vol.211 夢か悪夢かリニアが通る!vol.40

「岐阜・御嵩町 リニア残土問題 不都合な事実を伏せた事情」――。10月25日発売のサンデー毎日(11月6日号)に筆者の記事が掲載されました。この連載の37回目でも指摘したように、リニア中央新幹線の残土処分場が計画されている山林が環境省の「重要湿地」に指定されている事実を、同町とJR東海が町民に伏せてきたことを世に問いました。続いて朝日新聞(名古屋本社版)が11月8日付の朝刊社会面トップで報じるとマスコミ各社も取り上げ、環境大臣や岐阜県知事も対応せざるを得なくなっています。     井澤宏明・ジャーナリスト

「重要湿地」を巡って

指定に「後ろ」向き
サンデー毎日で報告したのは次のような内容です。
JR東海は御嵩町に掘るリニアの2本のトンネルから出る残土約90万立方メートルを同町の山林に埋める計画ですが、予定地は「美佐野ハナノキ湿地群」(美佐野湿地)にあり2016年、環境省の「生物多様性の観点から重要度の高い湿地」(重要湿地)に指定されています。
ところが、同省のホームページにある重要湿地リストには、美佐野湿地は載っていません。今年3月、指定されているのかどうか同省に確認すると「指定されている」という回答。担当者によると、「東濃地域湧水湿地群」のリストの最後にある「など」に含まれているということです。
どうしてそんな分かりにくいことになってしまったのか。同湿地を巡っては、町生物環境アドバイザーだった女性が当時、町の担当者から耳を疑うような“自慢話”を聞かされたといいます。
「環境省に電話して、重要湿地から美佐野湿地の名前を消してやったんだ」
今年10月、この担当者に発言の真意を尋ねると、「そんなこと言った記憶は全くない。デマだと思います」と否定しました。しかし、筆者の情報公開請求に基づいて町が開示した文書から、町がリニア計画を理由に重要湿地の指定に「後ろ向き」だった事実が浮かび上がってきました。

知事「適地といえるのか」
一連の報道を受けて西村明宏環境大臣は11月11日の記者会見でこう述べました。
「美佐野ハナノキ湿地群は絶滅危惧種のハナノキなどが集中的に分布しており、同省が選定した重要湿地に含まれている。重要湿地に選定されることによって法的に規制が生じるものではないが、当該地域における事業を検討する際には、関係自治体や事業者が適切に環境配慮を行うことが大変重要であると思う」
岐阜県の古田肇知事も11月22日の記者会見で記者の質問に答えて重要湿地に言及しました。
「美佐野ハナノキ湿地群が(重要湿地に)含まれているのか、いないのか、何となくモヤモヤっとした状況でズルズル来てしまった。正式に重要湿地に含まれることが明らかになったのは今月に入ってからの御嵩町の会議で、正式なお話があったということだ。残念なプロセスで、環境省に確認するなり、もっと行政が迅速に動くべきだったと思っている」
どこか「他人事」のようですが、重要湿地の指定に向けた同省と町のやりとりは県を通じて行われていたハズです。古田知事は、リニアの残土処分場が計画されていることについては「これが適地といえるのかどうか、しっかりとした議論が必要ではないか」としたものの、今後、JR東海から提出される残土処分場計画と環境影響検討書を「県の専門家会議できっちりとチェックする」として、計画の見直しには踏み込みませんでした。
当の御嵩町はどうでしょうか。11月10日に開かれた残土処分場を巡るフォーラムには、町が初めて「重要湿地」について説明するとあって10人余りの報道陣が詰めかけました。
しかし、肝心の説明が始まったのは開会から2時間半がたった午後9時ごろ。町民の質問も受け付けませんでした。終了後、渡邊公夫町長に尋ねました。
――重要湿地に残土処分場を作ることは適切ですか。
「私は重要湿地に隣接してるっていう解釈です」
――町長は残土処分場受け入れに何でこんなに前向きなんですか。
「前向きじゃないですよ。ウェルカムじゃないって言ったでしょ。こんな嫌なことはやりたくないです」





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