206号(2022.3&4)」カテゴリーアーカイブ

vol.206 はじめよう!生ごみ対策

生ごみを制するものは「ごみ」を制す!

日本全国で私たちが出す「生ごみ」は年間推計で約2,842万トン。その内訳は約70%が食品産業から、残り約30%が家庭からの排出と言われています。生ごみについて注目すべき理由はその圧倒的な量の多さ(重さ)にあります!少なく見積もっても一般廃棄物に占める生ごみの推定量は約40%。特に生ごみは水分を含んだまま捨てられることが多く、重量比でも圧倒的な割合を占めています。可燃ごみの約40%を占める生ごみだからこそ、生ごみを無くせば、ごみはほぼ半減します。思い切って抜本的にごみ削減に取り組もうとするなら、生ごみを何とかするのが一番の近道です。まさに、「生ごみを制すれば、「ごみ」を制す?!」というわけです。

生ごみの約60%弱が調理くず、約40%弱が食べ残しです。さらに、食べ残しのうち半分以上が「手付かずの食品」つまり未開封などの状態で手を付けずにそのまま捨てられた食べ物です。
調理くずについては、ある程度は出てしまうことが避けられないものです。なるべく無駄なく皮まで食べられるよう調理を工夫するなど、取り組みの余地はありますが、それらによって抜本的に量が減るものではありません。出てしまったごみをいかに活かすかというアプローチになります。
生ごみへの取り組みには大きく分けて、「そもそも出さないようにする」や「出す量を減らす努力をする」【発生抑制】へのアプローチと、「出てしまったものを有効活用する」【資源活用】の2つの取り組み方があります。

そこでまず編集部は「ごみの[資源活用]」に注目しました。
生ごみをリサイクル
堆肥化:「食べたものから出た生ごみを、もう一度食べ物をつくる資源とする」
生ごみを土に返す。生ごみは、焼却処分する場合でも厄介者です。含水率が高いため、焼却しづらく、炉の温度を下げてしまう原因となります。各地で生ごみの「水切り」をしてから捨てるように呼びかけられているのはこのため。
使いきり」「食べきり」「水きり」の「3キリ運動」などと推奨している自治体もあります。焼却に適さないのであればより一層、上手く活用する術を探りたいところです。そこで取り組まれているのが、生ごみから「堆肥をつくる」活用方法です。生ごみはもちろん自然由来のものですから、土に還すことができます。単純に、埋めて土に還すことで生ごみを焼却しない・処理費用を無駄にしない、というアプローチもあります。生ごみは各家庭(そして事業所からも)定期的に出続けるわけですから、上手く活用すれば、地域内で堆肥を作ることができる有効な資源となるのです。
コンポストに取り組むと、自分の出したごみをよく見直すことになるから、無駄にする食品を減らそうという動きになります。

生ごみ発生抑制のヒント

ごみの[発生抑制]-1

調理くずや生ゴミの場合
出さないようにする、出す量を減らす努力をすること。

皮まで食べる:ベジブロス 野菜のくずから取るスープは、抗酸化作用が強い「ファイトケミカル」がたっぷり。ファイトケミカルは、第7の栄養素と呼ばれ、老化防止や生活習慣病予防効果で注目されています。スープや汁物、煮込み料理、炊き込み御飯など、和洋中様々なお料理に使えます。
作り方 ① お鍋に野菜のくず、水、酒を入れて、沸騰後弱火で20分ほど煮る。 ② ザルでこして出来上がり。 ③ 冷蔵庫で3〜4日保存できます。

ごみの[発生抑制]-2

ゴミになるなぁ、と思うものを買わないのがポイントですが、過剰包装が日常的になっている日本ではなかなかハードルは高い。自治体サイドでは、回収日を少なくする、回収指定ごみ袋の価格を引き上げるなどの取り組みも。例えば加茂郡白川町では、・可燃ごみ袋(大)10枚 1,000円(小)10枚500円で、必ず袋に世帯主の名前を記入すること。というルールがあります。住民は一枚100円もする指定ごみ袋を使用するため、常にごみの量を気にします。また、食用廃油は最寄りの回収場所に設置してある専用容器(ドラム缶)に破棄できるなどの取り組みも。他に、岐阜市、大垣市、笠松町などは、生ごみ処理普及のため、さまざまな補助金制度があります。

 

生ごみは、ほかにもこんなリサイクル方法があります。

飼料化:主に食品関連事業者が出す食品廃棄物を発酵処理し、飼料を作成して、豚肉を生産し、また食品として提供していくもの。
バイオガス化:発酵させてメタンガスにします。ガスは発電に、発呼以後の残りかすは肥料として利用。
炭化:加熱をして炭にします。有機性のものに限ります。燃料などに利用できます。

 

 

 


vol.206 はじめよう!生ごみ対策Part-2 

生ごみに含まれている豊富な微量元素は、生命の維持に欠かせない要素です。実は生ごみを焼却するということは、その貴重なミネラルの循環を断ち切ってしまう。そこでまず、資源となる微量元素について調べてみると…。

こんなにたくさん!なんとしても土に還したいね!

ここからはフレンチ「Ode」オーナーの生井氏と生ごみの専門家・福渡氏による、新たな生ごみのあり方を模索する特別対談をご紹介します。        ELEMINIST SDGs特集より

福渡:私も生ごみは燃やすことが当たり前だと思っていました。いまでも多くの家庭では、生ごみを捨てるのが世界の常識だと思われています。ところが、「EUや北欧では、生ごみはバイオごみとして集められ資源化されていますよ」と説明するとびっくりされて。捨てれば回収してくれるので、そもそも関心がないのだと思います。

生井:僕は、農家の方と食材について直接やりとりするようになったことで、関心を持つようになりました。畑に行っていろいろな気づきを得たことで、食材としての価値を自分で見出すことができるようになったし、料理観が変わりましたね。

土の循環を意識した生ごみの考え方

––生ごみが農地、土に還っていないことも問題なのですね。

福渡:生ごみ、とくに植物性の生ごみは微量元素の宝庫なのです。植物は、光合成をするとともに根から微量元素や水分を吸収して自分の体をつくるので、健康な農作物は微量元素の豊富な農地で育てることが必要なのです。そして、その野菜が吸収した微量元素がまた土に還らなければ、土壌はどんどん痩せていきます。江戸時代では、人のし尿が肥料として重宝されていたぐらいです。健康な農作物を育てるには、野菜くずやし尿、雑草や落ち葉など微量元素を豊富に持つものを堆肥にして、絶えず土壌に施さなければなりません。しかし、いまではそうした生ごみなど有機物は焼却されてしまい、栄養素や微量元素のサイクルが人のところで断ち切られてしまっています。

生井:土や環境が食材に与える影響は大きいですよね。Odeで出た端材を乾燥させてつくった野菜パウダーを、カヌレの生地に練り込んで提供したり、乾燥させた葉を最後にお茶として出したりもしています。

