vol.212 ボーダーレス社会をめざしてvol.71

NPO法人オープンハウスCAN 理事長 伊藤佐代子

ことば

障がいのある人たちの書道展を昨年末に行いました。掛け軸あり、額に入った作品あり、サイズも大小さまざま、書いた内容も一文字だけのものや金子みすゞの詩を書いたものなどバラエティーに富んだ作品を展示することができました。会場には、メッセージを入れる箱を用意し「〇〇さんへ  〇〇より」という紙を置いておきました。箱の中には毎日のように2,3枚入っており、多くの方が見て下さっているようでした。メッセージの中には、お知り合いの方の作品への感想などを書いて下さっているものや「この作品が好きです」「魚が泳いでいるのを見ているような気持になります」など率直に感想を書いて下さっているものがありました。全く作者をご存知なく、個人あてに書かれている感想は、人の心を揺さぶりました。ご本人よりご家族の方がとても、とても喜んでいらっしゃる姿を見させてもらいました。知らない方からのメッセージは、ご本人が、障がいがあるゆえにことばの理解が難しいですので、親としてはこの上ない喜びだったのでしょう。偶然にも阿川佐和子さんのアガワ対談傑作集という本を読み、義家弘介先生(ヤンキー先生)が、事故で内臓複数破裂をし、生死をさまよう入院中に、恩師から「死なないで。あなたは私の夢なんだから」と言われ、生きる意欲を取り戻したというのを読んだばかりで、ことばってなんてすごい力を持っているのだろうと感激をしていた所でした。これと同じ様なことが起き、嘘のない心からのことばは、並ではない力があるのだなと実感しました。息子が3年生の時に、主人がシアトルへ赴任するときに息子を一緒に連れていくか否かでお医者さんに助言をもらおうと名大病院まで行き、診てもらったことがあります。その時にお医者さんが言われたのは「よくここまで頑張ったね」ということばでした。嬉しくて忘れられないことばです。また、ひと月ほど前に洗濯物を干しながらふっと思い出したことがありました。書道教室でのできごとです。今は大学生。当時は小学4,5年生の男の子が「お姉ちゃんは、どうやってこれから生きていくの?」障がいのある姉を思っての突然の私への質問でした。周りには誰もいなくて私一人の時に、真剣な顔で聞いてきました。「社会は変わっていくから、心配しなくていいよ。きょうだいが、両親の代わりをしなくて良い制度が出来てきているから、君がお姉ちゃんをすべて見なくていいんだよ。そのために私たちが頑張っているんだからね。」と答えました。そんな話を最近、お母様にお話ししたら、「そうでしたか。そんな小さい頃に・・・。聞いた相手が伊藤さんで良かった。」と言ってもらえました。少しは彼の役に立てたでしょうか?誰かのことばが人を元気にすることができるというのを今回、目の当たりにし、いつもとは違う展覧会の良さを知りました。





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