vol.210 ボーダーレス社会をめざしてvol.68

NPO法人オープンハウスCAN 理事長 伊藤佐代子

 

この人の反応は?

ある利用者さんに、コップいっぱいのお水を故意に床にこぼされたことがあります。彼にとってコミュニケーションを取る方法の一つとして叱られることがあるのかなと思っています。この支援者の反応はどうかな?とテストをされてしまいます。
どのような反応をすれば正解なのか分かりませんが、その反応如何で今後の支援内容が左右されます。同じ目線もしくは少し下に立つことが重要だろうと思います。間違っても上から目線はいけません。支援者によって彼らの対応は違います。支援者に合わせて下さるということが最近ではよく分かってきました。
実は、自閉症の人以外よく知らなかった私は、知的障がいと言われる人とのコミュニケーションの取り方が分かりませんでした。彼らは、人をよく観察し生きていくための知恵があります。感性で、この人はどこまで自分のことを理解してくれているのか?見られています。心に思ってもいない言葉などには全く左右されません。
例えば、書道ですと本当に感動して「いい作品だね」「上手!」という言葉には笑顔で応えて下さいますが、心から出ていない言葉には反応を示されません。一度、お母様がそばにいらっしゃって、おざなりに「上手」と言われた言葉に無反応だった重度の人がいらっしゃいました。いつも私が褒めるとニコニコだったのに??びっくりしました。心底思っていない言葉は、伝わらない様です。この人は自分のしていることにきちんと対応してくれているか?瞬時に厳しい判断が下され、その後の態度として示されます。忖度のない世界です。
障がいのある人は、正直な人が多いです。年齢は関係ありません。自分を理解してくれるか否か。自分の思いを汲み取ってくれるか否か。あの人は面白い。あの人はつまらない。あの人は話が通じない。あの人はユーモアがない等言い出したらきりがないくらい事細かに観察をしていらっしゃいます。
私たち支援者はしっかり見られています。もちろん家族もです。障がいがあるから何も分からないだろうなんて思わないで下さい。経験を積むごとに、障がいのある人を支援するという仕事は、難しいと感じています。資格を取ったからできるというものでもありません。信頼関係の下に、人を支援するという人間の根本が問われる仕事です。一般の人が、どのように思おうと障がいのある彼らにはこの人は信頼できるか否かは、お見通しです。彼らの眼鏡に叶うように、日々勉強です。

 

自閉症の息子が個展を開催します。
11月3日(木・祝)~13日(日)9時~21時
JR岐阜駅東 ハートフルスクエアG二階です。
よろしかったらご覧ください。





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