状態を言います。例えば、
・ 有害な物質が、使用しているときにこぼれたり、有害な物 質を含む排水が漏れたりして土の中に入る。
・ 有害な物質を含む廃棄物が不適切に土に埋められて、雨な どによって有害物質が周りの土に溶け出す。
・ 排気ガスや飛灰の中に含まれる有害な物質が土の表面に落ちる。
などによって土壌汚染が起こります。

土壌汚染には、次のような特徴があります。
◆土壌汚染の原因となっている有害な物質は、水の中や大気 中と比べて移送しにくく、土の中に長い間止まりやすい。
◆また、汚染されていることに気づきにくい(目に見えない)
◆一旦土が汚染されると排出を辞めても長い期間汚染が続く。
◆そのため、人の健康や生態系などに長い期間にわたり影響を及ぼす。
◆揮発性有機化合物は、地下深くまで浸透しやすく、地下水 に溶け出して、その流れに乗って汚染が広がるおそれが大 きい。また、揮発性が高いため、地層中の空気を汚染し、大気へ放出される恐れもある。
◆重金属は、土の中ではあまり拡散しないで止まりやすい。

土壌が汚染されるとどうなるの?
土壌汚染は様々な経路で人の健康や生活環境・生態系へ影響を与えます。放っておくと人の健康などに悪い影響が及ぶおそれがあります。

の健康へ影響を及ぼす可能性のある行為
1、汚染された土が口に入ったり、直接皮膚に触る
2、汚染された土から有害な物質が溶け出した地下水を飲む
3、土から大気に出た有害な物質を吸い込む
4、汚染された土が雨などで流出して川や海に入り、魚を汚染する。こうした魚介類を食べる。
5、汚染された土の上で育てられた農畜産物を食べる。

生活環境・生態系への影響
6、悪臭などの不快感
7、引用される地下水の油膜
8、農作物や飼料用植物の生育阻害
9、生態系への悪影響
これらのうち、まず健康への影響を速やかに把握し、対策を取ることが必要。また、生活環境や生態系への影響については、まだわかっていないことが多いため、効果的な対策を考えるためには科学的なデータをもっと集める必要があります。

土壌汚染による環境リスクとは?
人の健康や生活習慣、生態系へ悪い影響を及ぼすおそれ(可能性)のことを、“環境リスク”と言います。きちんと環境リスクに応じた対策をとればリスクを低くしたり、回避したりすることができます。環境リスクの大きさは次のようになります。土壌汚染による環境リスク=土の有害性の程度×暴露量。 土壌汚染の原因となっている有害な物質の程度と体内に取り込む量(暴露量)とで決まります。
暴露とは、汚染された土が手にくっついて、知らず知らずに土を口に入れてしまったり、汚染された土が飛び散って口に入ってしまったり、汚染された土から有害な物質が溶け出した地下水を飲んだりして体内に取り入れることを言います。

土壌汚染とリスクコミュニケーション
土壌汚染が見つかった場合でも、地域住民と行政と事業者で情報を共有し、対応策などについて冷静に話し合うことで、住民の不安が解消されるようになります。このように情報を共有してお互いの意思疎通を図るプロセスを「リスクコミュニケーション」と言います。
リスクコミュニケーションで重要なことはたくさんあります。
・ 企業や行政が早い段階で情報を出すこと。
・ 情報をわかりやすくして出すこと。
・ 住民が意見を言う機会を作り、住民は積極的に参加すること。
・ 住民の意見を土壌汚染対策に反映させること。

●行政の役割
・ 土壌汚染対策法を的確に実施する。
・ 土壌汚染に関する情報が公正かつ的確に開示されるよう事業者や土地の所有者を指導する。
・ 地域住民に対して、土壌汚染の環境リスク について正しい理解を深めるための啓発活動などを行う。
・ 事業者に対しては土壌汚染の調査、対策のための支援などを行う。
●市民の役割
・ 土壌汚染とその環境リスクについて、正しく理解する。
・ 発見された土壌汚染について事業者が開催する説明会などがあれ ば積極的に参加する。
また話し合いの場では、土壌汚染とその環境リスクについて正しく理解し、次のことを心がける。
・ 言いたいことは言う・ 相手の話をよく聞く・ 冷静に話し合う。

指定支援法人 財団法人 日本環境協会より

 

 

 

 

 

 

 


vol.217 土壌には菌ちゃんがいる!


微生物って素晴らしい!!!
微生物は地球を救う
微生物の活躍なしでは我々の生活は成り立ちません。パンや味噌、醤油、酢製造などの食品分野や食材を作るための畑の土壌微生物、さらに、医療分野では、抗生物質生産菌、現在では、バイオマス燃料などにいたるまで微生物の恩恵を受けていることを解説します。
土の中の微生物には、人間にとって特に有用なものもいます。通常、微生物は生物の死骸や枯葉などを好んで分解するのですが、中にはダイオキシンやPCB、残留農薬など、人間が合成した有害化合物を分解する変り者もいます。このような微生物は、化学物質で汚染した土壌を修復するための、バイオレメディエーション(bio=生物,remediation=修復)と呼ばれる環境浄化技術に利用されています。
自然界にはこうした分解されにくい化学物質をも分解してくれるような微生物が存在します。 そのような微生物、「分解菌」をうまく利用して汚染された環境を修復することを「バイオレメディエーション」といいます。

バイオレメディエーションの仕組みは2つ
1つ目は、土壌中の微生物を元気にする薬剤を汚染土壌に投入し、微生物を活性化させる仕組み。2つ目は外部で培養した元気な微生物を土壌に送り込む仕組み。どちらも、微生物の働きを利用して汚染物質を分解しています。

特徴とメリット
バイオレメディエーションの特徴は、他の浄化手法に比べコストパフォーマンスに優れ、生態系に与える影響が少ない技術であること。メリットは以下の通り。
・広範囲におよぶ汚染の浄化が可能・原位置で作業できる(※)ため作業コストが低い。
・常温、常圧のためエネルギーをあまり必要としない。
・浄化に伴う環境負荷が少ない
※ 汚染された土壌を掘り返したり、地下水をくみ上げたりせずに、その場で浄化作業ができる。

食品や医薬品、エネルギーにも有効なバイオ技術
日本では昔から、味噌や醤油、日本酒や漬物などの身近な食べ物で、微生物を利用した発酵醸造の技術が伝承されてきました。このように微生物は、食品の保存性を高めたりおいしさを増したり、食生活を豊かなものにしています。それだけではなく、抗生物質や薬品、バイオマスエタノールなどの新たなエネルギーの生産など、さまざまな分野で、微生物を有効利用するバイオ技術の研究が進められています。

