vol.212 熱中人 坂井 ユリさん

やりたい」を仕事にしたい
シフォンケーキのお店を開いた 坂井ユリさん(犬山市・在住)

今から数年前、ケアマネージャーとしてボランティアで参加していた集まりの席で、仲間の一人が持参した手作りのシフォンケーキが本当に美味しくて。レシピを教えてもらって早速作ってみるが、みごとにふくらみが悪く大失敗。そんな馬鹿な!くやしくて、アドバイスをもらってはまた作り、納得いかないと作り直すの繰り返し。時には1日2回、3回焼く日も。それが3ヶ月ほども続きました。
毎日出る失敗作は、当時小学4年生の娘が一緒に食べてくれました。ある日「シフォンケーキってお腹を満たさないよねえ」と娘に言うと、「お母さんのシフォンケーキは心を満たすよ」って。 そういえば上手に焼けたシフォンケーキを友人知人にあげるとみんな大喜びしてくれる。その笑顔と娘の言葉が重なり、「手作りのものって、人を感動させる力があるんだな」とつくづく感じました。

安定して作れるようになってきた頃、私の住む犬山市では、木曽川沿いに毎週日曜に開催される朝市の体験出店者を募集していました。私のシフォンケーキを食べてくれた人が「これ売れるよ」と口々に言ってくれたことも後押しとなって、2021年8月に朝市デビューを果たしました。すると、初日になんと54個のシフォンケーキがたった23分間で完売。最初は恥ずかしそうに一緒に接客していた中学生になった娘も、飛ぶように売れていくのが嬉しそうで、にこにこ顔に。
自分の作ったものを大勢の人が買ってくれた感動、お客さんや他店の方との会話も楽しい。ケアマネージャーという仕事を続けてきたのも、もともと人と接することが好きということもあったんです。すっかり朝市の魅力にはまっちゃって、すぐに本登録をし、毎週出店を続けました。朝市を訪れるお客さんは常連の方がほとんどです。私の店に来るお客さんが一人でもいるかもしれない、そう思うと休むことはできませんでした。「おお、来とったかね。」と雪の朝に嬉しそうに声をかけられたこともありました。

次第に、これを本業でやってみたい、との思いが膨らんできました。家族に話すと「言うってことは、もうやるって決めてるんだろ?開店資金は新車を買ったと思って投資するわ」と、私の性格をよく知る夫は理解を示してくれました。ケアマネの仕事もやめ、夫や娘、周囲の方の協力のもと、友人が写真撮影やポップ作り、姉が製品作り等を協力してくれ、手作り感満載の小さな小さなプレハブのお店「あいぽち」が自宅敷地内に完成。2022年10月に無事オープンしました。シフォンケーキだけでなく、パン類、キッシュなどを並べています。

娘の愛さんと

娘には自分の好きなことを仕事にしてほしい。私の夢に向けて行動する姿を見せたい、そんな思いもありました。だからお店を4年後も5年後も続け、ゆくゆくはキッチンカーのような移動販売で、過疎の地域に住む高齢の方が近所に歩いて出かけられて、手にとって買い物ができるようにしたい。そこで安否確認もできるし、「今度来るときこれを買ってきてよ」そんな用事を頼まれるような関係もできたらいいですよね。それは自分一人ではできないことだから、賛同してくれる有志の方とチームを組んでできたらなと思うんです。

シフォンケーキという違う方向を向いているようですが、結局、ケアマネ時代に「こんなのがあったらいいのに」と思っていた事の実現に向けて歩いているんですよね。地域貢献が私の原点ですから。

シフォンケーキやパンの焼けるいい匂いに包まれて…

※お店の「あいぽち」という名前は、娘と愛犬の名前から。所在地は犬山城下町の片隅ですが、古くから住んでいらっしゃる方も多く、地元の方、観光客の方、みなさんに親しまれる店でありたいです。

場所は各種マルシェやワークショップなどのイベント会場になっている「余遊亭」のお隣です。
犬山市犬山東古券499番 090-3080-7432
営業時間:9:00~16:00
定休日:水・木 駐車場:あり