––福渡さんはそうした問題の解決手段として「カラット」という生ごみ乾燥容器を開発されていますね。

福渡:「生ごみカラット」は、生ごみを入れて風通しのよい所に洗濯物を干すようにぶら下げておくことで、水分を取り悪臭を低減する容器です。半乾燥させることで、腐敗しにくく堆肥化しやすくなります。焼却する場合も、最近の焼却炉は廃棄物発電装置を備えていますから、水分を取っておくと燃焼エネルギーを効率よく活用できることになります。プランターに基材(土と腐葉土あるいは竹パウダーなど混ぜたもの)を入れ、よく混ぜればすぐに堆肥化しますよ。土中の微生物がすぐにエサに食いつけるように、ときどき酸素を補うために切り返しをしてください。廃油も堆肥化できます。みなさん新聞紙に吸わせて可燃ごみに出したりされていますが、プランターの基材に少しだけ入れてよく混ぜれば、油かすになって栄養豊富な堆肥になる。お茶殻も抗酸化物質が残っているので、堆肥にすれば大葉やネギにも虫がつきづらくなります。

生井:油を入れてもいいっていうのは衝撃ですね。

福渡:土がベタッとするほど入れてしまうのではなくて、小分けにして土に混ぜていくと、腐敗しません。

生ごみを減らすための買い物術と料理法
鍵となるのは食材との向き合い方

––生ごみを出さないために、家庭の料理で取り組まれていることはありますか?
生井:無駄にしないという面では、ぜひ“マル”のままで食材を買ってほしいです。切り身ではなくて、まるまる1匹のお魚や、カット野菜ではないものをってことです。昔の日本ってすごい。切り干し大根にしたり、塩漬けにしたり、たくさん農作物が採れたときに、きちんと保存して冬を越すための知恵があるんですよね。いまではそうした知恵や日本の発酵文化が、海外の人たちに評価されていて、僕らはそれを逆輸入して新しい料理に取り入れたりしている。

––さらにカラットやコンポスト容器を活用できれば、もう本当にゼロウェイストですね。

生井:単純に面白いですよ。僕も布製のコンポスト容器を使っていますが、毎日ちょっとずつごみを入れて混ぜたりしていると、前に入れたごみがいなくなったりするので「どこ行った?」って(笑)不思議で楽しいんです。

福渡:堆肥化するには、細かく刻むことが重要ですね。塊で入れても、微生物が食べづらいのですぐにはなくなりません。微生物に餌をあげるようにして、調理くずは細かく刻んで土と混ぜてあげる。土を混ぜる、切り返す理由は酸素を土中に送ってあげるためです。生ごみを早く分解する微生物たちは、酸素を取り込みながらエサを分解しますが、酸欠状態になると生ごみを臭くする微生物が活動を始めます。微生物の勉強もしてみると、堆肥化の仕組みがわかって楽しいですよ。

––「野菜が私たちの手元にどうやって運ばれて来ているのか」「そもそもごみって何なんだろう」という疑問を持つことが、ごみをなくしていくための考え方には必要そうですね。

生井:いまはそういうことに気づく人々が増えてきていますよね。ごみっていう言葉で一緒くたにされていますが、きちんと価値を見出すことができる人たちが増えてきている。

福渡:そういう人たちが増えてくれば、リサイクルやコンポスト、ゼロウェイストといったことが、もっと当たり前になりますよね。

 

 

 

 

 

 


vol.206 そもそもごみってなんだ?

私たちの周りには、たくさんのものがあって便利だけれど、その一方でたくさんのものがごみとして捨てられている。この”ごみ”は、廃棄物となる。廃棄物は “ごみ、粗大ごみ、燃えがら、ふん尿などの汚物や自分で利用しなくなったり他人に売却できないために不要になったもので、液状または固形状のものすべて” と法律で決まっている。
この廃棄物は、一般廃棄物と産業廃棄物に大きく分けられている。産業廃棄物は工場や建設現場など、事業活動によって発生するごみの事。例えば紙くずは、製本業者などから出るものだけを産業廃棄物と言い、一般のオフィスから出るものは産業廃棄物には含まれない。木くずなども、木材製造業、工作物除去などの特定の業種から出されるものだけが産業廃棄物になる。このことを業種指定という。
産業廃棄物以外のものはすべて一般廃棄物になる。私たちの家から出るごみや粗大ごみ(生活系ごみ)、一般のオフィスや商店から出るごみ(事業系ごみ) が一般廃棄物となる。

「おから」は資源なの?廃棄物なの?前代未聞の「おから裁判」での判決は…!?

おから事件判決 最高裁判所
1999年3月10日 第二小法廷決定

この事案は、豆腐製造工場から排出される副産物である「おから」が産業廃棄物であると判断しました。「おからは食品や飼料として活用できる『資源』であり、『不要物(廃棄物)』ではない。つまり、取り扱いに産業廃棄物処理の許可は必要ない」、これが業者の言い分でした。おからは、栄養が豊富で惣菜としてお店で販売されており、なぜ廃棄物に該当するのか分かりにくいです。しかし、・おからが腐敗しやすいという特性(A.物の性状)・多くの豆腐工場がおからを廃棄物として排出している実態(C.通常の取扱形態)・処理料金が支払われていた(D.取引価値の有無、E.占有者の意思)などから、裁判所は、本件においては産業廃棄物に該当すると判断したのです。そして、無許可でおからを受け入れていた業者は、産業廃棄物の無許可営業罪に該当するとされました。

裁判から23年。おからの再利用は進化した!

実はおからは、味もさることながら栄養面でも大変優れた食材なのです。カルシウムやカリウム、さらにはタンパク質も豊富。中でも食物繊維の数値は特に優秀で、便秘解消や腸内の健康維持に力を発揮してくれるのです。「おからクッキー」や「おからパウダー」といった商品は、スーパーでもよく見かけるようになりました。また、おからをバイオ燃料として再利用しようという研究も進められています。かつては廃棄物の烙印を押されたおからですが、およそ20年の時を経た現在、資源として改めて注目を集めているのです。

注目のアップサイクル食品OKARA

実は、アップサイクル食品として、米国で注目されている食材がある。それは、ズバリ、おから。そのまま英語表記で、OKARAとし、「豆乳のサステナブルな兄弟」という、いかにもキャッチーな表現で紹介している。そんなキャッチーでサステナブルなOKARAは、高タンパク質でグルテンフリーな「おからパウダー」へとアップサイクルされ、小麦粉の代用品として多くの支持を獲得している。同パウダーを使ったチョコチップクッキーなども販売され、評判も上々のようだ。

アップサイクルって何?

