211号(2023.1&2)」カテゴリーアーカイブ

VOL.211 風邪対策をはじめよう

冬はウイルスが活発に活動するため、風邪やインフルエンザなどが流行しやすい季節です。

安静にしていれば、数日で回復
風邪は、鼻やのどに起こる急性の炎症のことで、正確には「かぜ症候群」と呼ばれます。何百種類もあるウイルスのいずれかに感染することにより引き起こされ、その症状は、のどの痛み、鼻水、鼻づまり、せき、たん、くしゃみ、悪寒、微熱、頭痛など、さまざまです。インフルエンザとは異なり感染力はあまり強くなく、重症化することもほとんどありません。通常のかぜであれば、「かぜかな?」と思った段階でただちに安静にしていれば、数日で回復します。
しかし、無理をしてこじらせてしまうと、気管支炎、扁桃炎、副鼻腔炎、中耳炎、肺炎などや、まれに合併症を引き起こしたりすることがあります。また、かぜではなくインフルエンザの可能性も考えられますから、症状を見極めて適切に対処することが必要です。

免疫力を高める生活のポイント
そもそも風邪(かぜ)は正式には『かぜ症候群』と総称される呼吸器の感染症で、医学的には、『急性上気道炎』や『急性上気道感染症』と呼ばれています。鼻腔から咽頭(食道の入り口)までの上気道と呼ばれる部分に炎症が起こり、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、のどの痛み、咳、たん、発熱などの症状が出る病気です。
風邪の原因となるウイルスはライノウイルス、コロナウイルス、RSウイルス、アデノウイルスなど実に200種類以上もあるため、原因を正確に特定するのは難しいとされています。
ちなみに、人に感染する一般的な風邪の原因となるコロナウイルスは4種類が知られていましたが、2002年にSARS(重症急性呼吸器症候群)、2012年にMERS(中東呼吸器症候群)、そして2019年にCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)と、病原性の高い新しいコロナウイルスが現れています。
一方、インフルエンザは、感染の様式は風邪と似ていますが、風邪を起こすウイルスとは異なること、上気道だけでなく肺(下気道)まで感染するケースもあること、また、症状も重くなりやすいことから、風邪とは別の病気だと考えたほうがよいでしょう。
秋から冬に向かう時期など、季節の変わり目には自律神経のバランスが乱れて体の防御機能が低下しやすくなります。また、気温が下がり、空気が乾燥してくると、風邪の原因ウイルスに感染するリスクが高くなります。コロナ禍の今、なるべく医療機関にかからないようにするためにも、“風邪に負けない”(ウイルスの防御および体内で増殖させない)体づくりが大切です。

免疫システムを活性化する生活習慣とは?
感染症から身を守るためにウイルスと戦ってくれる免疫システムですが、免疫細胞を作る力は、生まれてから徐々に上がっていって、20歳をピークに下がっていくとされています。年齢を重ねると風邪をひきやすくなるのも、こうした免疫機能の低下が影響していると考えられます。そのほか、免疫は食事や睡眠、運動など様々な生活習慣にも影響されます。まずは下のチェックリストでご自身の生活を振り返ってみよう。
 免疫システムを考える上で、わかりやすい指標の一つが体温。体温が下がると免疫の働きが低下します。血液の粘度が上がるため血流が悪くなり、免疫細胞の働きが衰えるからです。体温が下がれば、液体であるリンパの流れも滞ります。体が冷えていると感じたら、腹部や太ももなど、動脈が体の表面近くを走っている部分を直接温めるのが有効です。日ごろ“冷え”を感じていなくても、平熱が35℃台などで低い人は、体を温めることを心がけてください。“自家発電”とは、体の芯から温めること。
ストレスなどで自律神経のバランスが崩れ交感神経系が優位になると血管が収縮して血流が悪くなります。ですから、夜は体をゆっくり休めることが大切です。寝る前にぬるめのお湯に長〜く浸かる半身浴をして、副交感神経の働きを高めておくといいでしょう。リンパ球が増えるのは夜中なので、睡眠をしっかりとることも重要です。
わざわざジムで運動しなくても、早歩きを心がけ、駅などの階段をなるべく使う、電車に乗っても座らない、洗濯物を干すときには1枚干すごとにしゃがむなど、自分にとって“ちょっと面倒で嫌だなと思うこと”を日常的に行えばそれが運動になり、免疫が活性化します。運動により筋肉も増加し、体温を上げることにもつながります。 ただし、運動のし過ぎは逆効果。激しい運動は活性酸素を作り出してしまうので避けてね。

免疫力を高めるキーワードは、食事、運動、生活習慣です。免疫が健康に貢献するのは、守りを固めることができるから。
人の体は常に、細菌やウイルス、がんなどの攻撃にさらされています。そられから体を守ることができれば、健康を維持できます。栄養バランスが取れた食事をするのも、適度な運動をするのも、しっかり眠ることも、すべて免疫を高めて守りを固めることにつながり、それが健康の土台になっています。
免疫力アップを意識した生活を送りましょう。

 


VOL.211 風邪かな?と思ったら

冷えてしまいがちな首、手首、足首の3つの首を温めます!靴下やレッグウォーマー、子ども用のカイロなどを上手に活用。お砂糖を入れた生姜湯などを作って、体の中から温めるのも効果的です。忙しい時も、温めるだけならささっと即実行!!

風邪のひきはじめに食べたいのが、消化の良いうどんや雑炊。できれば、ネギ、玉ネギ、ショウガ、ニラ、梅干など殺菌作用や発汗作用があるものをたっぷり入れて。
喉が痛い場合は、炎症を抑えてくれるハチミツ大根や生のレンコンジュースもぜひ!小さな子どもの場合は、片栗粉でとろみをつけたり、砂糖で甘くしたりと食べやすい工夫もしてあげてくださいね。水分をしっかりとることもお忘れなく!

