vol.211 熱中人 山田 雅樹さん


モノはうそをつかない

綿100% 徹底したこだわりは 生きている証し

山田縫製工場 社長・山田 雅樹さん

 

実は僕、洋服を作ったことがなくて、30歳を機に自分でミシンを踏むようになりました。スタッフの経験者や父親に教えてもらいながら、5年間ずっと服を作ってきました。

父親の縫製会社に就職した時期が、ファストファッション全盛期。薄利多売で安い人件費で作るというアパレル業界の流れにずっとモヤモヤしていました。今までのモノの作り方はおかしい。そこを改めたかった。「売れるためのモノづくり」はやりたくなかった。とはいえ、じゃ、何を作ったらいいのかわからなかった。そんな時、大阪に用事で行くことになり、高速を走って高架下をくぐったら右手にドーンと太陽の塔が現れたんです。あれを見た時に「なんだこれ!」とゾクゾクって鳥肌が立って…。モノづくりって、もしかしたらこれじゃないかなって思った。太陽の塔は僕に「なんだこれ」って思わせた。それは強烈に記憶に残り、自分もこういうモノつくりをしたいと思った瞬間でした。後世に残るものというか。太陽の塔は僕の感情を揺さぶり、生きることとか、自分って何者なんだ、とかを思い知らせてくれたんです。 圧倒的な モノって、服も、音楽も、アートも、それ以外のエンタテイメントも、基本的にはそういう力をもっていると、その時改めて実感しました。

自分に納得できたりとか、うそのないモノづくりをしたい。人が見た時に信じられるものを作りたい。それを突き詰めていった時、最初に「白色」がパッと出てきた。僕の中で「白」は本質的な部分という思いもあって、まず白い何かを作ろうと思った。いろんな服を探っていた時、あるブランドのシャツがすごく柔らかくて、なめらかで、これすごいな!と思うと同時に自分ならもっとできるんじゃないかと思いました。
そうして、色は「白」、形は「シャツ」と決まった。次は素材です。物質はうそがないから、素材そのものが絶対的じゃないとと思い「綿」しかも「100%」にこだわった。縫い糸も、タグも、ボタンも、です。デザインは装飾であると同時に情報でもあると思っていたので、ポケットをつけたり、ギャザーを入れたり、カフスの形を変えたりということを一切やめました。実は少し前から、あらゆる情報を断っていたんです。    を全部やめ、いろんな人間関係もかなり断ちました。情報過多は僕を混乱させるだけだから。そしてシンプルな状態に身を置いて、改めて自分が何をしたいのか、もっと自分と向き合おうと思ったんです。

シャツという一つのアイテムが、その人の生活スタイルを変えるきっかけにもなる。そうなってくれたら一番うれしい。欲を言えば僕のシャツを見て、僕が岡本太郎さんの作品をみたときのように、「なんだこれ!」みたいな、なにか感じてくれたらさらにいい。で、その人がまた何か新しいものを作れば、たぶん本当の意味でのいい循環が生まれると思うんですよ。いい循環さえ生まれれば、もう最高です。

モノを作るっていうのは、何かを残すってこと。その分責任を持たなきゃ、ですよね。この服だったら綿なので、自然から、大地からいただいたものから出来上がっていくんですね。また綿を織るときに大量の水を使いますから、水不足だと作れない。これから先々、綿を作れるかって、その保証はない。20、30年後はわかんないですし、その中でものを作って生きていくっていうことは、環境のことも含めて、自分たちが真剣に考えないと、と思っています。

綿100%。全てが綿で作られたシャツって、この世にないんじゃないかと思っています。そう考えると面白いですよね。それは自分の中で一つの自信になるし、こういう方向性でモノつくりをしていけばいいのか、と思うと自分自身も楽しい。そういう考え方で生きていけることが幸せかなと思う。

山田 雅樹(やまだ まさき)1986年生まれ・各務原市在住。祖父の代からの縫製工場を引き継ぎ、レディース物を中心に制作。自身の「100%綿シャツ」は12月13日にオープンするアトリエにて展示する。ブランディングに必要なロゴなどを依頼したグラフィックデザイナーの佐藤卓氏に「デザインとは、人とモノをつなぐもの」と言われ「これだ!」と思う。綿100%。誤魔化さない、うそのないシャツづくり。その最終場面は、綿のボタンを作る時で約1年もの間、思考錯誤を重ねた。こだわり続ける覚悟をしたからこそ生まれた結果は、佐藤氏も納得し、「これは面白い」と。

出来上がったロゴはやはりシンプル

山田縫製工場 ショールーム兼アトリエ
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発行日:偶数月の第4月曜日
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