アップサイクルとは、古くなったものや不要なものを、それらの形状や特徴を生かしたうえで、まったく新しくて魅力的で価値のあるものに生まれ変わらせること。廃棄物を再生利用するリサイクルやリユースとは、似て非なるもので、元のモノよりも高い価値がつく点や、サステナブル(持続可能で環境によいというニュアンスで使用される言葉)な点が、注目されている。
アップサイクルへの取り組みは、ファッションや生活雑貨などの業界で、盛んに行われている。たとえば、自動車のシートベルトや自転車のチューブを、実用的かつデザイン性に富んだバッグにアップサイクルしているスイスの企業などは、世界的に有名。

食のアップサイクルとは

まだ食べられるのに捨てられてしまう食品をはじめ、これまでメインとなる食品の製造段階で捨てられていた食材、規格外のものや商品化されていなかった食材などを使って、さまざまな商品やサービスが開発されています。



生ごみを堆肥に、今は仕組み作りを模索中

産業廃棄物が大きな問題になった30数年前。その頃から「ごみ」に関心があった田辺さんはスキルの違う二人に声をかけ、「いのちの循環プロジェクト」(通称:いの循)を立ち上げた。自宅では生ゴミ(野菜くずなど)は処理をして一切外に出さなかった。自身が運営する事業所でも同じようにしたいと思い立った。家庭から出る生ごみを各家庭で堆肥化し、「生活圏内」に複数ある菜園で野菜を育てるのに使うというしくみ。いい循環ができるよう仕組み作りを進めている。


ふどうの森トレイルラン試走会deごみ拾い for 2022

1月22日(土) 参加人数:約60名

ふどうの森トレランの試走会は、清掃活動も合わせて行いました。毎回ごみ拾いを恒例の作業として各務原地内の公道部(トレランコースの一部)を全員がゴミ袋を片手にごみを拾いながら試走。ごみ拾いと合わせた試走会の方が充実しているようで、ワイワイ言いながら楽しそう。他県など遠くからの参加者もあり本当に感謝、感謝です。
ごみの種類は、ペットボトル、空缶、コンビニのレジ袋など。それにしてもなんとゴミの多いことか!
ごみを拾い終えた参加者はどなたも清々しい笑顔。スタッフが一番いやされる瞬間です。協働することで仲間意識も高まりますね。

関市、各務原市、坂祝町にまたがって行われる、トレイルラン大会。
2022年は5月15日になりました。

ふどうの森トレイルラン実行委員会事務局FAX:0575-24-0099
メール:shojihayashi34011@yahoo.co.jp


リサイクルアートで環境問題を問いかけたい

アンタール アレステギ パズ ルピオさん(36歳) メキシコ人 日本に来て10年。現在は鹿児島県在住。メキシコで生まれ育ち、その多彩な才能を幼い頃からアウトプットし、絵を描く事やアボカドの種を利用した彫刻アート、使用しなくなったプラスチックを利用したリサイクルアートなど、様々な種類のARTを製作し続けている熱心なリサイクルマン。ZOOMでお話を伺った。

アンタールさんはメキシコのさまざまな場所に住み、現在は日本に拠点を置いて、農家で働きながら妻と息子の3人で暮らしている。そこには不要になったビニール袋がいっぱい!道を歩けばいろんなごみが落ちている。それらを拾ってきて、色別に分けて家にストックしている。その中にはまだ使えそうなものもいっぱいある。集めている素材は、スチール、ワイヤー、ロープなど。とても興味ふかいと思うのはいろんなシチュエーションに使えそうな魚網。とりあえずなんでも拾って、キープしておく。ごみを見ると宝物と感じて、もうごみから目が話せないという。
「私は、捨てられたアイテムにセカンドライフを与え、私たちが絶えず捨てているものを再評価するのが好きです。私たちが環境に対して何をしているのか、そして私たちが自然をどのように扱っているのかに注意を払うことは非常に重要だと思います。」
捨てないことの方が大事だが、ごみとなってしまったモノをもう一度価値あるモノに変化させアート作品に仕上げる。みんなもポイッと捨てる前にもう一度命を吹き込むことはできるはず、と地元でワークショップも展開している。
「再利用やリサイクルには多くのやり方があり、私の手法はその中のひとつ」。アンタールさんは、ごみをリサイクルして、子どもや大人の想像力をかき立てようとしている。
「私たちの行為に責任を持つこと、その意識がリサイクルに繋がり、環境に影響を与える重要な行為に繋がります。」

ゴミ問題の根本は、企業がゴミとなるものを作り出さないこと。さらに消費者の意識変革も重要となる。アンタールさんは特に今プラスチックゴミに危惧を覚えるという。
インタビューの内容は引き続き、次号の「熱中人」で紹介します。

 

 

 

 


vol.206 続・ぎむきょーるーむ 子どもの傷と周囲の気づき

基本になること—

なにか理由があるのではないか、と思いをめぐらせる

学校に行きしぶっている子どもが、朝起きてこない、なかなか学校に行く準備をしない。すると、「早く起きなさい」とか「なに、ぐずぐずしているの」などと叱責し、追い立てることはするけれど、なぜこういう状況になったのか、なにか理由があるのではないか、と思いをめぐらせるということは、たぶんあまりないのではないでしょうか。
子どもが家にひきこもる生活をするなかで、不安感や孤立感から自分の世界を守るためにゲームやネットなど意識が集中できるものにとりくんでいる場合、それを激しく叱責しとりあげることは、子どもの家での心の居場所をとりあげたり狭めていくことになります。親の立ち位置から子どもサイドに視点を移し、子どものおかれた現実を見直していくことが必要です。

話を聴くこと、話をすること—

親にほんとうの話をするとき

子どもは、最初に親が安心するような話をすることが往々にしてあります。けれど、最後に本音をいうことがあるから、話は 最後まで聞いてみないとわからない。グループ相談会(私が主  宰する「モモの部屋」では、こじれた親子関係を改善し解決するために話し合っています。)では、このことを他の人の話を聴くことで学ぶんですね。人の話を最初から最後まで聴くことができるようになる。あるいは最初から最後まで一部始終を自分で話すことをできるようになると、はじめて家に帰ってわが子の話を聴くことができるようになります。親が話を聞く耳をもつようになると、子どもも親に話をするようになるんですね。親が「無理して学校に行かなくていいよ」といいながら、学校に一日でも早く行ってもらいたい、休み休みでもいから行ってもらいたいと思っていたりしているときは、子どもはほんとうのことを話しません。そのような状況で子どもが話をすることがあっても、それは不安になっている親を安心させるための話です。
自分がどんなにつらい経験をして、どんなに深く傷ついたか、人が信じられなくなって人生に絶望し、「今日死のうか、明日死のうかと思っていた時期もあったんだよ」というほんとうの話は、親がほんとうの意味で聴く耳をもって聴いてくれないかぎり、できないんですね。