 空気が乾燥していると、風邪のウィルスは力を増してしまいます。風邪のひきはじめは、濡れたタオルを室内に吊るす、加湿器を利用するなどして湿度を50%くらいに保ち、ウィルスの繁殖を防ぎます。
同時に、換気も大切なので、2~3時間おきに窓を開け、新鮮な空気と入れ替えるように。

 風邪のひきはじめは特にうがいが重要です。喉が痛くなるのは、喉の粘膜についているウィルスと戦っている証拠。ですから、うがいでウィルスを洗い流すことが有効ですが、喉の奥まで水が届いてないと効果はありません。「アーイーウーエーオー」と声を出しながらだと、しっかり奥まで届くので、ぜひ試してみてください。

 風邪のひきはじめは、体を休めることも大事。体からの欲求に逆らわず、たっぷり睡眠をとる。寝ている間に、体の免疫力や抵抗力が高まっていきますので、眠たいという欲求に逆らわず、たっぷり睡眠をとることを心がけます。心地よい眠りをサポートしてくれる、ラベンダーなどのアロマオイルを焚くのもおすすめです。

この5つの対処法を実践すれば、薬を飲まなくても翌日にはケロっと元気になっていることも!風邪の引きはじめだけでなく、毎日の生活に取り入れるのがおすすめです。自然と免疫力があがり、風邪を寄せ付けない、たくましい身体になれますよ♪

冷えは“ちょっとした不調”と思われがちですが、実は万病のもと。「手足が冷たい」、「肩がこる」、「しもやけができやすい」、「おなかが冷えると下痢をしやすい」、「腰が冷えると腰痛や足にしびれを感じる」など、冷えの感じ方は人によってさまざま。

精神的なストレスと子どもの冷えにご用心
 冷えには、いろいろな原因があります。冬の冷えというと、気温の低下や寒冷が影響して手足が冷たくなったり、体調を崩したりする人が多くいますが、意外な原因もあります。それは、精神的なストレスです。
精神的なストレスがかかり交感神経が優位になり、体が戦闘モードになって心臓の鼓動が速く、そして体温が上がってきます。「しかし、1か月、半年とこのような状態が続くとエネルギーがなくなって体温は下がってきます。精神的なストレスによって冷えが起きているときは、自律神経を乱しているストレスを解消することが大切です」ストレスの多い生活をしていると体は温かくなりません。スポーツや趣味など、楽しくて夢中になれる活動を自分の生活の中に取り入れましょう。
また、冷えは大人だけでなく、子どもにも見られます。「冬になるとしもやけができやすい」、「風邪をひきやすい」といった不調は、冷えの兆候です。子どもの頃から体を温めることを大切にして、冷やさないように心がける事が大事。「10代、20代は、男女ともにホルモンバランスが変わる時期。とくに10代の子どもをもつ親は、子どもの体温に気をつけて健康管理をしてほしいと思います」
と『上体温のすすめ』の著者・今津医師は話す。

自分に合った体調管理の方法
 簡単で長く続けやすいおすすめの方法は、起床後に1杯の白湯を飲むこと。体の芯から温まります。
日頃から体温計を身近に置いて活用すると自分の普段の体温(平熱)がわかり、体調管理に役立ちます。体の温度には、皮膚の温度と深部体温の2種類があります。皮膚の温度は寝ているときは上がり、朝になると下がってきます。一方、体の深部温度(体温)は寝ているときに下がり、朝になると上がってきます。体の温度はこのように違いがあるため、「体温は、この2つの温度がちょうど交差するときに測定するのがいいです。起床後は食べたり飲んだりする前に、夜は布団に入る直前がよいでしょう。体温は測定時の条件をきちんと揃えることが体調管理の大事なポイントです。ぜひ、起床時や就寝前などの測定習慣をつけるようにしてみましょう

風邪やインフルエンザの予防法としてよく知られているマスクの着用。しかし、インフルエンザの予防においてはほとんど効果がないとする研究も報告されています。そこで今回は、マスクには具体的にどのような効果があるのか、インフルエンザはどう予防すればよいのか、考えてみます。

インフルエンザウイルスの大きさとマスクの穴の大きさを比較すると、インフルエンザウイルスが直径約0.1μm(マイクロメートル)であるのに対して、一般的な不織布マスクの穴は直径約5μm。インフルエンザウイルスは乾燥した空気中においては1日~2日ほど生存可能なのでマスクでは防ぎきれないといえます。

マスクをして咳をする女性

マスク装着で飛沫を防ぐ
ただし、近くにいる誰かがくしゃみや咳をしたときには、マスクによって飛沫感染(くしゃみや咳をしたときに出る水分による細菌やウイルスへの感染)を防ぐことができます。
また、マスクを着用することでマスクの内側が湿った状態になり、この湿気によりインフルエンザを予防できる可能性も示されています。(不織布マスクは除く)

マスクの着用は・・・
これまでインフルエンザの話でしたが、これはコロナについても同じことが言えます。そもそもマスクの常時着用は健康上のリスクを高めます。
「人は表情を見ながらコミュニケーションをとりますからマスクは障害になります。世界では、マスクだけでなくワクチン接種に対しても冷静な対応がされるようになっています。米国ではワクチン3回目接種は国民の30%ほどで低迷しています。海外ではそれぞれの国民が、マスクにもワクチンにも見切りをつけて不要に思って行動しているということです。こういったことも知っているはずなのに、なぜ日本人はいつまでもマスクをつけているのでしょう。自分で考えて責任を引き受けて行動することを避ける国民性も大きく関係しているように思います。自分で考えず、言われないとやらない。一度言われると考えないで永遠にやりつづける――。マスク着用はまさに、責任回避行動の典型例です。“相手を感染させないため”のマスクが、“感染しないため”のマスクとなり、最終的には自身の責任を回避するためのマスクになってしまったと言えるでしょうか」と大和田 潔 医学博士は話しています。
私たちは「マスクはなんのため?誰のため?その効果は?」をしっかり理解して、着脱は自分で決めたいですね。