微生物の分解者としての役割
微生物は、地球の生態系にとって大変重要な働きを担っています。中でも「分解者」としての役割は、地球環境の維持にとって最も重要な事柄の一つ。
生物の排泄物や遺骸などは、しばらくすると、その場からきれいに無くなってしまいます。例えば、植物や動物が死んだ場合、それらの遺骸は虫や菌類、細菌などによって処理され最終的には土に還ります。具体的には、死んだ生物の遺骸は、それを摂取した他の生物体の構成成分や二酸化炭素、水、土壌中の諸物質になります。このように、生物の遺骸や老廃物を栄養源として生きる生物のことを「分解者」と呼びます。分解者には、ミミズや昆虫など、肉眼で確認できる大きさの生物の他に、目に見えない微生物が含まれています。これらの働きで、有機物が最終的には二酸化炭素と無機物に変換され、生態系が保たれています。小型動物が大まかに分解したものを最終的に微生物が分解します。
また、微生物は我々多細胞生物よりも遥かに分解できる物質の種類が多いのが特徴です。人間の科学力ではとても分解できないような物質があったとしても、その物質を地球に住んでいるある微生物がいとも簡単に分解してしまう、というようなケースが非常に多くあります。この理由として、「地球上には様々な種類の微生物が存在しており、それぞれが様々な物質の分解能力を持っている」こと、「微生物は他の生物に比べ、新たな化学反応経路の獲得が大変得意であること」などが考えられます。

「永遠に残る」化学物質
ナノテクと微生物で分解を目指す
ここ数カ月で、複数の企業が食品パッケージから「永遠の化学物質(Forever Chemicals)」を排除する計画を発表しました。永遠の化学物質とは、人体に蓄積するおそれがあり、環境中で分解されない物質のこと。

希望のもてる最新研究
PFASをめぐる懸念のひとつは、人体や環境中にいつまでもとどまる点にあります。「永遠の化学物質」は、時とともに蓄積するおそれがあり、取り除くのは難しい。PFASを含む食品パッケージは堆肥化できず、ごみ埋め立て地を汚染します。そうしたPFAS分解をめぐる問題を解決する方法を研究しているのが、ピッツバーグ大学とニューヨーク州立大学バッファロー校の研究者たち。
この研究で焦点になっているのが、ナノテクノロジーと微生物を用いたPFASの分解だ。ナノマテリアルとPFASを反応させれば、微生物が食べられるくらいの大きさまでPFASを断片化できるかもしれない。研究の目標は、環境からPFASを除去する効率的な処理プロセスを開発することにあります。
この研究で調べられているPFASは15種類だけですが、そこから得られる知見は、さらに幅広い用途に応用できる可能性があるのだそう。研究チームは、PFASの分解の仕組み、副生成物の毒性、化学物質を消費する微生物のパフォーマンスを検証する計画です。

参考:農業環境技術研究所、Academic Presentation、JAPAN Forbes

 

 

 

 

 

 

 

 


vol.217 ぴーふぁす徹底図解


PFASって何? ― 第二のダイオキシン問題

PFASによる人体と環境汚染が進行中です。PFASは、パー(またはポリ)フルオロアルキル化合物の略称です。日本では有機フッ素化合物といい、化学的に最も結合力の強い炭素-フッ素結合を持つ人工化合物の総称です。現在、4700種類以上が存在しています。環境中できわめて分解されにくいため「永遠の化学物質(フォー エバーケミカル)」と呼ばれています。


PFAS にばく露すると免疫力が低下する!
約4700種もあるPFASの毒性はほとんどわかっていませんが、PFOS、PFOAについては、近年の研究から、次のような毒性が明らかになってきました。

1-環境ホルモン(内分泌かく乱)作用:甲状腺ホルモン、男性・ 女性ホルモンなど多様な性ホルモンのかく乱作用
2-発がん性:腎臓がん、前立腺がん、乳がんなど
3-生殖毒性:不妊、低出生体重児の増加など
4-免疫力の低下:感染症にかかりやすくなる
5-肝臓への毒性:肝疾患との関連
6-コレステロール値の上昇
7-潰瘍性大腸炎
環境ホルモンは、ごく微量でも影響を及ぼすので、感受性が高い発達期の胎児や子どもへの影響がとくに危惧されます。

PFOSやPFOAは難分解性・蓄積性からPOPs条約、化審法の規制物質になったものの、毒性が明らかになってきたのは、ここ数年のことです。健康影響の指針となる安全基準値(耐容一日摂取量)は、欧米において、この14年で約5000分の1と規制が強化されてきています。日本では2019年、PFOS、PFOAの耐容一日摂取量はそれぞれ20ng/kg/日、水道水質の管理目標値はPFOS、PFOA合わせて50ng/L 以内(暫定)と設定されました。

国際的な規制と各国の取り組み
環境中での残留性(難分解性)、生物蓄積性、人や生物への毒性が高く、長距離移動性が懸念される残留性有機汚染物質(POPs:Persistent Organic Pollutants)を規制する条約で、PFASのうち、PFOSは製造・使用、輸出入が制限される物質(附属書B)、PFOAは製造・使用、輸出入が原則禁止される物質(附属書A)として指定されています。しかし、日本の規制は世界の後追いです。

中日新聞 2023年12月4日朝刊

 

命を育む水(水道水)が、今限りなく危うい状況となっています。自分たちの命は自分たちで守る!今、ここで動かないと一生後悔する!自分ごととしてこの問題に向き合い一緒に行動・勉強しませんか?
環境・未来・各務原ーPFAS汚染と市政を明らかにする会(代表・小川 麻実)kakamigahara.mizu2023@gmail.com


vol.217 ぎむきょーるーむ ギャングエイジとゴールデンエイジ

 

「ギャングエイジ」とは? ~自立のスタート~
必ずやってくる超反抗期「ギャングエイジ(gang age)」。親にとっては子育ての山場のひとつといえますが、子どもにとっては発達段階における重要な時期。いわば「自立のスタ―ト地点」ともいえます。この時期を上手く乗り切るために、親はギャングエイジをよく理解しておきたいものです。「ギャング」とはチームやユニット、仲間を意味する言葉です。
「ギャングエイジ」の頃は自我が強くなり、生意気な発言が多くなりますが、それは“成長の証”。 ただ親子間、また人付き合いにおいて、あまりにも敬意に欠く発言や態度が見受けられる場合は、強く叱っても良いでしょう。この頃になると、親にウソをついたり、秘密を持つようにもなります。そんな場合、ウソに気づいたとしても、「さすがにこれは」と思うほどのことでなければ、見て見ぬフリをして、見守ることも必要です。それをとがめたり、叱ったりすると、親に何も話さなくなることもあります。

「ギャングエイジ」になれない子どもが増えている?!