親が心すること—

必要なのは屋根と寝床と食事、そして時間

子どもに必要なのは、まず雨露しのげる屋根と、安心して眠れる寝床があることです。子どもは、学校に行かない、行けなくなったことの原因や理由をわかってもらえず、親が焦って学校に行かせようと追いつめるときには、親に反抗したり、乱暴してしまったり、物を壊したり、自己防衛のためにいろいろなことをしてしまいます。そのため、寝ているあいだに「殺されるかもしれない」という不安をもっている子どもがけっこういます。そういうとき、親は「殺そう」とまでは思わなくても、「この子が交通事故にでもあって、死んでくれたらいいのに」と思っていたりします。以心伝心ですね。子どもは赤ちゃんのときから親の顔を見て育っているから、親がおなかのなかでなにを思っているか、神様よりよくわかっています。
子どもは親に多くのものを求めていません。悩みや心配を抱えているときは、食べるものが偏ったり、過食、拒食になったりすることがあります。食べることは命をつなぐことですので、そこにいろいろな変化が現れます。食べものを用意するときも、その子の口にあったほんのわずかな食べものでいいんです。偏食と思わず、その人にあったちょうどいい量の食事ともいえるでしょう。
子どもに必要なのは、屋根と寝床と食事、この三つとそれから時間です。子どもが自分の心に負った傷の痛みや苦しみも含めて自分の失ったものを回復するには、十二分な時間が必要です。急がない、焦らないようにすれば、子どもは自分の問題を自分でしっかり解決して、やがて一歩を確実に踏み出します。親にできるのは、こういうことなんですね。

「助けて」をいわない子への注意

保育園や幼稚園で子どもが「行きたくない」と泣き叫んだとき、それをしっかり聴いてあげたでしょうか。親たちは「園に来たら遊んでいるので大丈夫です」といわれ、そのことを頼りに通わせつづけます。「いやだ」「助けて」と泣いて抵抗した幼い子どもたちは、自己主張したとき大人は誰も助けてくれないという思いを強くします。大人は「いい子」でいるときは受け入れてくれるけど、「いやだ」と自己主張したときには助けてくれない。そういう経験をした子どもは、「助けて」といわなくなり、相手が求める「いい子」を演じつづけ自己を抑圧します。その結果、子どもは「ほんとうの自分が望んでいることがわからなくなる」ということが起ります。心は登校拒否、身体は登校を続けた子どもが学校の先生などから「ほんとうにいい子ですね」といわれることがあります。しかし、それが限界にきて、矛盾した自己を統合することが耐えられなくなったとき、ほんらいのその子の存在の中核にあった「NO」が出てくるのです。

「NO」をしっかり受けとめる

その子の抑圧されていた「NO」は、自分自身を回復させるために必要な「NO」です。学校に行かない、職場に行かないという拒否の「NO」です。ですから、それは子どもにとって、存在にかかわる自己主張なのです。そこを親がしっかり受けとめられるかどうかで、その先の子どもの人生の道筋がちがってきます。「NO」といっている子どもを強制的に元のレールにもどそうとするのではなく、「NO」をしっかり受けとめることが必要です。
こうして親の姿勢が変わり、親が自分のことを理解しようとしていると思えたとき、子どもはつらかったことや、理解してもらえなかった苦しみや絶望など、さまざまなことを話してくれると思います。それを最後まで聴く親がいることで、子どもは過去の傷を洗い、親子関係を修復し、自己実現のために歩み出すところに、しっかり立てるようになります。
親に求められているのは、子どもの過去といまをしっかり受けとめ、子どもが時間をかけて回復するのを信頼して任せることなのではないでしょうか。


内田良子 うちだ・りょうこ
1942年生まれ。心理カウンセラー。1973年より27年間、佼成病院小児科の心理室に勤務。1988年より23年間、NHKラジオ「子どもの心相談」アドバイザー、1998年、子ども相談室「モモの部屋」を開室。登校拒否・不登校・ひきこもりなどの相談会を開く。著書に『カウンセラー良子さんの子育てなぞとき』『幼い子のくらしとこころQ&A』『登校しぶり 登園しぶり』(ジャパンマシニスト社刊)


vol.206 しょうがいをみつめる vol.17

『This is me』

「The Greatest Showman」という2018年公開のミュージカル映画の劇中歌でもあるこの曲は、私にとってのパワーソング(聴くと元気がもらえる曲)の一つです。
実話に基づくこの映画は、一言で言うとP・T・バーナムという男の波瀾万丈サクセスストーリーといったところでしょうか。

貧しいながらも頑張って働いて、良家の娘チャリティーと結婚したバーナムは幸せな結婚生活を送っていました。しかし、ある日会社が倒産、解雇されてしまいます。家族を養うために思いついたのが、ユニークな人達を集めたショーの興行。やってきたのは、小人症や多毛症、黒人やアルビノのような、その特異な見た目から、人目を避けて暮らしてきた人達でした。
こういった人達を見せ物にするというのは、今の感覚からするとどうなのかという気もしますが、時代は19世紀。家族からでさえ忌み嫌われて、世間から遠ざけられてきた彼らにとって、バーナムの考えたショーは、自分をありのままに受け入れてくれる、認めてくれる家(居場所)となったのでした。
ショーは大盛況となりますが、街では興行に対する抗議運動が起こり、世間からはペテン師扱い。オペラ歌手のジェニーと組むことで、ようやく世間から評価を受けることができました。
その後のパーティでのこと。バーナムを訪ねてやってきたショーのキャストを、彼はなんと追い返したのです。せっかく掴みかけた名声を手放したくないがために。世間体を気にする余りに。
これまで受け入れられている、認めてくれていると思っていたバーナムの裏切りとも言えるその場面で、この『This is me』は歌われたのです。
自分達の居場所を見つけた彼らは、こんなにも強く生まれ変わったのです。
バーナムはその後も、ショーやキャストをないがしろにしていきますが、全てを失う一歩手前で大切なことに気付き、愛と絆を取り戻すことができました。

人は他人と違うことを恐れる生き物です。自分だけだったらどうしよう、他の人から変に思われたらどうしようと。ものすごく不安に駆られることがあるように思います。
そんなときにこの曲は、自分は自分なのだと信じ切る勇気を与えてくれます。

最後に。『This is me』のビハインドストーリーがYouTubeで見られます。この曲を歌うキーラ・セトル(劇中で多毛症の女性を演じる)が、自身のコンプレックスを見事跳ね除けて高らかに歌うその姿に、誰もが心を打たれるでしょう。ぜひ、一度ご覧ください。    S.I


Vol.206 人生これから!やってみたシリーズ第9弾

奥村八代生さん

虫食いの穴が開いたセーター、シミがとれない服、剥がれてしまった靴…。そんなものを発見すると、奥村さんはちょっとワクワク。それらをどんなふうに復活させようかアイディアをひねります。ただ元通りに修理するのではつまらない、自分の手を通してひと味加えて仕上げたい。セーターだったら、穴の大きさや形、素材の色やセーターのデザインなどを考慮し、フエルト、ビーズ、刺繍などを駆使します。見た人が一瞬「どうなってるの?」と考え、その後くすっと笑っちゃう、そんなデザインを考えるのが大好き。
好評だったのがフエルト、刺繍、ビーズで仕上げた蝿。「あれ?こんなとこに蝿がとまってるよ」「へへ、違うよん」なんて楽しい会話を想像しながら仕上げました。

