心はいつもハッピー・キャンディー
子育て中でもできることはある
あめ細工が好きだから!
みるみるうちに形が変わる あめ細工に魅せられて
私が初めてあめ細工の実演を見たのは小学生の時です。初めて見たその時からあめ細工のことが忘れられませんでしたが、それ以来見る機会がなかなかなかったんです。でも、どこかで『私は絶対あめ細工師になる』ってずっと思っていたんですよね。工作も粘土細工も大好きだし、動物も好きだし、なんかどこかで『絶対あめ細工師になる』ってずっと思っていました。で、その次に見たのがずいぶん経った、社会人1年目のときでした。新聞の、お祭りであめ細工師の実演がある、という記事を読んで見に行きました。そこで、「ここで逃したらチャンスはないな」と思って、その時に実演していたあめ細工師の方に、「教えてください!」って気がついたら頼んでいました。
そうしたら、「次にやりに行くところに見においで」と言われて、見に行きました。そこで両手に乗るくらいの飴の塊をもらったんです。「まぁ、自分で一回やってみなさい。それでやろうと思ったらまた来週来てみたら?」って。飴を家に持ち帰って、炊飯器で保温して柔らかくして、見よう見まねでチャレンジしてみたんです。そうしたら、指が全部やけどしちゃって!水ぶくれが全部の指にできてしまいました。温めた飴は80度あるんです。
飴を炊飯器から取り出せないし、練るのが熱いし・・・。そのときはすごく悩みました。来週、あめ細工師さんのところに行かなければ,飴を練ってやけどすることはない。でも、行かないとあめ細工できないし、と心がすごく揺らぎました。でも、あめ細工師さんはやけどしていない。だからきっと慣れるんだろう、そう思って続けることにしたんです。
そうこうやっているうちに、手の中で飴をずっと転がすといい、というコツを一ヶ月くらいで覚えました。コツはつかめたんですけど、今度は「本当にやるなら毎日40個くらい作って練習するといい」とあめ細工師さんに言われて、仕事が終わってから、夜中の12時くらいから毎晩練習しました。親には「あんた狂ってる」とか言われて(笑)。
あめ細工は飴が冷えて硬くなるまでの5分が勝負です。最初はシンプルな形から入っていって、だんだんと慣れてくるとその5分の間に細かく作れるようになっていきました。
レパートリーはお客さんの数だけ
実演では、お客さんが「こんなのを作って欲しい」と注文されるので、お客さんの数だけレパートリーが増えていくって感じです。動物ならたいていのものは作れます。
初めてのオーダーですごく細かい物は時間との勝負が更にあるので難しいですね。あめ細工は3分くらいである程度の形を作って、最後に整えて終わる。トータルで5分間なんです。
他には、顔はうさぎで身体は馬とか、そういう突拍子もないものを注文される事もあります。そういう奇想天外なものでも、できるだけ断らないようにしたいので、作り始めて練っている間に、頭の中でう~んって考えるんですよね。頭を作っている間に、お尻の部分を考えたりして。
男の子からは、飛行機とか自動車とか、機械系を注文されることが多いです。それは形はできるんですけど、例えば飛行機の羽を機体に垂直になるように作っても、冷ましている間にちょっとフニャってなってくるともう飛行機じゃなくなってしまうんです。(笑)
あと、自分の似顔の飴を作ってほしいという人もいます。できなくはないけど、似るかといったらそれはなかなか難しいところがありますよね。以前、観光地で似顔で作ってほしいって言われて作ったことがあります。でも、例えば帽子をかぶっているとか、おひげがあるとか、すごく特徴があればいいんですけど、その時はみなさん同じような帽子かぶって同じようなお顔の感じで、それをどう表情をつけようかっていうので、すごく悩みましたね。でも実演は作れば目の前で反応がわぁ~っとかあって、楽しいです。
あめ細工の可能性
実演だけではなく、いろいろな形の販売も考えていかないとと思っています。子どもが生まれるまでは実演がメインだったんですが、子育てをしながらできることを考えなきゃと思って、いろいろな商品を構想し始めたのです。
今、全部飴で作ったバラの花の指輪をネットで出しているんですけど、男性の方から彼女にクリスマスのプレゼントにあげたいんだけどとか、プロポーズに使いたいんですけど、という問い合わせがちょこちょこあるんですよ。
他には、結婚式のプチギフトとして、可愛い動物にハートを持たせて、中にイニシャルやメッセージを入れてという飴や、企業さんのノベルティで、こういうのを作ってくれ、というお仕事もたまにあります。栄のラシックというお店にもかわいい動物の飴を置かしていただいています。
この間、結婚式のウエディングケーキに飾る飴を作ってほしいという依頼が来て、そういう依頼は初めてだったので、ちょっとビックリしました。そういうのもあるのかっていい刺激になりました。でも、風船みたいに丸くふくらませて、というのは作れるんですけど、ただそれをどうやってストローから外そうか、かたまってしまったら割れるし、薄くしすぎても割れるし、その具合がちょっと難しかったです。
子育てと両立するには?