ひと昔前は、子どもは日暮れまで外でかけまわって遊んでいたものです。それが最近はそんな子どもの姿はパッタリ見られなくなりました。こうしたことが原因で、子どもが「ギャングエイジ」になれなくなってきていると、懸念されています。
発達心理学での「ギャングエイジ」は青年期以降の社会生活の基礎となります。
親が注意することを以下にまとめてみました。
①塾や習い事を控えめにし、友達と自由に遊べる時間を確保する。
②子どもができることには手を貸さない。過保護では自主性や意欲が育たず、仲間に入れない子どもになってしまう。
③よほどの問題がない限り、子どもの友達を否定したり、遊び方に干渉したり、子ども同士のトラブルに口出しをしない。
子どもは遊びを通じて成長していきます。
「ギャングエイジ」という時期は小学3年~4年のこの時期しかありません。
「ギャングエイジ」の時期を上手く過ごすことができれば、子どもは社会や他人に関心を持ち、自発的に関わりを持とうとするようになります。それが、その先大人になったときの人間関係や社会生活の基礎となり、自然に社会に溶け込むことができるのです。悩める時期であるとは思いますが、子どもをそっと見守り、つかず離れずの距離で見守っていくのが良いでしょう。

 

ゴールデンエイジとは?
子どもの運動神経がググっと伸びる黄金の成長期

『ゴールデンエイジとは?』 ◇9歳から12歳頃をいいます。成長が早い時期の5歳と12歳では身体的違いが大きいので、ゴールデンエイジを「プレ・ゴールデンエイジ(5~9歳)」と「ゴールデンエイジ(10~12歳)」に分けて考えます。プレ・ゴールデンエイジ(5~9歳)の特徴は「神経系の発達」神経系の発達がほぼ完成し、動きの巧みさを身につけるのに最も適している時期です。 ゴールデンエイジ(10~12歳)の特徴は一生に一度だけ訪れる、あらゆる動作を短時間で覚えることのできる「即座の習得」を備えた時期として重要視されています。子どもは、パッと見た直感だけで動きのコツをつかみ、その動作を習得してしまいます。
この時期に色々な運動、スポーツをすることが大切。「好きなこと、面白いことに熱中し、すぐ飽きる」という子どもの特性を利用して体を動かす方向に誘導することは、難しいことではありません。
ゴールデンエイジが注目されるようになった理由は「外遊び」の時間と質が変わったから。外遊びで特に注目したいのが鬼ごっこ、けんけんぱ、缶蹴りなどの“昔遊び”です。
遊ぶことによって、身体を動かし、無意識のうちに運動神経を発達させます。

この二つの時代(エイジ)に共通することは、やはり「遊び」。「遊び」は、幼児の脳や体の発達を促進させます。 追いかけっこや鬼ごっこ、ボール遊びなどの外遊びは、動き回るので心肺機能が向上したり体力がつきます。 また、いろいろな動きを経験するのでバランスよく筋肉がつくのをサポートし、 日光を浴びる適度な運動は、丈夫な骨の育成にもつながります。
遊びは日常的なものであり、その知識や感性は蓄積されていきます。一方で娯楽(ゲームやYouTubeなど)は非日常的なものであり、そこで得たものは蓄積されるのではなく消費されていきます。
遊びは、子どもの「やってみたい」「遊んでみたい」という気持ちから始まる自発的なもの。娯楽もときには大切ですが、基本的には子どもの自発性を大切にした遊びを重視するようにしたいですね。特に、【ごっこ遊びは柔軟性・創造性】が育ちます。
少なくシンプルなアイテムのなかで、子どもは独自のルールや楽しみ方を見つけて、脳を発達させていきます。また、ごっこ遊びをすることでコミュニケーション能力を養うこともできます。さらに【外遊びは社会性】を養います。自然に触れることで触覚や視覚、聴覚などを刺激し、好奇心、想像力などを膨らませることができ、遊具を使ったり自然のなかを駆け回ることで体力、身体能力を高めることができます。

参考:Fungoal、ASTEP


vol.217 しょうがいをみつめる vol.10


日々は常ではないような

 

コロナに罹患した。なかなかしんどい時間を過ごしなんとか回復したが、体力の無さを今更ながら実感している。夫婦順番に罹患していき、”いつ罹ってもしょうがないよね”と少しばかりの余裕もあった。

「コロナ禍」と言われた時期は数年に渡り人々が口にしていたと思うが、思い出すとそれが始まった時期には私はまだ経営者であり、知的障がいの長男と認知症が進んだ母親と同居していた。自分の環境が変わったのだという実感をひしひしと感じる。

今はもう長男・母ともに存在としてこの世にはいない。

コロナが蔓延し始めた頃は”高齢の母親が罹患したらどうしよう”とか”治療や通院が難しい長男が罹患したらどうしよう”とか少ない情報の中で戸惑っていた。社会生活は規制が暗黙的に敷かれ、マスクが日常的に着用出来ない母親にマスク着用や手洗い消毒を促す毎日にイライラしたり、逆ギレされて怒ったりと日常の形が変わった時期でもあった。会社の運営方法にも工夫が必要とされる時期でもあり、自分自身も罹患しないよう経営指揮を執り、細心の注意を払いながら過ごすことが日常となった。

日常という些細な今は、次から次へと過去という形態になり過ぎ去っていく。その積み重ねが日常であり、”今”を過去から見たら”未来”というのであろう。未来とはそんなあるようでないものでしかないようだ。パンデミックという世相は生活習慣や「当たり前」を変えながら、繰り返し変わらないと思っていた日常が「そうではないかも?」と思わせるひとつのキッカケとなったのかもしれない。

簡単に1分先や10年先の未来描くことを私たちは頭の中で巡らせている。しかし当たり前が変化した時、その先は予測できない不安に包まれる。日常的に私たちはまだ起こらない未来に戸惑い、夢を見、自分の心が”今ここにない”ことにどれほどの時間を費やすのだろう。それらの未来を案じる”希望”や”憂い”は自分を突き動かす原動力となり、結果としての喜びや達成感を感じさせてくれたり、悲しみや失望にも形を変えてきた。それに突き動かされることは悪いことではないけど、翻弄されていることに気づかないままだと厄介だ。

常に変化し続けている”今”を日常と呼ぶのならば、予測しようがなかった2人がいない今を生きている私の現実は思いもよらなかった未来と言えるだろう。幸か不幸かという未来図よりも、日常はいつもそこにあるものではなく、とどまることなく変化し続けていて、今も刻々と変化しているということ。そう感じていたいと願っている。

コロナ禍という言葉が人々の日常から薄れゆく今、薄れることなくただ濃密に色濃くハッキリと私の心に映し出された過去という日常は、今は望んでも得ることが出来ない。それは時間の流れから一歩離れたところに今も脈々と漂っている。それは悲しみや苦しみという想いを超えて現在という未来となった。今やその過去はあるべくしてあった必要な経験であったと変化し、これからも変化するだろう。今の捉え方次第で過去と呼ばれる過ぎ去った時間はどうにでも捉えなおすことが出来ることは原体験から映し出され続けている。それは今という日常を色濃く照らし、常ならぬ日常を暮らしていくヒントになっている。そして、それは”今”が積み重なった未来をうっすらと映し出す光となっている。

映し出される景色を感じるために私は日々を生かされている。その先はこれからもハッキリとは見えることはないだろう。


MASA:若者をはじめ、障がい者も一緒になって、ごちゃまぜイノベーションを目指している。知的障がいのある息子は享年24歳で2021年2月27日に旅立った。関市在住。


vol.217 やってみた 松浦 利重さん

やってみたシリーズ第20弾

お日様の力をいただく、八木山 日の出登山。

松浦 利重さん(70代)