奥村さんが最初にちくちくしたのは、虫食い穴がいくつも開いてしまったお気入りのウールのカーデガン。高かったし、とっても気に入ってたから捨てるという選択肢はなく、どうしようかと考えていました。友人がこんなのがあるよと、フエルトを使って穴を塞ぐやり方の存在を教えてくれて、早速やってみると意外と簡単で面白い! 穴の空いたところだけではなく、全体の様子を見てバランス良くフエルトをちくちく。もともと物は捨てずに大切にするタイプの奥村さん。大切なカーデガンを捨てずにすんでほっと一安心。そして、これなら簡単によりよい形で再生できるし、本体がいよいよダメになってもちくちくしたパーツだけ切り取って他のものに貼り付けて使うこともできる。以来セーター、靴下、洋服、靴と再生させ楽しい趣味が一つ増えた感じ。
家族や友人に頼まれると、服のデザインはもちろん、その人の雰囲気や体型、好きなものなどを考慮し、イメージを膨らますことから始める。その人らしさを大事にしたいから、ここが1番時間をかけるところ。完成形が定まれば後は仕上げに向けて全集中。「小さな直しでもすごく時間がかかることもあるんです。だから、直してってこの冬に頼まれてもできあがりは来年の冬だよって言うの」そんなのんびりしたスタンスは自分に合っていて、ストレスなく楽しめると奥村さんは笑います。

ちくちく再生は楽しいけれど、ただ楽しいだけじゃない。こうやって物に向き合うことで、自分自身を見つめることにも繋がっていきます。
「必要のない物はきちんと整理してサヨナラすべきだけど、誰にもひとつやふたつ『愛着や思い入れ』のある手放したくないものがあるはず。そんな物たちをもう一度甦らせることができたら、物ではなく自分自身を大切にできた気持ちになりますよ。ぜひ、試してみて下さい。」

 

 


vol.206 人生これから!整理収納術

方付けの順番

① ゴール設定 例えば、パン作り教室を自宅でやりたい。アウトドアをもっと手軽に楽しめるよう整理したい、など。自分らしい暮しができるゴールを設定しましょう。少しでも好き・やりたいがあるなら、それを大事にするとだんだん見えて来ますよ。
② モノの整理 整理とは、必要か不必要かに分けて不必要なモノを取り除くこと。取り除く方法は、
捨てる・リサイクル・リメイク・人にあげる。「捨てる」ことは一番早く整理を進められます。他は「捨てる」よりも何倍ものエネルギーが必要です。それだけのエネルギーを注ぐだけの価値があるモノかを考えましょう。「自分らしく今を生きるために必要なモノと量か」を基準に考えながら整理しましょう。
③ 必要なモノの収納 取り出しやすくて収納しやすい状態にモノを収めること。取り出しやすいことも大事ですが、しまいやすいことも大事です。

小さいスペースからトレーニング

まずは引き出し1個から!小さなスペースから始めてみましょう。キッチンの消耗品スペースは執着がないですから始めやすいと思います。捨てることに慣れるトレーニングをする。捨てられないという人は、自分はモノに執着している、何故なんだろうと考える。自分と向き合わないと先に進めないです。モノの管理はテクニックではなくて、自分が管理できる量にするということ。モノは使ってなんぼ、自分が管理できる量を見極めましょう。

夏休みの宿題を早めに終わらせれば残りの夏休みが楽しめるように、早めに整理すれば残りの人生を楽しめますね。
まずは、お財布の中のいらないレシートやカードを捨てること、引き出しの1つから始めてみませんか?

Q&A

Q.家族がなかなかモノを捨ててくれません。
A. まずは自分のモノをキッチリ片付けることがいいと思います。それでご家族も刺激されるかもしれません。ただ、リビングのように家族の公共スペースにまでモノを持ち込むのはNGとしたいですね。

Q.成人した息子達は大学の卒業証書をいらないと言います。せっかく卒業した証しなのに、と思うのですが。
A. 息子さんたちはハッキリしていますね。とっておきたいならばご自身が保存しておけばいいと思います。何を残すかが大事であって、全部を捨てる必要はないですよ。

Q.押し入れのように奥行きの深い場所の整理のコツは?
A. もしも奥に入れっぱなしで忘れてしまうものなら要らないのかも。必要ならばどこに何があるのか地図を描いておくのもいいです。大きな空間は使いにくいので、仕切った方がいいです。よく使うものは、戸を開けてすぐのところの「ゴールデンゾーン」にしまいましょう。

森口さんの実家のお話し〜実家の遺品整理について〜

13年前に両親が亡くなり、空き家となった実家は石川県にあり、めったに行けません。2年前に整理に手を付けた時、タンス6棹、大きな本棚、応接セット、などなど、2トントラックに山盛り!それでも未だに家の中に残っています。荷物を運んだレンタカー代、処分代、行き来するための交通費ホテル代等、捨てるのにもお金がかかります。やれどもやれども終わらないままコロナ禍となり中断、今もずっと心の負担となっています。私は子どもにそういう思いをさせたくないので、45才の今から整理しています。


もりぐち ゆうこ Hallelujah You(ハレルヤユー)主宰 整理収納アドバイザー
石川県出身・岐阜県可児市在住。「見映えだけじゃない“暮し映え”する北欧収納であなたの暮しにイロドリを!」テーマに活動中。ブログは「アメブロ 森口ゆう子」で検索!


vol.206 熱中人 西部沙織さん

手軽に、気軽に、簡単に!

多くの人にコーヒーを楽しんでもらいたい。

お客さんの「この前の豆、美味しかったよ」
の言葉に励まされてます。原動力です!

珈琲豆自家焙煎の店「ウエスタン」経営

西部 沙織さん(加茂郡富加町在住)

「コーヒーは焙煎、挽く、淹れる、飲む、と、その行程の全部を楽しみながら自分の好みにアレンジできる飲み物。だからお客さんにも生の豆を買っていただいて、焙煎からぜひ楽しんでもらいたいですね」
沙織さんの言葉に、素人が焙煎?焙煎機は?と疑問を持つ人は多いのでは。そう訪ねると、「焙煎機は自分で楽しむためなら胡麻煎り器で充分です!ご要望があればお一人からでも教室を開きますよ」と笑顔で答えてくれました。

コーヒー好きだった沙織さんですが、店に行っても納得できる味にはなかなか出会えませんでした。テレビで見た美味しいコーヒーの淹れ方を参考にしてもうまくできないし、本を読んでもよくわからない。ある日、コーヒー店主催の「コーヒーの淹れ方セミナー」に参加し、そこで飲んだコーヒーの味に「こんなに違うんだ!」と感動したことでコーヒーへの思いがますます強くなりました。
いつしか、その思いは美味しいコーヒーをお客さんに提供する側になりたいという夢になり「夢、追わせてください!」とパートナーに頼み込み、夢の実現へと動き始めました。
良い豆を扱う人がいると知れば東京まで足を運び、納得するまで焙煎について教えてくれる人がいないかと、全国を探し歩く日々が続きました。
やっと、この人に教えてほしいという人を三重県に見つけて、アポ無しで飛び込み、今までの経緯と想いを伝えました。「本気でやるつもりがあるのなら教えるけど、やめるんだったら今すぐやめなさい」と言われましたが、沙織さんの覚悟を知ると、コーヒー豆の仕入れ方、選び方、プロとしてのコーヒーの淹れ方や焙煎機についてなど、沙織さんが抱えていた疑問に全部答えてくれました。「ネット動画とか信じるな。自分の舌を信じろ。」とも。「厳しくて口が悪いので、本当はあまり喋りたくない先生ですが(笑)、この人はホンモノだなぁって思える人で、今でも時々わからないことがあると教えてもらっています。」

