vol.213 夢か悪夢かリニアが通る!vol.42

岐阜県御嵩町にある環境省の「重要湿地」美佐野ハナノキ湿地群が候補地となっているリニア有害残土の恒久処分場計画。渡邊公夫町長が「受け入れを前提とした協議」を宣言し、JR東海との協議の場として有識者を交えて昨年5月にスタートした公開フォーラムは3月21日、最終回となる6回目を迎えました。           井澤宏明・ジャーナリスト

「要対策土は永久に要対策」
フォーラムの目的は、町民の不安解消や理解促進を図ることでしたが、最終回の終盤には処分場候補地の地元全16自治会でつくる「上之郷地区リニアトンネル残土を考える会」の纐纈健史会長が、有害残土の持ち込みに反対する「決議書」を読み上げ、渡邊町長とJR東海に手渡しました。冒頭には、次のように記されています。
「リニア中央新幹線トンネル残土の埋立処分計画が、当該地はもとより下流にわたり、生命、財産および環境(重要湿地)に重大なリスクが想定されることから、地域、住民が一体となって、トンネル残土から出る危険な残土持込に反対し、よりよい環境を次の世代に引き継ぐ方針とする旨決議いたしました」
反対理由として挙げたのは①安全に対する不安を消すことができない②環境保全を優先すべき――の2点。そのうち①について「要対策土(有害残土・筆者注)は、遮水シートで封じ込めようとも永久に要対策土であり、危険物に変わりはないのです。盛土が崩れない、とだれも保証できません。危険物は置かないが最良の対策なのです」としています。
さらに、2021年7月10日の地元説明会でJR東海が「地元の理解が得られなければ(残土を)持ち出す」と発言したとして、「地元、上之郷地区の総意として反対の意向を表明しますので、本約束を履行されますようお願いします」として、残土持ち出しを求めました。
フォーラム後、JR東海中央新幹線岐阜西工事事務所の加藤覚所長に尋ねました。
――決議書に書かれている説明会での約束は守られるんでしょうか。
「(説明会での話は)ちょっと言葉足らずだった部分がありますので。『住民の理解が得られなかったら外に持ち出す』と皆さんおっしゃってますけども、『たら・れば』みたいな話のやり取りだった」
JR東海側が示したのが、第2回フォーラムの説明資料。そこには「地元の自治会との打合せや当社主催の説明会において、『候補地B(有害残土処分場候補地・筆者注)が使えなくなった際の対応は考えているのか』 というご質問をいただきました。当社からは、『候補地Bが使えないということになれば、町外に搬出するという選択も出てくると思うが、現時点では考えていない』 と回答いたしました」とあります。続けて尋ねました。
――他のところを(残土処分場として)お考えになるということはないんですか。フォーラムを重ねてもこれだけ地元から反対があって、状況が変わるとは思えませんが。
「現時点では、我々が説明してきた計画で」
――それに固執すればするほど、工事は遅れるんじゃないですか。それでいいんですか。
「事実として、そういう計画をしているところはないということです」

「町長「重要性知らなかった」
一方、渡邊町長は3月8日の町議会で、6月の町長選に出馬せず、4期で引退すると表明。残土処分場を受け入れるか否かは「先送りするしかない」と、自身は判断しないことを明言しています。フォーラム後の記者会見で町長に尋ねました。
――「重要湿地」ということが分かった上で、残土処分場をつくることは適切とお考えですか。
「先に(残土処分場の)計画があったことですから。重要湿地に指定されたとしても、それに法的拘束力がないって言われれば、それは考えるでしょう」
――考えるというのは。
「残土を置くっていう。これ、健全土を含めた話ですけど」
――であれば、最初から「ここは重要湿地だけど、皆さんどう思いますか」って町民に明らかにしたうえで判断を求めればよかったんじゃないですか。
「だから、重要湿地っていう重要性なんていうのは知ってませんでしたよ。私も行政も」
今回の残土処分場候補地をJR東海に情報提供したのは2013年1月で、重要湿地指定(16年4月)より前だと強調したいのだと思いますが、最後まで質問ははぐらかされるばかりでした。