各務原市東部に位置する八木山。標高296メートルのこの山は、南側麓に住宅地や学校もあり、地元の人々に親しまれています。
2年前から可能な限りほぼ毎日、日の出登山を続ける松浦さん。登山を始めるようになって、持久力がつき、お腹の脂肪も減り、少しずつ体が引き締まってきました。精神面でも変化が。「心が強くなったというか、ダラダラするのは今でもそうなんだけど、そこからやる気モードへの切り替えがスムースにできるようになりました」
そもそも、日の出登山を始めたきっかけは?
「何か一つ自分に決め事をして、それを続けるといいよ」と、ある勉強会で出会った方がアドバイスをくれました。読書にするか登山にするか迷い、体を動かす八木山日の出登山に決定。 数年前に自治体のイベントで、八木山、双子山、愛宕山と連なる三山を縦走した経験もあったので、八木山は気軽に行けるちょうど良いところでした。ところが初日、数年間ぶりに登ってみると「え、こんなにしんどかったっけ?」。特に山頂直前の岩場の険しく感じること。山頂にたどり着いた時はぐったり、思わずその場でへたり込みました。
それでも、誰もいない山頂で昇り来るお日様と向き合っていると、そのパワーが自分の中に入り込んでくるような気がしました。自然にお日様を拝み、頭をさげる自分がいました。
「気持ちいい!これは続けましょう!」
以来、雨天時、前日の雨で道がぬかるんでいる日、泊まりで出かけている日以外は毎日続ける松浦さん。
季節により時刻が変わる日の出は、6月頃は5時40分くらい、冬は7時くらい。山頂で日の出を迎えられる時刻にあわせ家を出ます。薄暗い山道をせっせと歩き、冬でも汗グッショリ。帰宅して衣服を着替えれば気分爽快、1日の始めに体を動かし充実した時間を過ごすことができ、気持ちがいいこと。これはランニングハイならぬ登山ハイかも。
八木山日の出登山もいつのまにか2年が過ぎたけど、毎日登っていても飽きるということはないと松浦さん。「根元で3本に分かれているお気に入りの木、きっとみんなここで休むんだろうなと思える石。日に日に大きくなる木の実、変わった形の葉っぱや空に浮かぶ雲。季節ごとに咲く花。どれも面白いよね」。馴染みの風景に心安らぎ、小さな発見が新鮮な気持ちにさせてくれます。気になる植物などを見かけて帰宅後に調べることはしょっちゅう。
「登山の影響なのかな、よく空を見上げるようになりました。心に余裕がないと空を見上げるってこともしないよね」
移りゆく自然の面白さに出会うたびに写真に撮り、SNSで発信もしていましたが、ある日、登山道から外れた斜面に生えているキノコを撮ろうとして、足を滑らせ左足首に怪我を負ってしまいました。3ヶ月の休養期間を経てもうすぐ復帰、八木山の自然とお日様に再び会える日も近づいてきました。
「まずはもっとゆるいところで足慣らししてから。それから八木山登山を再開しますよ。」
今や八木山日の出登山は、松浦さんに欠かせない存在のようです。

 


vol.217 人生これから シニアポートレート撮影会

● 普段撮れないような素敵な写真を撮ってもらいました。今のうちに息子達に渡しておこうかな。楽しい時間でした。
● 自分の遺影を撮ると、来るときはちょっと気分も落ち気味でした。でも撮っていただいた写真を見て、これなら部屋に飾ってもいいし、家族に「これを撮ってもらってきたんだよ」と明るく報告できます。
● さすがプロ!素敵な写真を撮っていただいて嬉しいです。今日は自分だけでなく、仲間の普段とは違う一面が見られて良かったです。
● お話しながらのヘアメイクと撮影でリラックスして参加できました。自分の知らない側面を見られて良かったです。
● まるでモデルになったような、楽しい時間でした。普段なかなかできないような体験をさせてもらいました。
● いつもとは違う私を撮ってもらい、とっても良かったです。メイクで可愛くなれてうれしかったです。
● プロの目線ってすごい!私の中にあるものを引き出して、形にしてもらえて嬉しいです。家族にも見てもらいます。

撮影後、写真のセレクト
この時間がまたいいんです。自分再発見の瞬間かも!!ヘア・メイクも念入りに。

みなさんが喜んでくださってとても嬉しいです。もっとみなさんに輝いてもらえるように頑張ります。  (ヘア・メイク:みさ)

今日は窓からの自然光の具合も良く、まるで絵画を撮っているような気分でした。遺影といえど、美しさ、その人らしさって大切だな、と思って撮っています。気軽に撮ってもらえたらいいな、と思います。 (フォトグラファー:ちいほ)


vol.217 夢か悪夢かリニアが通る!vol.46

2016年、新青森―新函館北斗間で部分開業した北海道新幹線。30年度末開通を目指し札幌延伸工事を進めていますが、工事の大幅遅れに加え、札幌オリンピック・パラリンピックの30、34年開催が白紙になり、開業時期の見直しも取り沙汰されています。新函館北斗―札幌間の約8割がトンネルで、札幌ドーム約12杯分の残土が出る見込み。リニア中央新幹線でも9割近くを占めるトンネルから掘り出される膨大な残土が工事のネックになっていますが、北海道新幹線では既にヒ素やセレンなどの重金属を基準値以上含む「有害残土」が掘り出され各地に積まれています。                  井澤宏明・ジャーナリスト

 

北海道新幹線で起きていること

「やりたい放題」
「住民の目がないとやりたい放題です」。人懐っこい笑顔に憤りを隠せないのが、工事が進む八雲町の住民で「流域の自然を考えるネットワーク」スタッフの稗田一俊さん(75)です。
福岡県生まれの稗田さんは1972年、東京水産大学(現・東京海洋大学)を卒業。水中撮影専門の映画会社を経て、フリーランスカメラマンになりました。北海道の遊楽部(ユーラップ)川でサケの撮影を手がけ、内浦湾(噴火湾)のホタテを撮影したことをきっかけに八雲町に移住。『鮭はダムに殺された 二風谷ダムとユーラップ川からの警鐘』(岩波書店)などの著書があり、「どうぶつ奇想天外!」(TBS)などテレビ番組の撮影も手掛けてきました。
豊かな自然を肌で感じてきた経験から、沢や湿地を埋め立てる残土処分を黙って見過ごすわけにはいきません。現場に足繁く通い、地道に調査した事実を突きつけて、リニアも建設している北海道新幹線の建設主体「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」(鉄道・運輸機構)や自治体に改善を求め続けてきました。
2016年には、八雲町の立岩トンネル工事現場にある有害残土仮置き場の沈殿池から濁水が遊楽部川に排出されているのを確認。有害残土が同機構側の説明していた「遮水シート」ではなく、すき間だらけの「防水シート」で覆われた状態で仮置きされ、風にあおられた土砂が牧場にまき散らされている実態も目撃し、会のホームページなどで報告しました。
たび重なる改善要求にも関わらず、トンネル工事現場からの排水により、清流に魚があふれていたルコツ川や山崎川の川底の石が泥をかぶり、魚の棲めないドブ川のような「死の川」に。そんな悲惨な状況も撮影、公表しています。