コーヒーを提供する側になってみると、美味しい淹れ方がわからない、他のコーヒー教室に行ったけど、よくわからないなど、コーヒーに対してとまどっている、かつての自分と同じような人が意外と多いことに気づきました。

どの人にもコーヒーを楽しんでほしい。ウエスタンのコーヒー教室のモットーは「手軽に、気軽に、簡単に!」。カフェではコーヒーを淹れる様子をお客さんに見てもらえるようなレイアウトにしてあります。
また、プロ意識の高い沙織さん、「お客さんから何か聞かれたとき、わかりません、知りませんって言いたくないんです」。お客さんのどんな質問にも答えることができる自分でありたい、と勉強は欠かせません。
コロナ禍で入荷が遅れたり、国によっては内戦で輸入が止まってしまうこともあるけれど、気になる豆はどんどん取り寄せ試飲し、美味しければ店で提供。美濃加茂市のお店で扱う豆は40種類以上にものぼります。

スーパーのレジで前に並んだ人のカゴにコーヒー豆が3袋もあるのを見ると気になって、つい同じ豆を買ってしまう、なんてことも面白がりながら、焙煎に配達に事務仕事と、忙しく仕事に励んだり、お客さんとの会話を楽しんだり。今日も沙織さんはコーヒー三昧の日々を送っています。

お湯の温度は85℃〜90℃、淹れる量が200ccまでならドリッパーは一つ穴、それ以上なら2つ穴の、豆がお湯にしっかり浸透し味の抽出しやすい台形がいいと思います。ろ紙は、無漂白のペーパーだとパルプの色や味が出てしまうことがあるので、酸素系で漂白されたものがお勧めです。

カフェ:コーヒーショップ ウエスタン(美濃市)
テイクアウトの店:ウエスタン里山(美濃加茂市)

 

 

 

 


vol.206 夢か悪夢かリニアが通る!vol.35

元東京都知事の石原慎太郎氏が2月1日亡くなりました。石原氏は運輸大臣に就任直後の1987年12月、全長7キロのリニア宮崎実験線に試乗し、「豚小屋と鶏小屋の間を走っているようなもの」と発言、本格的な実験線の工事費1000億円を負担するというJR東海の申し入れを受け入れ、山梨実験線建設へと大きく舵を切りました。一方、都知事時代の2002年1月には、高架で計画され住民の反対で凍結されていた東京外郭環状道路(外環道)を、地権者の承諾のいらない大深度地下トンネルで建設することを扇千景・国土交通大臣と合意しました。2つの巨大事業は今も、さまざまな問題をはらみながら続いています。現状をどう捉えているのか、今こそ「石原節」を聞きたかったと思います。(参考・老川慶喜著「日本鉄道史 昭和戦後・平成篇」、丸山重威著「住宅の真下に巨大トンネルはいらない!」)      ジャーナリスト・井澤 宏明

 

「信ぴょう性薄い」調査報告

事故後初めて、トンネル内部が住民と報道陣に公開された
(2021年12月16日、調布市で)

直上以外「緩みなし」?

 2020年10月に東京都調布市の住宅街で、「外環道」の大深度地下トンネル工事による陥没事故が起きて1年余り。陥没現場では、トンネル直上の幅約16メートル長さ約220メートルの範囲の約30軒に限り、「地盤の緩み」が確認されたとして、更地にして地盤補修するための「仮移転」や買い取りの交渉が進んでいます。
一方で、「直上」以外の多くの住民も、住宅の壁のひび割れや地割れ、体調不良などに苦しめられています。事業者の東日本高速道路(NEXCO東日本)は、直上以外の約200軒でも家屋被害の補修には応じているものの、移転対象とはしていません。

住宅の真下を通る外環道の模型。「大深度地下」が意外に浅いことが分かる

NEXCO東日本や国土交通省などは21年12月17、18日に開いた住民説明会で、トンネル直上以外について「工事の振動により家屋に損傷を与えてしまった可能性は否定できないが、地盤を緩ませたという事実は確認できなかった」と説明、住民の不安を真っ向から否定するような調査結果を公表しました。
この説明会に先立つ21年9月、住民から相談を受けた芝浦工業大の稲積真哉教授(地盤工学)はトンネル直上以外で被害の大きい住宅4か所を調査し、地中に多数の「空隙」を見つけ、地盤の緩みも確認しました。
この調査結果の報道を受け「住民の不安解消のため」として事業者が開いたのが12月の説明会でしたが、住民からは「私たちの実感はまるで違う。被害は日々拡大し、地盤の変動を感じている」などと反発の声が上がりました。
稲積教授は「20年に発生した家屋のクラック(割れ目)が1年たった今も成長しているということは、下の地盤が動いているとしか考えようがない」と批判しています。

トンネルを掘り進むシールドマシンの模型

陥没原因は「気泡剤」

危機感を募らせた被害住民は今年1月17日、外環道事業と直接かかわっていない第3者の専門家を招き「外環問題を考える緊急シンポジウム」を調布市で開きました。NEXCO東日本など事業者にも出席を求めましたが、応じることはありませんでした。
NEXCO東日本の有識者委員会(小泉淳委員長)は昨年2月、陥没事故の原因について「特殊な地盤と施工ミスが重なったため」とする調査報告を出しましたが、シンポに出席した谷本親伯・大阪大名誉教授(トンネル工学)、浅岡顕・名古屋大名誉教授(地盤工学)は口をそろえて否定。トンネルを掘削するシールドマシンで使用している「気泡剤」が地盤を緩ませ陥没を起こしたとの共通の見解を示しました。
さらに、地盤の「緩み」について谷本名誉教授は「『緩み』が生じる範囲は決してトンネルの直上だけではない」とNEXCO東日本の調査結果を否定。参加した4人の専門家全員がNEXCO東日本の説明や有識者委の調査報告について「信ぴょう性は薄い」と批判しました。
事業者「お抱え」の有識者委の調査報告に専門家からの批判が出にくい背景について谷本名誉教授は「土木の分野にいる人間はすべて公共事業に関係している。発注者(事業者)側の意向を無視すると、自分の仕事がまっとうできなくなるので、関与を躊躇してしまう」と明かしました。
専門家との対話から逃げたNEXCO東日本など事業者は、陥没現場周辺以外の工事再開へ向け1月末から2月初めにかけて、住民説明会を開きました。

 

 

 

