vol.211 やってみた 内藤 俊さん

内藤 俊さん(60代)

日々の感動が創作の源!創作童話が2度の入選

田んぼの稲についた朝露が朝日に輝くさま、食事に出された筍ごはんの美味しさ、昨夜見た夢の奇想天外なこと!日々のふとしたことが発見につながり感動する。それらを忘れないうちにノートに書き留める。そんな毎日がなんと楽しいことか。
58歳の時に一年間だけ好きなことをやらせて欲しいと家族を説得して退職。映画を見ること、本を読むこと、童話を書くこと、朗読の講座に参加することなど、あっという間に一年が過ぎ、復職した。童話の創作を始めてからは、改めて周りの景色や日常の出来事を注意深く見るようになった。
自身の中に、物語を書きたい、という思いはずっと以前からあった。でも小説はちょっと長いな、と考えていたとき、目にしたENEOS童話賞の募集。応募要項には原稿用紙5枚とある。これなら自分にも書けるかもしれないと思い切ってチャレンジした。そのときの初めての応募作品は撃沈したけれど、それをきっかけに童話の創作は続け、ここ6年間は毎年2作品を書き上げ、「ENEOS童話賞」、「日産童話と絵本のグランプリ」の2つの公募に応募し続けている。
「書き上げた作品を息子に読んでもらうんですが、説教くさい、心に響く言葉が何もない、と、かなり辛口ですわ。ほんとうは妻の感想も聞きたいんですが、忙しそうだしちょっと遠慮しています」とはにかむように話す内藤さん。
そんな中でも、物語を書くという喜びはもう自分の中にしっかりと根を張り、今や生活の中心にさえなっている。
2018年には『漢字仙人がやってきた』がENEOS童話賞に見事佳作入選!
「だめかなと思っていたので、ええ〜!そんなことあるの!?ってびっくり。涙が出るほど嬉しかったです」。
送られてきた『童話の花束』という冊子に収められた自分の作品は、活字印刷され、イラストまで入っていて、感激もひとしお。一緒に掲載されている他の作品にも大いに刺激を受けた。その数年後、今度は日産童話と絵本のグランプリの方でも入賞。「2回も入賞するなんて、できすぎですが、よし、もっと頑張ろう!という気になりました」。
物語はパソコンで書くが、応募するときは原稿用紙に清書というのが内藤さんのスタイル。「webからも応募できるんだけど、もともと手書きが好きということもあるし、手書きの方が思いを込められる気がして」。
題材は日常に、身近にあるもの。文章は簡潔に短めに。基本はハッピーエンド。というのが内藤さんの童話。「希望が見えるというか、救われて終わりたいよね。最後が辛いと悲しくなっちゃうし」。
子ども目線に立って童話を書くようになり、小学校教員時代に出会った子どもたちの自由な発想を思い起こし、子どもってすごいなと改めて感心する。そして、「今となってはできないことだけど、教員時代に子どもたちの気持ちにもうちょっと丁寧に寄り添えたらよかったなあ」としみじみ思う。
今は1つ書き上げ応募してひと息ついた状態。大好きな映画鑑賞や読書をしたり、時には料理もしたり。面白いものを読んで、観て、体験して、たくさんの感動に出会う日々を送っている。もちろん、創作のヒントになりそうな物事は見逃さずに。