参考:ボムス、自治医科大学医療センター、オムロン、PRESIDENT Onlineより


長いもバーグ
長いもは中国では滋養強壮剤(漢方薬)で、生で食べられる世界でも珍しい芋。ジアスターゼという消化酵素を含んでいるため、胃腸の働きを助けて消化を促す作用があります。
~ポイント~
つなぎに「麩(ふ)」を使用。ふわふわ食感、じゅわっとジューシーなハンバーグに焼き上がります!
<材料>
★鶏ひき肉、長いも/各100g ★麩/20g ★豆乳/50cc
★にら/40g ★卵/1/2個
★塩/1.6g ★胡椒/0.2g
★大根おろし/100g ★しそ/2枚
<たれ>しょうゆと酢・小さじ2、ごま油・小さじ1、唐辛子1/4本 小口切り
<作り方>
❶ ポリ袋に麩(ふ)を入れてたたき、豆乳を加えて馴染ませる。❷ 長いもを加え、さらに叩いて、なめらかになるまでつぶす。❸ 肉、にら、卵、塩こしょうを入れ、もみこむ。❹ ポリ袋の端を切り、フライパンに絞り出す。❺ 中火で両面をこんがり焼き、皿に移す。❻ たれを作る。ハンバーグの上に大根おろしとたれをかけ、細かく刻んだシソをのせ出来上がり。

さつまいもとりんごの春巻きパイ
秋~冬にかけての季節の変わり目は朝晩の寒暖差が大きく、体調を崩しやすくなります。さつまいもには食物繊維やビタミンCが豊富に含まれています。食物繊維は腸内環境を整える作用があり、免疫力アップが期待できます。ビタミンCは抗酸化作用が非常に高く、風邪予防に効果的ですよ。
<材料> 春巻き8本分
★春巻きの皮/4枚 ★さつまいも/200g ★豆乳/20-30cc★砂糖/30g ★バター/10g ★水溶き片栗粉/適宜 ★サラダ油/大さじ1
<作り方>
❶ りんごは皮をむき、種を除いて1cm角の角切りにする。❷ 鍋にりんご、砂糖(10g)、バターを入れて火にかけ、出てきた水分がなくなるまで煮詰める。(少し透明感が出て、色付くくらい)❸ さつまいもは電子レンジで加熱し(または茹でるか蒸す)、皮をむいて熱いうちにボウルに移して砂糖(20g)を加え、つぶす。豆乳は硬さを見ながら加えて混ぜ、餡に使える硬さにする。❹ 春巻きの皮は2等分に切る。さつまいもとりんごを乗せ、水溶き片栗粉を塗りながら巻いていく。❺ フライパンにサラダ油をひいて火にかけ、4を並べて両面色付くまで焼く。❻ 食べやすく斜めにカットする。

 

 

 


vol.211 映画「杜人」を観て

「大地の再生」に挑む

 かつて人は自然の循環を損なうことなく暮らしてきた。「鎮守の杜」の「杜」という字は「この場所を 傷めず 穢さず(けがさず)、大事に使わせてください」と紐を張った場のことだった。
映画「杜人」を観た。私たちの体も、この大地も、この地球も、息を止められたら生きられない。造園家であり、環境再生医でもある矢野さんの一言ひとことが心に響く。映画の中で、記憶に残る言葉を記し一つひとつ説明しようと思う。

「息をしている限り、まだ間に合う」。

映画の中に、巨木を移植するシーンの一言。私も事務所を移る時に柑橘類の木を2本移植したことがある。その作業は大変だった。まず深く根付いている根の周りを掘り起こすことから始める。運搬を考え根を随分切ってしまい痛めつけた。それでもこの事務所に根付き、花をたくさんつけ、今年は実もたくさんつけた。植物の生命力に感嘆している。

矢野さんはこともなげに巨木を移植すると決めた。費用も作業も大変であるが、「息をしている限り、まだ間に合う」と。 この映画は「環境問題の根幹に風穴をあける奇跡のドキュメンタリー」として各地で上映会とワークショップを展開している。


穴掘りの先生はイノシシ

イノシシは鼻先をうまく使い、凸凹に穴を掘っていく。木の根元、岩だらけの土を道具も使わずに見事に掘る。私がよく登る早朝の鵜沼の森で掘られたばかりの登山道に出くわす。鍬で耕した?と思うくらい…。

「イノシシはただ食べものが欲しくて土を掘っているわけじゃない。循環が悪い大地を掘って、空気の通りをよくしてくれているんです」「虫たちは風通しの悪いところにつく。葉っぱを食べて空気の通りをよくしてくれているんですよ」

『コラム 森・生物・ヒト』によると、「イノシシが掘り起こした穴は、漬物石よりも大きな石がいくつも掘り起こされて周囲に弾き飛ばされていたりする。大変なパワーだ。しばらくすると、穴には落ち葉がたまる。天然の堆肥場である。ミミズやムカデ、菌類などいろいろな土壌生物が集まってきて、せっせとこれらの遺骸を分解し、栄養分に富んだ腐葉土を製造する。そのうち、草木の種子が飛来したり、転がり落ちたりして、芽を出し、伸び始める」とある。さらに「イノシシが頑張るほど、土壌の通気性がよくなり、微生物をはじめとした土壌生物の活性が高くなり、有機物の分解が進み、土壌の肥沃度があがることが期待できそうである。イノシシは通常、農作物の害獣としか考えられてこなかったようだが、このように見てくると、普段はさっぱりわからなかった、森林生態系の中でのイノシシの役割が見えてこようというものである」。

人間以外の生き物は・・・

「植物はともにこの地球を生きる仲間。セミも、カニも、イノシシも、人間以外の生きものはみんな空気と水が循環するように日々環境改善している。その循環の輪から人間だけがはみ出してしまっていることが、いま、災害という形で人間社会に還ってきている

この言葉に私はうるうるしてしまう。紙面で何度も書いてきた開発という名の自然破壊に矢野さんがはっきり表現してくれたようで。しかも温かい眼差しで語る矢野さんに。
土石流や河川の氾濫が証明するように、護岸も山肌もコンクリートで被われて、いかにも息苦しそうだ。コンクリートジャングルという言葉も生まれた背景には高度成長期がある。果たして暮らしは豊かになったのだろうか。

風の通り道

「草は根こそぎ刈ると反発していっそう暴れる。風に倣って刈るとおとなしくなるんです」

今まで私は草の根元を握って、地表から5cmくらいを鎌で刈っていた。草刈りはそういうものだと思っていた。しかしそうすることで、その草の根は太くなり、土が固くなるという。
矢野さん曰く「風の通り道を作るように揺れる部分を刈るだけでいい。そうすることで主根に細いひげ根が張り巡らされ、さらに毛細根が現れる。その力で土が軟らかくなる」のだそうだ。確かにひげ根がガッチリと土をつかみ、酸素を土に入れて、ひげ根の先から出ている毛細根(もうさいこん)が団粒構造(だんりゅうこうぞう)を作っているのだから納得した。が、それは私にとってはカルチャーショックだった。