 


vol.206 ボーダーレス社会をめざしてvol.65

NPO法人オープンハウスCAN 理事長 伊藤佐代子

逆転

娘が大学へ行くため、岐阜を離れる時のことです。私の父に「お母さんをよろしくお願いします」と娘が頼んでいる姿を見て、あ~心配される年齢になってしまったのだ・・・逆転しちゃったなとガックリきたのを思い出します。そのようなことが息子の周りでも起こりました。
娘家族が年末年始に我が家に来ました。普段は静かなお正月を過ごしているのですが、今年はスキーに行きたいから岐阜へ行っていい?と帰ってきました。一緒に賑やかに過ごしている中で、4年生の孫が障がいのある息子を思いやる姿が見られ、びっくりしました。「あっちゃん、すごいなぁ。」とか褒めることばがちらほらとあり、大人対応になっていました。1年生の頃は、「どうしてあっちゃんは、変な事ばっかり言うの?」「病気だから」「だって熱とかないやん」「熱がない病気もあるの。自閉症っていう病気だから」「ふーん」分かったような分からないような変な会話した覚えがあります。
その時、娘に「K君が、お兄ちゃんの事を聞いてたから、上手に話しておいてね。」と委ねておきました。これからの長い人生、できれば障がいのある伯父さんを理解して欲しいですから。しかし、すぐには理解が追いつかなかったようで、距離を取り近寄ろうとはしませんでした。
現在1年生の孫もいますが、今回、その子も同じ様に近寄らず、遠くから見ていました。元旦に「カルタをやりましょう」と息子が娘家族を誘いました。犬棒カルタ・都道府県カルタ両方ともすごい早い取り口で、息子の圧勝。皆が呆気にとられました。1年生の孫にすれば、もう不思議で、不思議で、理解ができないのでしょう。何とも言えない表情をしていました。しかし、3年前にそんな状態だった4年生の孫は、すっかり変わり自然体で、何事も寛大に受け止め、嫌な顔を一切しないで上手に付き合っていました。
3年と言う歳月は、すばらしく成長をするのだなとびっくりするのと同時に、娘・娘婿がきちんと障がいについて話してくれたのだろうと想像しました。
一般の人は、障がいのある人と関わることが少ないので、このように順調に障がいを理解することはできないかもしれません。孫たちの姿を見ていますと、1年生の状態(理解できていないまま)の人が、障がい者を差別したりするのかもしれません。そのような人をなくし、障がい者を受容してもらうためには、障がいをきちんと説明する人、障がいのある人と接する機会、両方が必要なのだろうと思います。
最後に、4年生の孫が「あっちゃんにもよろしく言っといてな」と帰っていきました。


vol.206 未来に続く暮しの学び 最終回

食を囲む

人が集う場で平和と調和に満たされた関係性を築くには…。私は最近こんなことを考えています。同じ土地で、コミュニティとして持続可能な生活を探求しつづけてはや8年半。
2022年を迎え、過去2年もの間コロナの社会的影響を受け、厳しい規則の中で軌道修正を余儀なくされていたように感じます。でも持続可能な暮らし方は心の奥で待機している。と、いうことで、ここでの暮らしも新しい方向に舵をとる起点に立った気がしています。
実際に同じ方向を目指して、この土地(エリア)の全住人がそれぞれの生活があるなかで、共通点や、近所同士のつながりを求めています。
今年にはいり、月に一度はみんなで顔を合わせようと夕食会を開くことにしました。住人すべてのひとに共有できることとは…やはり「食」。そこで一品持ち寄り会をすることに。食ならみんな共有できる。食を中心にすることは、私たち人間が生きるための根本的な要素だと感じます。畑でとれる野菜をつかったレシピを紹介したり、なにがここの畑では育っているのかを、共有できるいい機会。とても和やかな会になってほっと一息。よくよく考えてみたら、先住民族に限らず私たちの先人たちも、収穫祭を行ってきた。実りの祭りとして、食を中心に集まるのは必要なことと改めて感じています。特に今年はローカルブッシュフードのバニャナッツの豊作の年なので、それを調理してみたり。先住民族の人たちは収穫祭として、わざわざ遠くに住む地域の部族も集まってくるという。テクノロジー世代の私たちでも、顔と顔を合わせることで、「土地を共有している」という意識が芽生え、それだけでも価値がある。私は今それを強く感じ、これからもお互いのつながりを大事に、ここの土地での生活を日々を感謝して過ごしていこうと思います。

YAO


vol.206 菌ちゃん野菜応援団 vol.27

まるっと3年ぶりに!!!

私たちの畑にトラクターが入りました!

暑いなかゼーゼー言いながらくわをふるい、草を抜いたり畝立てしたりしていたのを見ていた近所のお百姓さんが「冬にトラクターいれてあげるよー」と!!!!

ほんとですかー!!有りがたすぎますっ!と言うことで、その日大きなトラクターと共に颯爽と現れた農家さん、瞬く間に畑はならされていきました。

不耕起というやり方もありますが、あまりに草が生い茂りすぎて手におえなくなっていたので、大きな管理機は本当に嬉しい。
マルチや支柱などをどけたあと、ぐおんぐおんと土が掘り返され、ふかふかの状態になっていくのはもうもうわくわくしちゃう。その後お師匠さんがこれまた機械で畝を立ててくださり。私たちの目の前には瞬く間に見違えるほどの美しい畑がっ。

いやぁ、手で地道にやることも大切だけれど、文明の利器ってすばらしいー!!!さ、次は春に向けて草や生ごみを投入し、土の中に菌ちゃんを増やしていかなくちゃ、ですね。楽しみだー!!


絶品ゆず大根

・大根500g(1/2本)
(拍子切りして塩もみ)
・塩大さじ1・砂糖50g
・酢大さじ3
・ゆず1個(皮を千切りに実は絞る)

鍋に砂糖と酢を入れ沸騰しないよう弱火にかける
火を止めたらゆずの絞り汁を加え混ぜる
ビンに大根の水気を絞って入れ、甘酢と皮を入れる


VOL.206 ここいく日記 はじめの23歩

昨年末、コロナ感染が落ち着くと一気に「いのちの授業」の依頼が殺到し、嬉しい悲鳴。
しかし、束の間の終息でした。今年に入り一気にオミクロン株感染拡大。1月2月の「いのちの授業」は続々キャンセルでほぼ全滅です。そんな中、終息期間に開催できた授業の感想が次々と届きました。

<小学校6年生の感想です。>
・僕は、精子を出すことや、勃起をすることは、恥ずかしくないんだなと思いました。
・私は赤ちゃんはチューしても生まれないことがわかった。
・命って大切だなって思った。数多くある中から1つの命が誕生した。もし違う精子だったら生まれてなかったと知って生まれてきたことに感謝して幸せに思うままに生きたいなと思った。
・私が生まれてきたことはラッキーなことなんだと思いました。今まで好奇心?で死んだあと どうなるんだろとか、首をしめてみたりとか、自分の命を軽く見るようなことをたくさんやってたりしたので大切にしていきたいです。
<中学3年生の感想です。>
・たくさんの奇跡が重ねってある自分の命、他の人の命を大切にしていきたいと思いました。ここいくさんたちが何度も「生まれてきてくれてありがとう」と言って下さって嬉しかったです。
・私はとても勇気をもらいました。人権を守るよう歌を使ったり映像を使ったりとても分かりやすかったし、自分らしく生きていいんだと思いました。一つの命は一つの宝物ということが分かりました。
・僕はもう両親を亡くしてしまって、辛い時もあるけど自分の命を大切にして親の分まで生きたいと思いました。

