ペットシッターとして
この仕事を始めようと思った理由は大きく分けると2つあるんです。
1つは、以前ホテル併設のペットショップで働いていたときの経験が大きなきっかけです。飼い主さんは遠方での冠婚葬祭や、旅行に行くときにはペットを連れて行けない。そういうときにホテルに預けていただくんですけど、人やケージに慣れている犬や猫はそれなりに過ごせますが、家から出たことがなくてはじめてホテルに来た子は大体体調を崩すんですね。例えば吐いたり、ご飯を食べなくなったり、3日間くらい排泄しなくなったり。そういう現状をスタッフと相談しながら、なんとかリラックスさせてあげようと思うんですけど、やっぱり時間が限られますし、飼い主さんじゃなきゃできないこともあるし。それならばペットシッターとして飼い主さんの家に行ってお世話すると犬猫はストレスのない生活ができるかな、と思ったんです。もう1つは、犬や猫を飼うと、外出できないという方が割と多いんですね。可哀想だから家にいようって。逆にいうと預けられないから家に居なきゃいけない。犬猫を可愛がるんだけど、逆に制限される人生になってしまっている。そういう方にペットシッターを知っていただき、顔合わせで信用して頂ければお世話に伺います。そして、もっと楽しいこと、もっと外に出たり、たとえば被災地に行ってボランティアしたりとか、豊かな時間を過ごしていただきたい。そういう面でお手伝いできるかな、と。そういうことが2つの大きな理由です。
10年くらい前ですが、自分は昔から何が好きだったかということを書きだして、それで、何が一番幸せか、と書いたんですね。そうしたら、役に立てたと実感できたり、喜んで貰ったときが自分の一番エネルギーが出るときだ、って思ったんですね。そういうこともあって、人の役に立とうってことはずっと思っていました。
依頼者のお宅に伺うということ
室内飼いの場合、カギを預かるわけですから、僕のことをどう信用していただけるかは大きなポイントです。そのため、飼い主さん、ペットとの顔合わせに無料で出張します。
お世話させていただくお家の方に「ご近所のどこに挨拶したらいいですか」って必ずお伺いします。そして教えていただいお宅に挨拶に伺います。家の方が留守中に出入りするので、それをしないと不審者になっちゃうんです。
ペットシッターにおじゃまして、初対面は互いに緊張しています。最初は、犬猫に慣れてもらおうと思っていたんですけど、2日目に「あ、お客さんは自分の方だから、僕が慣れなきゃ」って気づきました。そこを最初は間違えていましたね。でも、それを気づいてから、僕が慣れていくことで仲良くなりました。僕の意識で変わった所ですかね。
今、一ヶ月入院されている方のお家へ行って猫のお世話をしているのですが、お世話が終わると、毎日飼い主さんに電話して、状況をお話しをしたり、写真付きでメール報告をします。
でもそのお家でのお仕事が終わって会えなくなると寂しいですよね。お世話した猫の写真ばっか見ているような気がしますね。(笑)それでうちの奥さんも「また会いたくなったらどうすんの」って心配しているんですけど、いやあ、そしたら多分会いに行っちゃいます。
犬や猫の飼い方
飼い犬が結果的にすごくいい子だった、ということはラッキーですが、そうじゃなくなってしまうことも多いです。家だけに放っておいて、ケージにも入れたことがなくて、人に会ったことがなくて、吠えたら必ずご飯をもらえる、というような生活をしていると、他者との関わりをすごく軽視する犬になります。会う人といえば飼い主さんだけ、なんて場合は行ってもなかなか心を開いてくれませんし、その子がホテル行くともっと大変です。
震災のときに家に住めなくなったペットたちがいろいろ人に世話をして貰いました。そのときに、ケージで生活できない犬がいっぱいいたんですね。ケージトレーニングをしていれば、そういう状況でも生活していけますが、いざっていうときにケージで生活できない子は、ストレスで本当に弱っちゃうんですね。だから小さいときにケージトレーニングをしておいた方がいい。そうでないと病院に入院、となったときには非常なストレスがかかるという覚悟はしといた方がいいですよね。最後まで病気なく看取れればいいんですけど。だから有事のためにやっておくといいこと、というのは家庭犬の時にいっぱいあります。