 

大地の呼吸
高度成長期からの国土開発という名の下で行われる土地の利用は、大地を窒息させる方向へ進んできた。せき止められた循環が長い時間をかけて問題を起こしていることに、矢野さんは強い危機感を抱いていた。そこで「大地の再生」に取り組むことになる。

「大地も人間と同じように呼吸し、地下を血液のような脈が流れています。それを人間が塞ぐから呼吸不全や動脈硬化が起こる。土砂崩れは大地の深呼吸なんです」

小さな移植ゴテで運動場の土をカリカリと掘り、水の流れを作る。溜まった水が、行き場を求めるかのように、または「水路を見つけた!」とばかりに流れ始める。気持ちは「詰まりを取り、流す」である。ん?なんか身体のリンパを流す時の気持ちになっている。要は同じなんだよね。身体の中で起きること、大地(土の中)、森、川、で起きることって。詰まらせたら確実に問題が起きるから。

「人間のからだでいうと呼吸と血管、空気と血液がからだの中をめぐっているのと同じように、地球全体で大気と水がからだのように循環しているんです」

そこで矢野さんはスコップ一本と観察力で問題に対峙する。一人ひとりの力を集めることで、かつての集落では当たり前だった「結(ゆい)」が今こそ必要なんだと説く。こういった一連の作業で、雨や風、動物たちがすることにならった環境改善のやり方を彼は実践し、伝えていた。       (三)


vol.211 しょうがいをみつめる vol.4

こころのもよう

アフォーダンスという言葉をご存じだろうか?ある方の文献でこの言葉を知った私は興味を持っていた。

アフォーダンス(affordance)とは、環境が動物に対して与える「意味」のことである。アメリカの知覚心理学者ジェームズ・J・ギブソンによる造語であり、生態光学、生態心理学の基底的概念である。「与える、提供する」という意味の英語 afford から造られた。Wikipedia参照

デザインなどにも用いられる概念で、引く・押すを直感的に促すドアの形状であったり、ボタンやレバーなど意識しなくとも促されてしまうことはある。大自然の中にも物質的な中にもその作用は活きていて、人はそれに無意識的に影響を受けている。そう、私たちは環境・物質・自然・人と関わり、アフォーダンスの中で生かされている。匂いで季節を感じたり、水のせせらぎに落ち着いたり、山々を見て荘厳さを感じたり。アフォーダンスは心模様にもアクセスしてくるようだ。

慧正(あきまさ)は言葉(とりわけ発話)を道具として使うことが少ない人生だった。言葉は道具であること。思考は自らが持ち合わせる語彙の範疇の中に留まっていること。それは慧正との関わりの中において、彼から表現される様々な感情の多彩さに驚きと共に感じる事が出来た。「知る」ではなく「感じる」。なぜなら「そうである」と答えを彼から聞いたわけではないから。無意識のうちに彼の態度に反応していた私はアフォードされ、アフォードしていたのかもしれない。

心が痛い、心が暖かい、心が揺さぶらせるなど、どこにあるか分からない「こころ」に温度や動きが生じるのは、アフォーダンスによるものなのだろうか。私には確かに体感として在る。

心とは一体何なのかは分からない。確かに言えることは自分という閉じた箱の中にあるのではないということ。それは関係性という空気感、安心感という場、人から出入りする息が交わる所に在るのかもしれない。そもそも「自分」とは閉じておらず、全てに繋がっているようだ。

慧正の表現は私を含む環境からアフォードされ、自ずと発せられていたと感じる。時にお互いにとって心地良くなくても。彼は私とは違い自分を表現するだけで、表現で他者をコントロールしようとはしなかった。もっともっと素直に彼にアフォードされていたなら、私はもっと自由でいられたのかもしれない。

 

MASA:若者をはじめ、障がい者も一緒になって、ごちゃまぜイノベーションを目指している。知的障がいのある息子は享年24歳で2021年2月27日に旅立った。関市在住。


vol.211 やってみた 内藤 俊さん

内藤 俊さん(60代)

日々の感動が創作の源!創作童話が2度の入選

田んぼの稲についた朝露が朝日に輝くさま、食事に出された筍ごはんの美味しさ、昨夜見た夢の奇想天外なこと!日々のふとしたことが発見につながり感動する。それらを忘れないうちにノートに書き留める。そんな毎日がなんと楽しいことか。
58歳の時に一年間だけ好きなことをやらせて欲しいと家族を説得して退職。映画を見ること、本を読むこと、童話を書くこと、朗読の講座に参加することなど、あっという間に一年が過ぎ、復職した。童話の創作を始めてからは、改めて周りの景色や日常の出来事を注意深く見るようになった。
自身の中に、物語を書きたい、という思いはずっと以前からあった。でも小説はちょっと長いな、と考えていたとき、目にしたENEOS童話賞の募集。応募要項には原稿用紙5枚とある。これなら自分にも書けるかもしれないと思い切ってチャレンジした。そのときの初めての応募作品は撃沈したけれど、それをきっかけに童話の創作は続け、ここ6年間は毎年2作品を書き上げ、「ENEOS童話賞」、「日産童話と絵本のグランプリ」の2つの公募に応募し続けている。
「書き上げた作品を息子に読んでもらうんですが、説教くさい、心に響く言葉が何もない、と、かなり辛口ですわ。ほんとうは妻の感想も聞きたいんですが、忙しそうだしちょっと遠慮しています」とはにかむように話す内藤さん。
そんな中でも、物語を書くという喜びはもう自分の中にしっかりと根を張り、今や生活の中心にさえなっている。
2018年には『漢字仙人がやってきた』がENEOS童話賞に見事佳作入選!
「だめかなと思っていたので、ええ〜!そんなことあるの!?ってびっくり。涙が出るほど嬉しかったです」。
送られてきた『童話の花束』という冊子に収められた自分の作品は、活字印刷され、イラストまで入っていて、感激もひとしお。一緒に掲載されている他の作品にも大いに刺激を受けた。その数年後、今度は日産童話と絵本のグランプリの方でも入賞。「2回も入賞するなんて、できすぎですが、よし、もっと頑張ろう!という気になりました」。
物語はパソコンで書くが、応募するときは原稿用紙に清書というのが内藤さんのスタイル。「webからも応募できるんだけど、もともと手書きが好きということもあるし、手書きの方が思いを込められる気がして」。
題材は日常に、身近にあるもの。文章は簡潔に短めに。基本はハッピーエンド。というのが内藤さんの童話。「希望が見えるというか、救われて終わりたいよね。最後が辛いと悲しくなっちゃうし」。
子ども目線に立って童話を書くようになり、小学校教員時代に出会った子どもたちの自由な発想を思い起こし、子どもってすごいなと改めて感心する。そして、「今となってはできないことだけど、教員時代に子どもたちの気持ちにもうちょっと丁寧に寄り添えたらよかったなあ」としみじみ思う。
今は1つ書き上げ応募してひと息ついた状態。大好きな映画鑑賞や読書をしたり、時には料理もしたり。面白いものを読んで、観て、体験して、たくさんの感動に出会う日々を送っている。もちろん、創作のヒントになりそうな物事は見逃さずに。