こんな素敵な感想をたくさん読みながら、受験生刺殺事件で逮捕された高校2年生の報道が頭をよぎりました。
「医者になれないなら死のう」と思ったそうです。
なぜ医者になりたいと思ったのだろう?医者を目指していたのに「いのち」を大切しない選択をしたのはなぜだろう?質問してみたいと思いました。
そして、こうなる前に出逢い「いのち」の話を伝えたかったな・・・とも思いました。
高校2年生、入学してずっとコロナ禍です。人との距離を置く新しい生活様式の中で、学校行事の多くが縮小され、仲間と共に創り上げる苦労、達成感、感動など、心に火をつけるような体験を少しづつ失い、勉強ばかりの日々が続いていたのではないか? 決して許される行為ではありませんが、どんな環境だったのだろうか?なぜそこまで追い詰められていたのか?と思いを馳せていました。
こんな時だからこそ、私たちの「いのちの授業」が少しでも役にたてるのではないか?
いや役に立ちたい。「いのちの授業」を届けたい。そんな思いが増して、相次ぐキャンセルが悔しいです。
子どもの2年と大人の2年は全く違うのに、子どもたちの掛けがえのない日常の時間を、あまりにも過小評価している気がします。大切な時間を子どもたちから奪い、何を守っているのか疑問です。

今こそ、人間の体の素晴らしさ、心の健康、人権、食の大切さを「いのちの授業」包括的性教育で伝えていきたいです。

担当:ここいくメンバー・古川明美でした。
ここいく☎090-3446-8061(中村)


VOL.206 連載-6南の島よりハイタイ

 

前回に引き続き、今回も浦添市在住の素敵な方をご紹介しましょう。
浦添市でカフェを営みながら、シーグラスで作品を作っていらっしゃる島田春奈さんです
皆さんは、シーグラスをご存知でしょうか。割れた瓶から生まれるもので、波にもまれて角の取れた小片となり、曇りガラスのような風合いが特徴です。水にぬれると キラキラと輝き、海の宝石とも呼ばれているとか。
そのシーグラスの作品を初めて見た時の感動は、忘れられません。捨てられた瓶が長い年月を経てアートに。それと同時に、海から流れ着いた他のものにも関心を持つようになりました。カフェの前に広がる砂浜には、シーグラスと共に様々なものが漂着します。ペットボトルやレジ袋、発泡スチロール、そしてたばこの吸い殻が多いのには驚かされました。冬は北風が強いので、遠くからのごみも漂着しますが、街中のごみが、排水溝や川を通って海に流れ着くことを初めて知りました。
海が好きで15年ほど前に偶然見つけたシーグラスの美しさに魅せられ作品を作り始めた春奈さんですが、それが、人や海に住む生き物がけがをする危険なものだと知ってからはビーチクリーンも行うようになったとか。
「マナティ」これは、沖縄生まれのクリーンアップでつながるプロジェクトです。企業、ホテル、観光協会、民宿、共同店等々、そして、春奈さんのカフェ(隠れ家カフェ清ちゃん)もパートナーさんです。参加費一人500円で、集めたごみは、パートナーさんに任せて、手ぶらで参加し、手ぶらで帰れる仕組みになっています。海岸だけでなく、那覇の国際通りなどでも、街マナティが行われています。
自分の今、使っているものに目を向け、ペットボトルの飲み物を買わずにタンブラーを持ち歩く。たったこれだけのことでも、実行する人が増えれば、世の中いい方向に向かっていくのでは。「マナティを通じて、一人ひとりが自分の生活を見直すきっかけになり、ごみを減らす工夫に目を向けられるようになればうれしいですね。
人工的に全く手を加えない、海岸にたどり着いたまんまのシーグラスを、パーツを合わせて作り上げる春奈さんのシーグラスの作品に触れ、今の海の現状に思いをはせることも素敵ですね。


かとう まみ プロフィール
岐阜市生まれ。桐朋学園大学音楽学部演奏学科ピアノ専攻卒業 ・2015年5月:写真集「奥飛騨に響く種蔵の里」(岐阜新聞社)出版 ・2019年6月:写真集「ばあちゃんぼくが継ぐ」(岐阜新聞社)出版・個展3回 岐阜市美術展委嘱作家岐阜市美術展部会推進委員・岐阜県写真作家協会会員・二科会写真部岐阜支部委員・ギフフォトクラブ会員


VOL.206 プレゼントコーナー

206号 PRESENTS

プレゼントご希望の方は、ハガキまたはe-mailで、下記のアンケートを1〜6までご記入の上、編集部・プレゼント係りまでお送りください。
〆切:2023年3月25日 当日消印有効。
宛先 〒504-0855 各務原市蘇原新栄町3-15
e-mail: info@niramekko.com
※お寄せいただいた個人情報は、本紙プレゼントの発送に限り、 使用させていただきます。
※当選の発表は発送をもって代えさせていただきます。

1-あなたが「ごみ減量に実行していることは?」
ごみ対策は環境問題の出発点あなたが実行する!と決めた事、具体的に教えてね。

2- 気になるにらめっこ紙面での広告
3- 気に入った記事、気に入らない記事の
タイトル1つ・その理由もお書きください。
4- ご希望のプレゼント名 (第1希望・第2希望 を必ずお書きください)
※Aは編集室まで受け取りに来られる方。
5- 本紙をどこで入手されましたか?
6- 氏名、年齢、住所、郵便番号、電話番号、 家族構成


A.「CAT&DOG専用機能性サプリ」
トライト様より…猫用犬用各1名様

猫or犬の身体に有益な多くの成分と人間用と同レベルの安全性。乳酸菌を超えた「女神菌生産物質」が配合されています。ペットも大切な家族、ずっと元気でいてほしいですね。にらめっこ編集室でお受け取りください。(1g×60包入)


B.「よりよく生きるためのライフデザインノート 『ゼロの昇天』」                    人生これから!様より…3名様

絵本作家・高畠 純さんのイラストが軽妙!これからの人生をどう生きようか?私らしくってなんだろう?そして人生の最期を自分らしく迎えるって?そんなヒントがいっぱい詰まっています。


C.「CINEX 映画招待券」
シネックス様より…ペア3組様

大きなスクリーンに映し出される雄大な景色、スピーカーから出される音楽の響き…。作品の素晴らしさを存分に味うなら、やっぱり映画館!写真は「クレッシェンド 音楽の架け橋」のひとこま。岐阜市柳ヶ瀬のシネックスでご利用いただけます。


D.「ダンボールコンポスト」             

いのちの循環プロジェクト様より…1名様

キッチンから出る調理くずとか食べ残しは臭うし、すぐに捨てたくなりますよね。でも、手放すならこのコンポストへ!バクテリアが生ごみをパクパク(分解)してくれて、とてもいい堆肥になりますよ。毎月コンポストシェア会を開いていますので、参加できる方優先です。セット内容:基材(燻炭・ココピート)ダンボール・カバー