商品を作るのは子どもが寝静まった夜中です。たくさん作らなくてはいけないときは、たまに保育園に預けたりもします。去年くらいから、あめ細工の仕事が軌道に乗り始めたなぁってときに、2人目を妊娠。仕事に影響が出るかなぁと少々不安を感じますが、子育ての方が大切ですしね。なので、とりあえず今はあめ細工の実演は控えています。予定日は今年の5月です。夫も協力的ですし、商品作りなどできることで続けていくつもりです。子育て中でもできることをと考えたことから、実演以外にいろいろな方向のアイデアが生まれてきたのも事実ですから、子どもに感謝!ですね。
お店ができます!
1月の終わりに引っ越しをして、店舗を持つことになりました。やっぱり固定の場所があった方が皆さんに知っていただきやすいし、ウエディングギフトでも、実際にその物を見てみたいという方もおられますので、見てもらうのにもちゃんとした場所がほしい。それに体験教室もやってみたいですし。手が熱くならないように手袋をしたらできるんじゃないかなと思ってるんです。店舗を拠点にいろいろ発信していけたら、と思っています。
あめ細工って、やっている方も、見ている方も楽しい。自分の中に、昔あめ細工を見て楽しかったという記憶があるので、もっと他の人にもあめ細工を知ってもらいたいですね。
<道具>
この道具箱は私の手作りです。木工が趣味の父親に教えてもらいながら。飴を柔らかくするのには保温鍋です。最初に教えてくれたあめ細工師さんは、豆炭だったので、私も炭で飴を温めていたんですけど、電気の方が温度も安定するので、作りやすいです。
作るときは手とハサミですね。ハサミも本当に裁縫の糸切りバサミなんですよ。しなり具合とかはいろいろ違うので、具合を見てみて買います。
取材陣のリクエスト。あっという間に馬とバラが出現!
プロフィール
たかこ / あめ細工師(愛知県名古屋市在住)
1979年奈良県生まれ。2002年あめ細工を学ぶ。2005年滋賀県に移り住む。和菓子屋「たねや」にて専属の飴細工師として実演販売を行う。菓子屋という恵まれた環境で改めて飴の素材について研究も行う。また、あめ細工をする傍ら、工芸菓子の技術を学ぶ。
2008年姫路全国菓子博覧会にて同社から工芸菓子を出品し、最高名誉である名誉総裁賞を受賞。2009年個人活動を開始。2011年名古屋ユマニテク製菓専門学校において工芸菓子、あめ菓子の講師を務める。
屋号「鶴藤」は、夫と一緒に決めました。「鶴」は、あめ細工の基本の形であることと長寿の意味もあって。あめ細工は伝統芸だし、残していけるように、という意味も含めて。「藤」は、私の名字が藤原というのと、日本の富士山の「ふじ」とかけて、鶴藤と。外国を意識して、ちょっと和風の感じに鶴藤のマークデザインを考えました。