vol.211 熱中人 山田 雅樹さん


モノはうそをつかない

綿100% 徹底したこだわりは 生きている証し

山田縫製工場 社長・山田 雅樹さん

 

実は僕、洋服を作ったことがなくて、30歳を機に自分でミシンを踏むようになりました。スタッフの経験者や父親に教えてもらいながら、5年間ずっと服を作ってきました。

父親の縫製会社に就職した時期が、ファストファッション全盛期。薄利多売で安い人件費で作るというアパレル業界の流れにずっとモヤモヤしていました。今までのモノの作り方はおかしい。そこを改めたかった。「売れるためのモノづくり」はやりたくなかった。とはいえ、じゃ、何を作ったらいいのかわからなかった。そんな時、大阪に用事で行くことになり、高速を走って高架下をくぐったら右手にドーンと太陽の塔が現れたんです。あれを見た時に「なんだこれ!」とゾクゾクって鳥肌が立って…。モノづくりって、もしかしたらこれじゃないかなって思った。太陽の塔は僕に「なんだこれ」って思わせた。それは強烈に記憶に残り、自分もこういうモノつくりをしたいと思った瞬間でした。後世に残るものというか。太陽の塔は僕の感情を揺さぶり、生きることとか、自分って何者なんだ、とかを思い知らせてくれたんです。 圧倒的な モノって、服も、音楽も、アートも、それ以外のエンタテイメントも、基本的にはそういう力をもっていると、その時改めて実感しました。

自分に納得できたりとか、うそのないモノづくりをしたい。人が見た時に信じられるものを作りたい。それを突き詰めていった時、最初に「白色」がパッと出てきた。僕の中で「白」は本質的な部分という思いもあって、まず白い何かを作ろうと思った。いろんな服を探っていた時、あるブランドのシャツがすごく柔らかくて、なめらかで、これすごいな!と思うと同時に自分ならもっとできるんじゃないかと思いました。
そうして、色は「白」、形は「シャツ」と決まった。次は素材です。物質はうそがないから、素材そのものが絶対的じゃないとと思い「綿」しかも「100%」にこだわった。縫い糸も、タグも、ボタンも、です。デザインは装飾であると同時に情報でもあると思っていたので、ポケットをつけたり、ギャザーを入れたり、カフスの形を変えたりということを一切やめました。実は少し前から、あらゆる情報を断っていたんです。    を全部やめ、いろんな人間関係もかなり断ちました。情報過多は僕を混乱させるだけだから。そしてシンプルな状態に身を置いて、改めて自分が何をしたいのか、もっと自分と向き合おうと思ったんです。

シャツという一つのアイテムが、その人の生活スタイルを変えるきっかけにもなる。そうなってくれたら一番うれしい。欲を言えば僕のシャツを見て、僕が岡本太郎さんの作品をみたときのように、「なんだこれ!」みたいな、なにか感じてくれたらさらにいい。で、その人がまた何か新しいものを作れば、たぶん本当の意味でのいい循環が生まれると思うんですよ。いい循環さえ生まれれば、もう最高です。

モノを作るっていうのは、何かを残すってこと。その分責任を持たなきゃ、ですよね。この服だったら綿なので、自然から、大地からいただいたものから出来上がっていくんですね。また綿を織るときに大量の水を使いますから、水不足だと作れない。これから先々、綿を作れるかって、その保証はない。20、30年後はわかんないですし、その中でものを作って生きていくっていうことは、環境のことも含めて、自分たちが真剣に考えないと、と思っています。

綿100%。全てが綿で作られたシャツって、この世にないんじゃないかと思っています。そう考えると面白いですよね。それは自分の中で一つの自信になるし、こういう方向性でモノつくりをしていけばいいのか、と思うと自分自身も楽しい。そういう考え方で生きていけることが幸せかなと思う。

山田 雅樹(やまだ まさき)1986年生まれ・各務原市在住。祖父の代からの縫製工場を引き継ぎ、レディース物を中心に制作。自身の「100%綿シャツ」は12月13日にオープンするアトリエにて展示する。ブランディングに必要なロゴなどを依頼したグラフィックデザイナーの佐藤卓氏に「デザインとは、人とモノをつなぐもの」と言われ「これだ!」と思う。綿100%。誤魔化さない、うそのないシャツづくり。その最終場面は、綿のボタンを作る時で約1年もの間、思考錯誤を重ねた。こだわり続ける覚悟をしたからこそ生まれた結果は、佐藤氏も納得し、「これは面白い」と。

出来上がったロゴはやはりシンプル

山田縫製工場 ショールーム兼アトリエ
〒504-0952 岐阜県各務原市那加新加納町2652-1
お問い合せ  support@yamada-sf.jp


vol.211 夢か悪夢かリニアが通る!vol.40

「岐阜・御嵩町 リニア残土問題 不都合な事実を伏せた事情」――。10月25日発売のサンデー毎日(11月6日号)に筆者の記事が掲載されました。この連載の37回目でも指摘したように、リニア中央新幹線の残土処分場が計画されている山林が環境省の「重要湿地」に指定されている事実を、同町とJR東海が町民に伏せてきたことを世に問いました。続いて朝日新聞(名古屋本社版)が11月8日付の朝刊社会面トップで報じるとマスコミ各社も取り上げ、環境大臣や岐阜県知事も対応せざるを得なくなっています。     井澤宏明・ジャーナリスト