「監視の目は必要」
新函館北斗駅のある北斗市では農業者などで結成した「新幹線トンネル有害残土を考える北斗市民の会」(坂本常光会長)に協力。砕石採取場跡地にある有害残土の最終処分場から、雨が降るたび大野川に流れ込む白濁した排水や砂泥を採取。専門機関の分析で、環境基準の1・5倍のヒ素が検出されました。大野川流域の函館平野(大野平野)は、道南地方有数のコメどころ、ブランド米「ふっくりんこ」の産地です。
同機構の調査では「基準値以下」だったものの、その後、処分場の地下水から環境基準を超える重金属セレンを検出。有害残土搬入は中止され、渡島トンネル工事は一時中断。セレンの処理プラントを設置せざるを得なくなりました。
この有害残土最終処分場の盛り土は遮水シートも敷かず、地面にそのまま積む「ずさん」ともいえる工法で行われてきました。同機構は「地盤中の重金属等は水分に溶出しながら土粒子に吸着する特性があります」と安全性を強調しますが、地下水が汚染されるのではないかという住民の疑念は消えません。
工事現場に通ううち、稗田さんは警察に通報されたり、入り口の看板に「事前通告なく、警察等へ直ちに通報します」と記されたりするようになりました。
それでもめげません。筆者は11 月初旬、稗田さんに現地を案内してもらいましたが、残土処分場に正面から入れないと見るや、「ちょっと見せて」と一眼レフカメラを懐手に処分場の脇にある小川に水浸しになりながらズンズン分け入っていきます。
「監視の目は必要。本当は僕なんかがやるんじゃなくて、自治体がやらないといけない」と稗田さん。自治体が事業者と「二人三脚」となって住民を守ろうとしない構図はリニアを巡る状況とそっくりです。


vol.217 平和のつどい

なぜ戦争への準備なのか〜平和への道を探る」

2023年11月3日 平和のつどい 岐阜市民会館大ホール

安保三文書決定、戦争できる国へ突き進む岸田政権

望月 衣塑子さん(ジャーナリスト)

東京・中日新聞に入社後、日本歯科医師連盟のヤミ献金問題、防衛省の武器輸出、軍学共同をテーマに取材。17年4月以降は、森友学園・加計学園問題で、官房長官会見で質問を続けた。著書に『武器輸出と日本企業』、『新聞記者』、『報道現場』、『日本解体論』(白井聡との共著)近著に『日本は本当に戦争に備えるのですか?』(共著)など多数。

国連児童基金(ユニセフ)によると、ガザ地区の病院では赤ちゃん120人(人工呼吸器をつけている未熟児の新生児70人を含む)が保育器の中で、予備の発電機につながった機械を頼りに生きている。ガザの報道はテレビや新聞で取り上げてはいますが、自分たちのこととして議論を進めているのか。こういう状況を見ると、今日本が23兆円という巨額の軍拡に舵を切ったことによりガザ地区、イスラエルのような戦争となりうる…。私は今とてつもない危機感を持っているんです。

昨年末に岸田さんが突如、国会で安保三文書を決定し、敵基地攻撃能力の保有を打ち出し、GDP比2%の軍事費を増強しました。こういう流れの中で8月8日、台北での国際フォーラムが開かれた。そこで麻生副総裁の「戦う覚悟」発言が出ました。「今ほど、日本・台湾・アメリカをはじめとした有志の国に、強い抑止力を機能させる覚悟が求められている時はない。こんな時代はないのではないか。『戦う覚悟』です」「台湾海峡の安定のために、(防衛力)を使うという明確な意思を相手に伝える。それが『抑止力』になる」。自民党副総裁という立場での講演です。麻生さん周辺の議員の方々も、「中国が反応しているということは、つまりこれは『抑止力』になっているということ。今回の麻生さんの『戦う覚悟』発言で戦争のリスクは下がる」というんです。何言ってるんだ?ですよね。
この発言で「抑止力」になっているのか、と言ったら全くそうではない。8月9日、在日中国大使館は「ものほど知らずで、でたらめを言っている」「日本の一部の人間が執拗に中国の内政と日本の安全保障を結びつけることは、日本を誤った道に連れ込むことになる」と。中国外務省も「台湾海峡の緊迫した状況を誇張し対立を煽り、中国の内政に乱暴に干渉した」と非常に強く反発をしております。日本はけしかけるような内政干渉とも言われることを麻生さんに、政府の外務省を通じて言わせたんです。
今年は日中平和友好条約締結から45年の節目ですが、尖閣諸島をめぐる問題や処理水の海洋放出もあり双方の国民感情は悪化。日中関係に「悪い」「どちらかと言えば悪い」は、日本人で68.4%、中国人で41.2%。18歳以上の2500人を対象にした調査結果です。
何が問題なのか。処理水の問題を掲げた日本人が36%で4割近くいる。処理水問題が結果として政治的な道具に使われているということ。今までの保守系新聞だけではなく、朝日新聞、リベラル紙さえもが、この処理水を問題視している。これを受けて中国の社説でかなり厳しく批判をしていました。
結果としてこれが軍拡を突き進み、防衛費を2 %に引き上げ、その先にあるのは台湾有事、台中戦争ということを想定している岸田政権。ではこの流れをどう変えるのか。アメリカへの対米依存度の約3倍、日本は中国に依存しています。海産物の輸入制限をやられた時に、年間871億円ですよ。それほど多くの水産物が日本から中国へ輸出していたんです。アメリカ以上に対中関係を改善させていくことが本当に今一番大切なことなんです。

防衛財源確保法が成立
増税の代わりに、今後は同法成立で創設された防衛力強化資金の税外収入など他の財源からの追加負担も検討される。毎年4兆円を確保しなければならない。年間3兆円あれば、小中高大の国公立大学の授業料も無償化、給食費の無償化、これが可能だという試算が出ています。3兆円をその無償化に使って欲しいと私は思ってます。
軍拡のために増税に頼っては良くないが、税外収入に頼るということは国債に依存するということ。それは太平洋戦争の時と同じような日本の財政があやういと言われているので、軍拡予算を作るために防衛増税をして、どんどん国債に頼っていけ、という。こういう非常に無秩序なやり方に日本は舵を切ろうとしているんですね。同じようなやり方で、安保三文書を閣議決定され、軍拡を突き進めようとしています。
敵基地攻撃能力(反撃能力)保有明記。▼ 安保関連経費 2027年度に防衛力の抜本的強化と、それを補完する取り組み
周辺国への認識 中国=対外的な姿勢や軍事動向などは我が国と国際社会の深刻な懸念事項であり(中略)これまでにない最大の戦略的な挑戦。
ところが韓国の革新系の新聞は、「事実上戦争ができる国家に変わった、軍拡を激化させ緊張を高める」と。そして保守系東亜日報でも、「憲法9条を完全に無力化する内容」と報道。日本の防衛費が現在の世界9位からアメリカ、中国に次いで3位に。こうなると韓国は世界の2位3位の軍事増強国家に包囲される!と、去年の安保三文書決定以降、韓国の世論の中で、軍事増強国家に包囲されてるぞ、北朝鮮、中国に包囲されるということで、実は今、リベラル系の知識人も含めて、全体の7割の人が「韓国も核を持つべきである」と、核武装を支持。日本はアメリカ軍のトップが2027年にも台湾有事が起きうるということを話題にしたことを受け、台湾有事に備えよっーという流れが急速な勢いで進みどんどん軍拡を進めています。
結果としては安全保障のジレンマという流れの中で、周辺国の東南アジアの地位、こちらの軍拡ということを物凄く誘発しているんですね。このままじゃ全体がまさに緊張に包まれ、何かが起きた時にあっという間に戦争に巻き込まれていくんじゃないかということに、私はここでも危機感を覚えます。