僕はペットショップでは訓練士としてパピートレーニングをしていました。生まれたばかりの子に何をしたらいいのか、抱っこひとつでも服従心を養い、飼い主さんのことを信頼できるようになります。ケージの入れ方、トイレの方法なども飼い主さんに教えていました。生後6ヶ月くらいまでにきちんと教えると、一生それに慣れていくわけですから、ペットを迎える家族みんなでやってほしいです。
ペットショップで犬を飼うと決めた方に、前もって飼育の方法、注射の種類、飼育費用はこれくらいかかり、保険に入るとこういう利点があります等と話をします。
また、小型犬は7歳でもシニアです。「シニアになったら人と一緒で、やっぱり体の自由がきかなくなってきて、足腰も弱くくなります。歩けなくなったらどうします?補助輪をつけたりとか、そういうことも可能性はありますけど、大丈夫?」って聞くと、「いやぁ、そこまで考えてなかったねえ」って飼うのをやめる方もいました。
飼い主さんの寿命を80年とすれば犬は長い子で20歳です。自分より早く死ぬってわかっているけど大事にしてあげられない人もいます。ですが、そういう中で、家猫、家犬として捉え、家族として深く関わるというように、考え方がこの10年くらいで大きく変わってきました。そういうふうに飼っていた人が今親になって、今度子どものために犬猫を飼う、という時代になったんですね。前は番犬とか家のために飼っていたのが、家族として迎える、というもともとあるべきスタンスになってきてるな、と感じています。
人の命も犬と同じ長さだったら…20歳だとしたら、今の学生達の生き方も変わるでしょうし、37歳の僕の感謝も違うと思うんですね。昔は40歳50歳で亡くなるじゃないですか。その人達が10代で大きな志で動いていますよね。人の寿命が長くなったことで緊張感が緩くなってしまい、いつ必死にやろうか、っていうタイミングを逃しやすいと思うんです。毎年そんなことを思っているんですけど、やっと今年この仕事を始められたので僕にとっては今年は良い年なんです。犬を飼ってて、そういう意識をよく感じました。
犬の年齢を人で言うと何才かって換算しますが、犬の12年はやっぱり12年だと思うんです。人の80歳じゃなくて犬の12歳だと思うんです。
僕の感覚では、老犬は気持ちは高校生で体が80歳なんです。体だけ年取ってて中身は高校生、そういうふうに思っているんです。留守番もできるし、たくさん理解してくれます。
犬は人間の話す言葉なんてわかっていないと思いがちですが、犬は全部わかっていますし、押しつけじゃなくて納得できるように説明をするとちゃんと理解します。どうやって飼い主さんを助けよう、ってずっと思っている。だから飼い主さんが求めることに応えようと必死なんです。いじらしいし愛おしいと思いますね。
いのちを語る、ということ
犬猫を飼っている人の地位向上となると、やっぱりマナーだと思うんですよね。行政に働きかけて公園などを犬の散歩可にしてもらったり。そうなると、犬に対する地域自体のイメージをあげないといけないと思うんですよ。あと啓蒙活動としてはウンチを拾ってみんなで歩きましょう、とかおしっこをしたらペットボトルの水でちゃんと流しましょう、とか、そういう活動は僕でもできるんじゃないかと思っています。シッターの仲間ができたら、そういうこともみんなでしたいですね。
今年の10月に飼っていた8才のバーニーズマウンテンドッグが死んだんですが、「いのち」についてとても多くの事を学びました。近い将来、また新しい犬を飼い、しつけをして一緒に学校などを訪問し、子どもたちに「犬や猫」という入りやすいテーマから「いのち」についてお話ししたいなと思っています。
たぐちなおや●プロフィール
Dog&Cat 専門サービスHappy Partner代表。
家庭犬ドッグトレーナー資格取得後2012年2月までペットショップ勤務。子犬・子猫の飼育は1000頭を超える。販売の傍ら家庭犬ドッグトレーニングを担当。ショップに併設されたホテルでは犬・猫が「えさを食べない」「排泄できない」「吠え続ける子」「ケージの中でずっと震えている子」など、環境の変化で多大なストレスがかかることがわかり、飼い主さんの悩み解消のお手伝いができればと開業。現在、ひと+いぬ2頭+ねこ2匹でにぎやかに暮らしている。
Dog & Cat 専門サービス
Happy Partnerハッピーパートナー
050-3695-3629050-3695-3629(代表 田口 尚也)
営業内容
・パピートレーニング(飼い方レクチャー)
・ペットシッター・お散歩代行・どこでも代行
営業時間 7:00-20:00電話受付 9:00-20:00
(緊急時は24時間対応)
岐阜市保生第120197号