「重要湿地」を巡って

指定に「後ろ」向き
サンデー毎日で報告したのは次のような内容です。
JR東海は御嵩町に掘るリニアの2本のトンネルから出る残土約90万立方メートルを同町の山林に埋める計画ですが、予定地は「美佐野ハナノキ湿地群」(美佐野湿地)にあり2016年、環境省の「生物多様性の観点から重要度の高い湿地」(重要湿地)に指定されています。
ところが、同省のホームページにある重要湿地リストには、美佐野湿地は載っていません。今年3月、指定されているのかどうか同省に確認すると「指定されている」という回答。担当者によると、「東濃地域湧水湿地群」のリストの最後にある「など」に含まれているということです。
どうしてそんな分かりにくいことになってしまったのか。同湿地を巡っては、町生物環境アドバイザーだった女性が当時、町の担当者から耳を疑うような“自慢話”を聞かされたといいます。
「環境省に電話して、重要湿地から美佐野湿地の名前を消してやったんだ」
今年10月、この担当者に発言の真意を尋ねると、「そんなこと言った記憶は全くない。デマだと思います」と否定しました。しかし、筆者の情報公開請求に基づいて町が開示した文書から、町がリニア計画を理由に重要湿地の指定に「後ろ向き」だった事実が浮かび上がってきました。

知事「適地といえるのか」
一連の報道を受けて西村明宏環境大臣は11月11日の記者会見でこう述べました。
「美佐野ハナノキ湿地群は絶滅危惧種のハナノキなどが集中的に分布しており、同省が選定した重要湿地に含まれている。重要湿地に選定されることによって法的に規制が生じるものではないが、当該地域における事業を検討する際には、関係自治体や事業者が適切に環境配慮を行うことが大変重要であると思う」
岐阜県の古田肇知事も11月22日の記者会見で記者の質問に答えて重要湿地に言及しました。
「美佐野ハナノキ湿地群が(重要湿地に)含まれているのか、いないのか、何となくモヤモヤっとした状況でズルズル来てしまった。正式に重要湿地に含まれることが明らかになったのは今月に入ってからの御嵩町の会議で、正式なお話があったということだ。残念なプロセスで、環境省に確認するなり、もっと行政が迅速に動くべきだったと思っている」
どこか「他人事」のようですが、重要湿地の指定に向けた同省と町のやりとりは県を通じて行われていたハズです。古田知事は、リニアの残土処分場が計画されていることについては「これが適地といえるのかどうか、しっかりとした議論が必要ではないか」としたものの、今後、JR東海から提出される残土処分場計画と環境影響検討書を「県の専門家会議できっちりとチェックする」として、計画の見直しには踏み込みませんでした。
当の御嵩町はどうでしょうか。11月10日に開かれた残土処分場を巡るフォーラムには、町が初めて「重要湿地」について説明するとあって10人余りの報道陣が詰めかけました。
しかし、肝心の説明が始まったのは開会から2時間半がたった午後9時ごろ。町民の質問も受け付けませんでした。終了後、渡邊公夫町長に尋ねました。
――重要湿地に残土処分場を作ることは適切ですか。
「私は重要湿地に隣接してるっていう解釈です」
――町長は残土処分場受け入れに何でこんなに前向きなんですか。
「前向きじゃないですよ。ウェルカムじゃないって言ったでしょ。こんな嫌なことはやりたくないです」


vol.211 ボーダーレス社会をめざしてvol.69

NPO法人オープンハウスCAN 理事長 伊藤佐代子

障がい者の展覧会

息子の展覧会をした時に、アンケートに「こんな絵でよく展覧会をやるな」と。また、障がいのある人の書道作品に対しても同様にネットで「障がい者だったら何でもありなんや」と書かれた事があります。ある人には「あっちゃんは、障がいがあるから新聞に取り上げられるんやね。」暗に、普通の人だったら取り上げられないよねというニュアンスで言われた事があります。
どの方も芸術的とは認めてもらえなかったからの言葉でしょう。しかし、そのような事があっても怒り、落胆など全くなく、世の中にはいろいろな意見があるのだなと事実として受け止めてきました。
普段、私が美術館に行き「これが作品?」と思うことが実際にあります。作品を見る側の問題で、芸術的と見るかそうでないと見るかはその人次第です。障がいのある人が描きたいと思い、一心に描く。言葉で表せない何かを絵として表現する。出来上がった作品を批判するのは自由です。作り手には、表現の自由があり、受け止め手には、言論の自由があります。
ただ、人を傷つけるような言論は、控えるべきであると思っています。現実問題、障がいのある人の発表の場は、健常者に比べて極めて少ないです。チャンスがあれば、おおいに展覧会をし、障がいのある人の作品を見せる努力をしていかなくてはいけないと考えています。そんな訳で、11月の初旬に、障がいがある息子が岐阜市で「伊藤淳司作品展」を開催しました。私の肩をトントンとたたき、「前の展覧会から4年が経ちました。いっぱい絵ができました。」と珍しく展覧会をやってほしいと言ってきました。20日ほど前からカウントダウンが始まり、「あと何日」と楽しみにしているのが分かりました。自分の好きな人が集まってくれることが何よりの楽しみのようでした。絵を媒体とし、コミュニケーションを取るという方法でしょうか?いいものを彼は見つけました。絵を描き、展覧会を開けば人が集まってくれると考えたのでしょう。
自閉症であっても決して自分の殻に閉じこもるのではなく、人が好きなんだと思います。ただ、どう接していいのか分からないのでしょう。知っている人が来て下されば、全部の絵の説明をし、最後に「終わり」と言い、その場所からさっさと離れてしまっていました。それが彼の人との接し方でした。土・日曜日は、1日5時間、展覧会場に詰めていたわけですから素晴らしい成長だと思います。息子の絵を最初に見出して下さった方がお祝いに来て下さり「今回の展覧会が今までの中で一番好き」と言って下さいました。多くの人に支えられ今があると感謝しております。
現在の息子になるまでには、楽な道のりではありませんでしたが、結果オーライです。展覧会場で、通りすがりの若い人たちの「ワ~かわいい!!」「何か癒されるのよね。この絵」という声が、何だか忘れられません。


vol.211 モザンビークからレポートvol.5

Nampulaに行ってきました!お仕事編

北部ナンプラ州MalemaとRibáuèという地域に行ってきました。モザンビークの中でも一番農業生産率が高いのに、一番低栄養の割合が高い地域です。主食のとうもろこしやおかずに欠かせないピーナツ、野菜、果物など、何でも揃っているのに…彼らが一体どういう生活をしているのか、視察の出張となりました。