 

 

ウクライナ紛争以降の世界秩序

白井 聡さん(政治学者)

思想史家、政治学者。現在、京都精華大学国際文化学部准教授。『永続敗戦論ー戦後日本の核心ー』(石橋湛山賞、角川財団学芸賞受賞)、『国体論ー菊と星条旗ー』、「武器としての「資本論」』『日本解体論』(望月 衣塑子との共著)、近著に『日本の正体』他、多数。

 

統治の崩壊
ここまでひどくなってきた理由ってのはなんだろうか。構築されてきた社会のあり方、これが限界に達した。それが統治の危機という形で全般的な行き詰まりが現れたんだと思います。そして戦後という言葉。今年は戦後78年目。日本は1945年の敗戦という形で大きな挫折を味わう。そこからいわゆる戦後復興、高度経済成長があって、現代に至る。
このようにみていくと1945年はマラソンでいうと折り返し地点のように見える。そこを境に戦前と、戦後という時代をわけている。戦前は明治維新を起点として考えると77年間。そして1945年から昨年77年間、つまり、昨年は戦前と戦後が時間的に同じになった。そして今年、戦後の方が長くなりました。
長くなったこの戦後という言葉、日本人は独特の二つの意味を与えてきたと思います。一つは1945年に終わったあの戦争の後、ということですが、もう一つは戦争一般です。あの戦争はいろんな意味でひどいものであって、最終的には核兵器というそれまでの兵器とは桁の違うものを使われて、敗戦を認めることになった。
で、そこから、もう戦争はこりごりだ、絶対戦争しない、させないということで「憲法9条」が大事なものだと考えられてきたわけです。戦争は絶対起こしてはならないという信念確保です。しかし一方でそこには問題があったように私には思われます。といいますのは、「もう戦争はないんだ」という感覚が広く日本社会に定着してしまった。だからこの戦後という言葉が独特の響きを持ってつながってきたんだと思うんです。この78年間、日本は交戦する当事国には一度もならなかった。
サンフランシスコ講和条約と日米安保条約というのは同時に結ばれています。この二つの条約は完全にワンセット。つまり、一応独立は認めてやるけれど、米軍は駐留し続けるぞ、ということが、宿命のように決められていったのです。いわばそれを前提としたうえでの、アメリカの傘の中(核の傘ともいう)にいるということが全ての前提となった上での平和主義。だけど、もうそういった時代は終わりました。今それが音を立てて崩れようとしている。ウクライナ紛争勃発以降、急速にまたハッキリと表面化してきたというのが現在の情勢であると私は考えます。

この地図をご覧ください。紺色の国はロシアとウクライナが戦争を始めて、ロシアに対する経済制裁に参加している国(北米の2カ国、ヨーロッパのほとんどの国々、オセアニア主要国であるニュージーランド、オーストラリア。アジアでは日本、韓国、台湾、それからシンガポールです)。黄緑色の国々は参加していない国(南米とか中南米とかアフリカとか、中東、それからアジアの広い範囲の国々)。参加していない国の方が圧倒的に多い。このことの意味をよく考える必要があると思うんです。つまり、この戦争が始まってロシアの所業は帝国主義的だとアメリカは激怒する。なんかヤクザの抗争みたいな論理なわけ。実はヤクザの抗争に例えると今の情勢というのが非常によく理解できるんです。というのはヤクザっていう現象は人間の社会における暴力という極めて原初的な形態ですから、そして国家というものの本質はここにあるわけです。そういう理屈でロシアが戦争を始めたなと、そんなことはけしからん!許さん!ロシアを干上がらせてやれ。さあ、みんなで制裁しよう。とアメリカはヨーロッパ西側諸国に言ったんです。だけど、そんな平和主義違反を中東や中南米の国々はどんなふうに聞くでしょうか?アメリカはまさに中南米はおれのシマだ、反米的な政権ができようものなら、あるいはできそうになると、あらゆる攻略を使い、時には軍事力を直接むき出しに使って叩き潰していくということをやってきたわけです。要するに制裁を実行した国は先進国であり、してない国は途上国だっていうこと。こういう図式が鮮明になっていくにつれてこの戦争の意味、位置づけっていうのがどんどん大きくなってきました。
まずこれはロシア対NATOの戦争だというふうに考えられるようになった。確かにウクライナは実はバルト諸国から多大な資源を受けなければ戦争継続ができないわけです。いわゆる大戦争の性格をもつようになり、そしてさらに中国の動きが決定的だった。中国がロシア寄りの中立という立場をとることで、いってみればG7対グローバルサウスという構図になってきました。要するに、先進国対途上国という構図がいろんなとこで、戦乱を伴う形で出てきている。なるほど、なぜ岸田大軍拡というものが強行されようとしているのか、ということが全部腑に落ちてくると思うんですね。
要するにこれはグローバル南北戦争なんだから、アジアへも飛び火するぞ、それに対応する体制を作らなきゃ、ということです。本当に中国と戦争を始めるとすればどうなりますか?まず中国と断交してもやっていけるような経済を作らない限り中国と戦争なんてできるわけがない。だけど、アメリカはとにかくヤレ、ヤレと言ってくる。だから、本当は戦争なんてできないんだけど、やる気がある顔をしとかなきゃいけないから、とりあえず武器でも買っといてお茶でも濁すか。これが今の日本の政治ですよ。そしてすでにその中で憲法は残念ながら空文化している。なぜならそもそも日米安保条約、さらにはそれに付随する日米地位協定のほうが日本国憲法よりも上位にありますから。そして究極的な問いが突きつけられています。アメリカという天皇のために死ねるのか、と。こういう政治になっている。これをもう脱却するということが本当の意味で戦後を終わらせるということなんです。