イハリ!(Emakuwa語:こんにちは!)
ポルトガル語もままならない私が、こう言うたびに大喜びしてくれたナンプラ農民との活動中に思ったこと、第二弾。

私の担当プロジェクトは、バーチャル・ファーマーズ・マーケット( VFM )。インターネット版卸会場です。AGROPONTOというアプリケーション内で農家さんと買い手をマッチング。農産物を農家さんの言い値で確実に売り、生活の安定を計るプロジェクトです。ただ、売ることを優先するばかりに家族の食べ物が無くならないように、同アプリ内に栄養に関する情報もあるし、農作物の質の向上も応援すべく、天気予報や農業技術の配信もあります。

栄養部門が私の担当と言っても、食べることは生活の基本だから、「私たちのプロジェクト」として手を出すべきところからはみ出さないようにするのが本当に大変。だって、栄養と料理、食材と作物、売り上げと家計、収入高と健康、健康と水、水と病気、って生活は無限ループで全部繋がっていきますよね?例えば、農民が気になっていることがマラリア(蚊を媒体とする感染病)だったとしても、VFMとは関係ないからできることはマラリア予防ではないんです。それが、どうも歯痒い!伝えたいことは他にあっても、下手に口出しできない!そう、大きな機関って、できる規模が大きい反面、できる分野が限られているんです。当たり前なんだけれども、生活の質の向上をしようと思うと、そこをどう乗り越えるかが難しいところだなと改めて思い知らされました。

そして、何より、教育の差がある時の関わり方の難しさを感じずにはいられませんでした。学校に行かないこと、アルファベット文字が読めないこと(現地の言葉は文字がありません。No1参照)、計算ができないこと、、、生活する上で大きな問題ではないと思っていました。それが、1から2にいけない、10から9になるのも想像できない、その様子を垣間見て、きっとこれを教育の差と言うんだなと。「アフリカは支援慣れしていて支援を待っている」と言う人がいますが、きっとこれも支援を受けると言う行為が1だとすると、1でしかなく、1の後にそれを生かして2にすると言う発想もないんだと思います。その上、支援をする側の人は大学院まで行って、2ヶ国語以上話せて当たり前の人が揃っているわけですから、思考回路のギャップもあるのでしょう。プロジェクトの目的も、プロジェクトはきっかけでしかないことも、プロジェクト後の目標も、伝わっていない。あるコミュニティでは、「支援が足りてないから自分たちは貧乏だ」と言われ、別のコミュニティでは「農薬が買えないからうまく育てられない」と言われ、その度に、「支援って何だろう?」「農薬を使うって、どうゆうことだろう?」「人生をどうしたいと思ってる?」そんな話し合いをしてきました。きっと、こういう時間が大切。心に種を植える時間が。

「必要なのは時間。この20-30年でモザンビークの暮らしはすごく変わった。何かを変えようとしなくていいから、何も気にせず楽しんでおいで」。そう言ってくれたポルトガル語の先生の言葉が身に沁みるミッションとなりました。

 


vol.211 菌ちゃん野菜応援団vol.32

腸活!菌ちゃんをたくさんお腹に入れよう(^^)/ その2

前号に引き続き、今号では菌ちゃんがお腹の中でうまく発酵してくれるためにどのようなものをどのように食べたらいいのかな、というお話です。
これはもう、とってもシンプル。「身体が食べてうれしいものを食べて、消化吸収できるような身体づくりをする」ここが基本なんです。言ってしまえば身体の中の菌ちゃんが増えるようなものを務めて食べるようにして、嫌がるものは少し控えめに。そして次に食べたものが消化吸収できる身体づくりをする、ということなんですね。
では、菌ちゃんが喜ぶ食べ物とは何でしょうか。
日本に住む私たちは日本の土壌に合っている菌を好む傾向があります。日本の土壌、気候に合っている菌は、日本に昔から存在し、日本人が昔から食べてきた食べ物や菌。つまり四季折々目にする旬のものが一番ということですね。菌の代表的なものは「糀」です。糀はお米につくカビの一種なのですが、日本固有の菌で日本でしかうまく育たないんです。なので「国菌」に認められているんですよ。
その糀で作ったものには「味噌」「しょうゆ」「みりん」「酒」などという日本を代表する調味料がありますね。昔ながらの製法で作られた調味料とお出汁を使った和食を日々身体に入れることで私たちのお腹はぐんぐんと元気になっていきます。最近では「塩糀」「甘酒」などもメジャーになってきていますね。それらを食事の中に組み込んで日々少しづつ身体に取り入れていくと、ウイルスや腐敗菌に負けない強い身体になっていきますよ!
発酵食品というとヨーグルトやチーズなどもありますが、乳製品は日本人の2割くらいの人はお腹に合わないという統計も出ていますので、健康のために無理をして食べるものではなく、嗜好品としてとらえていただけるといいのかな、と思っています。また、日本人の腸に合うのは動物性ではなく植物性の菌ともいわれていますので、そういう視点からも「糀」由来の菌は身体に負担がなく取り込めますね。
まずは「お腹が喜ぶものを食べる」ここはお判りいただけたかなと思います。

糀菌のほかには代表的な有用菌に乳酸菌や酵母菌がいます。乳酸菌はヨーグルト、キムチ、たくあん、白菜漬。酵母菌はパンやスパークリングワインなどが有名。これらも全て菌の働きで美味しくなる食べ物なんです。
冷蔵庫や防腐剤がなかったその昔、人は菌ちゃんと仲良しだったんですよね。特に高温多湿でものが腐りやすい気候の日本では、微生物を使って食べ物を保存する技術は先人の卓越した知恵と自然への畏敬の念がなせる技と言えるのかもしれませんね。

 

塩こうじは市販でもありますが作るのも簡単!
ぜひチャレンジしてみてくださいね。
糀-200g 塩-35グラム 水-ひたひた
糀はばらばらにほぐす。糀と塩をよく混ぜ合わせて「糀を起こす」。水をひたひたになるまで入れて、しばらく置く。糀の乾燥具合によって吸収率が違うので、あまりにも減るようなら水を足す。 常温で4~5日、毎日清潔なスプーンなどでかきまぜて糀がやわらかくなるまで発酵させる。
出来上がった後は冷蔵庫で保存。
鶏肉などにまぶして焼くととてもおいしいよ。

 

次回は「身体が苦手なものを控える」ここをお伝えしようと思います。


vol.211 ここいく日記 はじめの28歩!

「からだの権利」「性の権利」は人権
日本ドイツ撃破!サッカーのワールドカップ・カタール大会初戦、日本の逆転勝利が新聞の一面記事となり、朝のテレビでは東京渋谷のスクランブル交差点で、多くの人が歓喜する様子が報道されていました。スポーツを楽しむことは悪くはない、でも開催国カタールで移民労働者や性的少数者の人権が守られていない現実を想うと胸がザワザワした。ふと、報道のあり方が性を正しく教えない教育と重なりました。
日本の勝利に歓喜する人たちが悪い訳ではない。カタールの人権問題も知らないし、これまで丁寧に人権について考える機会を与えらず生きてきた人は少なくないと思う。
ここいくの「いのちの授業」では性的指向、性自認のお話を毎回します。年齢に合わせた伝え方でどの学年でも伝えています。

ある小学4年生の授業で「男の子が赤やピンクのランドセル使っていたらどう思う?」と聞くと「いいと思う」と答えが返ってきました。「じゃあ、男の子がスカート履いていたらどう思う」と聞くと「変態だ!盗んできたかも犯罪だ!」そんな答えが返ってきました。私は、この発言をした子どもが悪いとは思いません。日本の勝利に歓喜する人たちのように、よく知らないためだと思っています。
ほとんどの子どもたちが、自分自身が自分の身体の主人公であるという「からだの権利」「性の権利」の認識がありません。性は多様であり、自分の性は自分が決める。決められるのはあなただけ。
それは誰もが生まれながらにして持っている権利で、奪われることも、誰かに侵されることもない永久の権利。こんな当たり前で大切なことを教えてもらっていない子どもたちが、大人になっていく。
ジェンダー・ギャップ指数が主要先進国で最下位の日本。人権を学べない国であることを痛感しています。
国は2023年度から全国の学校において「生命(いのち)の安全教育」を実施することをきめました。それは子どもを性暴力・性犯罪の当事者にしないための、性暴力に関わる安全教育とのことです。文科省の指導内容を確認すると、性暴力は中学生からの指導となっています。現実には幼児期の子どもの性暴力被害があり、性暴力に関する学びは幼児期から必要だと私たちは考えています。

 私たちここいくの「いのちの授業」は、「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」に基づいており、国が進める「生命(いのち)の安全教育」の学習内容と学習計画とはかなり違います。最も異なる点は、私たちは、すべての学習テーマをすべての年齢で伝えます。学習テーマは年齢に応じて「らせん型」に発展させていく形で、繰り返し積み重ねるように年齢に合わせて学んでいきます。国は「発達段階にそくしたもの」として年齢ごとに指導内容がことなります。「性の安全教育」ではなく「生命の安全教育」のネーミングとなった理由はなにか?
「からだの権利」「性の権利」=人権を避けているとしたら、そこには日本の教育の根本的な問題がある気がしています。


vol.211 プレゼントコーナー

211号PRESENTS

 

プレゼントご希望の方は

ハガキまたはe-mailで、下記のアンケートを
1〜6までご記入の上、編集部・プレゼント係りまでお送りください。

1-2023年がどんな一年であることを望みますか?世界的なことでもプライベートなことでもOK。あなたが願う2023年の形を教えてね。

2- 気になるにらめっこ紙面での広告
3- 気に入った記事、気に入らない記事の
タイトル1つ・その理由もお書きください。
4- ご希望のプレゼント名 (第1希望・第2希望 を必ずお書きください)
※A、Bは編集室まで受け取りに来られる方。
5- 本紙をどこで入手されましたか?
6- 氏名、年齢、住所、郵便番号、電話番号、 家族構成

〆切:2023年1月25日 当日消印有効。
宛先 〒504-0855 各務原市蘇原新栄町3-15
e-mail: info@niramekko.com
※お寄せいただいた個人情報は、本紙プレゼントの発送に限り、 使用させていただきます。
※当選の発表は発送をもって代えさせていただきます。

 

A. ecoで可愛い!アクリルたわし  浅井 彰子様より…3名様

なんて楽しいアクリルたわし!フリーアナウンサー・浅井さんの手編みです。ギャラリー展示では大好評だったたわしは、もうアートです。食器洗いもお掃除も、これならルンルンと楽しめそう!壁かけにしてもGood!ご希望の番号を明記してね。にらめっこ編集室でお受け取りください。

 

 

B. 濃姫パパイヤ 信長バナナ(合)様より…3名様

信長バナナに引き続き、岐阜で栽培、収穫、販売が始まった「濃姫パパイヤ」。まだ栽培本数が少ないため、レアな商品です。栽培期間中、農薬と化学肥料を不使用なので、安心していただけますよ。様につき1個プレゼント。にらめっこ編集室でお受け取りください。

 

C. CINEX 映画招待券 シネックス様より…ペア3組様

突然、自分のこれからの人生を左右する選択に迫られるできごとが起こったら?自分の中になかった問題を考えさせられる、そんな映画との出会いもありますね。写真は「シスター 夏のわかれ道」より。岐阜市柳ヶ瀬のシネックスでご利用いただけます。

 

D. わんにゃんドーム2023 招待券 テレビ愛知様より…ペア3組様

東海地区最大級!わんちゃん・ねこちゃんとふれあえるペットイベント。20回記念開催の今年は、内容も一段と充実!!もちろんペット同伴もOK♪わんにゃん大好きな人集まれ〜!!