※お二人の対談は次号に掲載します。

 


vol.217 ボーダーレス社会をめざしてvol.76


NPO法人オープンハウスCAN 理事長 伊藤佐代子

きょうだい児

以前にも「きょうだい」について書いてきましたが、今回はきょうだいの側からの言葉で衝撃を受けましたので書いてみようと思います。
障がい者のきょうだいのためのオンラインの会Sibkoto(しぶこと)(https://sibkoto.org/)の運営をしている白井俊行さんが「全国手をつなぐ育成会連合会」が発行している「手をつなぐ」という本の「ひびき」に書かれている内容です。
『弟の私にいやがらせをする兄(障がいがある)が大嫌いでした。母は、兄を溺愛していました。親は産む、育てる意思があって「なる」ものですが、きょうだいは何の意思もなく「なる」ものです。それで「家族だから」という言葉に一生縛られます。それを当たり前とする価値観がなくなれば、きょうだいがより自分らしく生きられるようになるのではないでしょうか』と。
きょうだいは苦しんでいます。物心ついたころから、家の中には普通の家庭とはちょっと違ったきょうだいがいます。何事もその障がいのある人が中心になって回っています。旅行、遊び事すべてその障がいのある人ができるか否かで決まります。我慢ばかり強いられます。障がいのあるきょうだいを見守らなくてはいけません。いじめられていたら助けなくてはいけません。親には障がいのあるきょうだいの事でいじめられたことなど言わないで我慢します。親が悲しむことが分かっているからです。娘がそうでした。中学3年生の時に初めてそのような話を部活の先生からお聞きました。M子がお兄ちゃんの事で号泣していましたよと。家では一言も言わなかったので何も知りませんでした。知らないこととして今もそのままにしていますが、我慢していたのでしょうね。健気です。 あと、手のかからない自分の事はいつも後回しにされるなどなどいっぱいあります。普通のきょうだいでも同じようなことはあると思うのですが、障がい者がきょうだいにいる家庭では、上記のようなことは頻繁にあると考えられます。「しぶこと」の白井さんのように、親御さんが、障がいのある人を溺愛するのは考えものです。愛情は50:50が理想です。どうしても手を離せない障がいのある子に比重が行くのはやむを得ないのですが、そこでしっかりフォローが必要だと思います。親と障がいのない子と向き合う時間をしっかり意図的に取ることは、かなり重要です。 二人きりでいられる時間を短時間でいいので取ることは、何よりも、何よりも大切です。お母さんと手を繋ぎたかったけれど、お兄ちゃんがいたから繋げなかったとフッと漏らす言葉を聞き逃さないことです。普通のきょうだいにも言えることなのでしょうが、「愛情はどの子にも平等に」が基本でしょう。
大人になると結婚・出産に関しても悩みはつきません。きょうだいに障がい者がいるだけで、結婚話が破談になったという話は聞いたことがあります。どのように結婚相手に話すかも悩ましいところだと思います。娘の場合は幸いにも何事もなく結婚できたのでよかったのですが。出産に関しては、私自身が遺伝はないものだろうか?と不安でいっぱいでした。娘に「出生前診断受けるの?」と聞いたことがあります。すると「受けて、もし障がいがあると分かったら堕ろせってこと?」と言われてしまいました。「受けるわけないやん」と軽くいなされてしまいました。娘は、私が思う以上にたくましかったです。そのように何度も何度もきょうだいには試練があります。きょうだいが生きやすい環境を整えること。大きな課題です。


vol.217 菌ちゃん野菜応援団vol.38

この秋は季節外れのインフルエンザが大流行しましたね。本来空気が乾燥した寒い冬に流行る風邪が秋口にこんなに流行るなんて、今まであまりなかったこと。ますます日々の体調管理が大切になってきますね。先日岐阜に吉田俊道さん(NPO法人大地といのちの会 理事長、菌ちゃんふぁーむ園主)が講演に来られたので、久しぶりにお話を聞いてきました。

仰ることは一貫して同じ。
「お腹を元気にして下さい」
「お腹をいじめるようなことはしないで下さい」
「畑とお腹は同じ。元気な畑で育つ野菜に虫が来ないように元気なお腹を持つ人は風邪に負けません!」
もう、これだけ、でした。
お腹を元気にするには
・菌ちゃんに繋がるものを食べること
・ミネラルを食品から取ること
・よくかんで唾液を出すこと
・にこにこ笑っていること。これでしたよね。
お腹をいじめないためには
・お腹を冷やさないこと
・消化吸収しにくいものを減らすこと
・暴飲暴食しないこと。です。

もう、誰でもできるって!!というくらい簡単なこと。でもこれがなかなか難しくてすぐに忘れちゃったりする。
だけどここが基本ですよ、これをするだけで体温もグッと上がってみんな元気になりますからね!!と力説されてました。

物販コーナーでは“菌ちゃんげんきっこ”や“いりこ”が飛ぶように売れていました。
これから冬本番。体調を崩しやすい時期がきます。少しでも毎日元気で過ごしたいな、という方はぜひ、左記のことを心がけてみてください。1ヶ月徹底してやってみるだけできっと変化が感じられますよ!簡単なプログラムもありますので興味ある方はご連絡下さい。

 

 

今月のレシピ「塩こうじ」

材料:糀200g、天然塩35g、水ヒタヒタ
①糀と塩をポロポロになるまで手ですり混ぜる。
②ヒタヒタまで水分をくわえる。しばらくして糀が水を吸ったら水を足して、ヒタヒタを保つ。
③軽くふたをして常温に置く。毎日かき混ぜて糀がトロッとしたら出来上がり。
大根にまぶしたり、さっと湯がいたキノコや葉物と和えたり。
塩の代わりに使えて、かつお腹の菌ちゃんの大きな手助けになりますよ!


vol.217 ここいく日記 はじめの34歩!

 


思いを共有できた2日間

2日間に渡って、各務原市まちづくり活動助成事業「いのちのつながりフェス」を開催しました。
第一弾は、市民公園にて「いのちの授業」&ワンオーガニックマルシェ。
各務原市の真ん中で性教育を叫びたい!タブー視されがちな性教育を明るく楽しく堂々と公園で伝える。これは「ここいく」の挑戦です。
「いのちの授業」を、いのちの始まり、出産、心と人権、体の仕組み、食育の5つのブースに分かれてスタンプラリーで回ります。通常の授業より更に詳しく、丁寧に新たな内容に挑戦しました。いつも子どもたちに人気の出産劇は、初の帝王切開バージョンに挑戦。事前に複数の帝王切開体験者から意見を聞くなかで、出産に納得ができていない方が意外に多いことが分かり、今回は二通りのお産を対等に伝えました。経膣分娩と合わせて14回も公園で産んじゃいました!
各務原市の小中学校で「いのちの授業」が出来るようになるといいな。そんな願いを込めての挑戦となりました。
そして同時開催した、各務原市初のワンオーガニックマルシェ。オーガニックを、ひとつはじめよう、ひとつかさねよう、ひとつひろげよう!ワン(One)オーガニック!このコンセプトに共感し、出店者を募りました。思いのある素敵なお店が集まり、それぞれにつながり、素敵な一体感がありました。すべてのいのちに感謝。人にも地球にも優しい環境を創るためには、ひとりひとりの行動次第。この輪を広げたいので、またやりたいと思いました。
そして第二弾は桜体育館にて子どもバンドbabyboomライブ&いのちの樹形図づくり。
今を生きている子どもたちの素直な気持ちを歌ってくれたライブは、ドストレートで大人の胸に刺さりました。
コロナ感染拡大により、突然卒業式の歌が中止。歌えるよう署名活動をしたが駄目だった時の気持ちの曲「歌いたい」など、いかに大人中心に物事が進み、子どもの気持ちは置き去りである現実を痛感しました。
今を大切に、自分らしく生きる。「ここいく」の思いとbabyboomの思いが重なったライブは感動的でした。
ライブ後は、いのちの樹形図作り。誰一人かけても私はいない。いのちのバトンを受け取って、今自分の番を生きている。それを皆で感じたくって企画!7代前のご先祖様は江戸時代。ご先祖様を想像して、名前をつけて命を吹き込みます。合計254人のいのちがつながりました。生まれてきただけで奇跡、いま生きているだけで奇跡。何ができるとかできないとかは関係ない。自分の番を、自分らしく生きればいい!いのちをありがとう!そんな思いをみんなで共有できたいのちのつながりフェスでした。来年も新しいことに挑戦したいです。

担当:ここいくメンバー 古川 明美でした。
ここいく☎090-3446-8061(中村)


vol.217 モザンビークからレポートvol.11

Vol.11 モザンビークの選挙事情 

英雄Samoa Machel。Ferlimoへの不満を垂らす人がいても、彼の存在は没後39年経った今でも全面的に崇拝されています。

モザンビークは変革期を迎えています。10月11日、市長選が行われました。全国一斉に行われ、それぞれの州の市ごとに開票、続々と結果が上がってきました。そんな中でも注目は、やはり首都マプト。10月26日の、正式発表の結果や、いかに!?

現在の大統領はFilipe Nyusi 。政権はFerlimo(与党モザンビーク開放戦線党)が握っています。1975年にポルトガルからの独立を果たして以来、ずっとSamoa Machelが率いていたグループ(Ferlimo) がこの国を率いてきました。Samoa Machelは今でも永遠の英雄です。独立記念日、Samoa Machelの誕生日、彼を讃えるイベントはたくさんあります。「モザンビーク、オイエー!」(モザンビーク最高!みたいな感じです)といい、盛り上がります。しかし、彼の精神を今もFerlimo が引き継いでいるかというと、そうではないと思っている人が増えていると聞きました。今でもFerlimo支持者は多くいるのは確かで、よく集会を見かけます。しかし同時に、省庁に入りたければFerlimo支持者でなければならない、と言った事実などから、若者を中心に政府不信は募る一方のようです。「政府は何もしてくれない。」という言葉をこの2年間で何度も耳にしました。「アフリカの問題は国の汚職。だから何も気にせず楽しんでおいで。」モザンビーク出身の先生にそう言われたことを、今でも覚えています。

Renamo の行進。我が家の前は大通りなので、ちょくちょくマーチがやってきました。

選挙後は、日本では見られない盛り上がりを見せました。選挙の翌日、Renamo( 野党モザンビーク民族抵抗運動)が勝利宣言。これからモザンビークに新たな勢いがつくのか⁉︎と思いきや、Ferlimoも、さらに翌日勝利宣言を出しました。「投票者が少ないから、途中結果だけでRenamoが勝つことが明らかだった。Ferlimoは今までも票を盗んできた。」と言ったのはもちろんRenamo派の友人。約一週間、デモが各地で行われた後、26日にFerlimoの正式勝利が宣言されました。しかし、「Ferlimoが投票箱を壊して幾つかの表を無効にした」と28日金曜日に再びRenamo支持者の大規模デモ発生。何故か平和な2日間の週末を挟み(とてもモザンビークらしいです)、翌週からまた何回かデモがありましたが、危険な感じではなく、平和に、歌やダンスも交えての訴えが続きました。11月14日までに憲法評議会に選挙プロセスが適切であったか確認の申し込みがされ、11月24日、その結果が発表されました。Ferlimo派の勝利。長い長い攻防を繰り返しても、結果は変わりませんでした。他の市ではReramoやもう一つの野党MDM(モザンビーク民主運動)が勝利しているところもあります。今年まで64都市をFerlimoがとっていたのに対して、56都市になりました。
来年は大統領選挙です。さらに激しい盛り上がりを見せることでしょう。
その一致団結のパワー、政府に頼らず、自分の生活を自分で改善していくという方向には向かないんだろうか!?という問いは、モザンビーク人には言わずに心の中にしまっておきました。

 


vol.217 プレゼントコーナー

217号PRESENTS

プレゼントご希望の方は
ハガキまたはe-mailで、下記のアンケートを
1〜6までご記入の上、編集部・プレゼント係りまでお送りください。

1.あなたの今年一番のビックニュースは?

2023年も終わろうとしています。世界ではいろんな出来事がありました。

あなたの最大の出来事はなんでしたか?

2- 気になるにらめっこ紙面での広告
3- 気に入った記事、気に入らない記事の
タイトル1つ・その理由もお書きください。
4- ご希望のプレゼント名 (第1希望・第2希望 を必ずお書きください)

※Cは編集室まで受け取りに来られる方。
5- 本紙をどこで入手されましたか?
6- 氏名、年齢、住所、郵便番号、電話番号、 家族構成

〆切:2024年1月25日   当日消印有効。Dは1月15日
宛先 〒504-0855 各務原市蘇原新栄町3-15
e-mail: info@niramekko.com
※お寄せいただいた個人情報は、本紙プレゼントの発送に限り、 使用させていただきます。


A.CINEX映画招待券 CINEX様より…ペア3組様

深い、深い映画に出会ってしまったら、そしてそれが現実とリンクした作品だったら…。時には問題提起する映画を観て、自分に問いかける時間も必要なのかも。写真は「月」のワンシーン。柳ヶ瀬のCINEXでご利用いただけます。


B.よりよく生きるためのライフデザインノート 『ゼロの昇天』 人生これから!様より…3名様

人は必ず“その時”を迎えます。あなたはそこまで、どんなふうに生きますか?難しく考えなくてもいいけれど、時には真面目に向き合うのもいいよね。このノートに書き込む事で、自分の心が整理されていきます。


C.トートバッグ型コンポスト 命の循環プロジェクト様より…1名様

生ゴミで堆肥作り、興味あるけど、虫の発生や匂いが気になるなあ。そんな方におすすめなのがこのバック型コンポスト。ファスナーで虫も匂いもシャットアウト!機材とセットで気軽にはじめられますよ。

にらめっこ事務所でお受け取りください。


D.わんにゃんドーム2024ペア招待券 テレビ愛知様より…3組様

2024年1月27日(土)、28日(日) バンテリンドーム ナゴヤ

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日本最大級のペットイベントを2024年も開催!トップブリーダーのチャンピオン犬や珍しい猫、わんわん運動会がやってくる!子どもから大人まで誰でも楽しめるコーナーなど、イベントも盛りだくさん!