vol.204 ぎむきょールーム サードプレイス談義

共有体験の「空白」が心配 精神科医 斎藤 環さん

 小中高の児童・生徒も長期の休校にマスクの着用などが重なり、他者との接点が持ちにくくなっている。そもそも子どもが対面せずに一から人間関係を育むのは難しい。若い世代は学校行事が中止や延期になったり、節目の体験がなくなったり、最も悪影響を受けている。そもそも思春期や青年期の共有体験はなぜ重要なのか。それは世代をまとめる力があり、社会に対する集合的な期待感を決定づけるからです。共有体験に縛られない分、この世代は自由な価値観を持つ可能性はあるでしょう。反面、人間関係や対面で混じり合うことを忌避する傾向が強まる懸念もある。私は若い世代が気の毒でなりません。(朝日新聞)

 この記事を読み、以前から気になっていたこと「今こそ子どもたちに必要なサードプレース」は確信に変わりました。そこで、各務原市で“居場所つくり”をしているお二人にお話を伺いました。


編集部:そもそもサードプレースとは交流が目的と定義しています。

りな:ここ「えんがわ」に来て子育て経験のある人と交流し、雑談して気が落ちつくなど、お母さんたちの集まりで解決できることはたくさんあります。発達についての悩みも交流の中から解決の糸口が見える事も多いんです。この子はこういうふうだから大丈夫よって。ご飯食べながら雑談しながらそういう話になるんです。よかった、ホッとしたって帰っていく。お母さんがひとりで思い込んだり決めつけないで、親子同士の交流から解決できる問題は十分ありますよね。

あき:どの世代の人でもいいからおしゃべりすることって大事ね。宿題を教えてもらったり、おじい、おばあにお味噌汁の作り方を教えてもらったり、ご飯の炊き方やお手玉とかね。お腹空いたらご飯炊こうか、とか、暮らしそのものを実体験できるような場所がいいな。あとね、子ども同士でいるとぜったい喧嘩します。その時、自分たちで解決させてあげたい。学校だとすぐ指導になっちゃうんだよね。

りな:私の思う居場所は、学校に行くのがしんどい子、あとは、家に帰っても誰もいない、そういう子の帰る場所っていうか、居場所を作りたいな。自分が鍵っ子で、塾も一人で通っていたし、冷たいご飯を食べた日もあった。今は共働きが多いし、母子家庭や貧困など、さみしい思いをしている子も増えていて、そういう居場所がぜったい必要だと思います。できれば自分で歩いてこられる校区内にあるのが理想ですけど。

あき:帰る場所があっちにもこっちにもあるっていいよね。うちの高校生の息子の友達が3日間ウチに泊まったの。その子が一緒にご飯を作っていた時、「各務家は7時にご飯ですよね」「そうだね理想は6時45分なんだけどね」そしたら「ご飯の時間が決まってるってのは僕頑張れます」っていうの。

りな:私、そういう子どもだったんだ。学校帰りによく友達の家に行っていたの。みんなでご飯を食べるってことに憧れててね。だから、想像するだけで感激で涙が出るんです。そんな私なので、孤食、個食の子がすごく気になります。忙しくて食事の時間が家族バラバラになるなら、朝とかどの時間帯でもいいから1日1回は一緒に食べようって、私はみんなに伝えたい。そういうことは意識しないとできないから。

あき:決まってなければダラダラになっちゃうんだって。時間が決まっていると、それまでに作り終えて食べさせ、風呂に入れなきゃ、とか時間の目安が決まっていると僕すごくありがたいっていうの。でね、その子がうちの一番下の子に箸の持ち方とか、なんやかやと教えてくれるわけですよ。そういう子たちがふらっと来て泊まっていけるところを私は目指したいなと。ふら〜っときて1日2日居られる場所。

りな:その場合、親の同意がいるよね。コロナだからこそ、大人が腹をくくらないとね。だから、問題が起きないように、何もしないようではいけないよね。

あき:事なかれ主義ばかりでは子どもが置いてけぼりになります。

りな:私は「えんがわ」を拠点として、できることをまずやろうと思います。来年スタート予定の「親子園」(自主保育)では、みんなで昼食を多めに作って、食べて、夕飯用にお持ち帰り!みたいなことをする予定。

あき:「えんがわ」には羽釜があるからそれでご飯を炊く?そうすると薪がいるよね。薪割りが必要になってくるけど、薪割って結果がわかりやすいし達成感も味わえるし、コツを覚えてだんだん上手くなってくるから自己肯定感もアップするんですって。今の便利な社会生活ではなかなか体験できないよね。その薪がお風呂に使われる、ご飯に使われる。生活に役立っているんだなぁという実感が持てるしね。そんな時間、空間が居場所には必要かも。

りな:生活をどう作るかですね。先日ある方に3つの「せい」が大事って話を聞きました。「政治」「生活」「性教育」。そこを教わらずに大人になると結婚した時にどういう風に家庭生活を営んでいけばいいかわからないって。そこをきちんとしないと、後々フォローが必要になってくんですよね。

あき:私は3つの「間」。時間、空間、仲間。を大事にしたいな。目の前のご縁のあった子達に手を差し伸べるしかないの。手の届く子達に少しでも家庭の暖かさを知ってもらう、食事の大切さを知ってもらう。人と人との向き合い方、喧嘩した後の仲直りの方法を知ってもらう、自分を大事にする術を身につけてもらいたいし、相手を大事にする術を知ってもらうことを伝えていかないと!小さいうちからが大事ですね。

りな:だから「親子サロン」では参加費はおやつ代の50円。誰でもどうぞって感じにしたいから。こんな環境があるんだ、こんなご飯の食べ方、こんな人がいるんだ、みんなで食べるとこんなに美味しいんだ!そんなことを感じて欲しいし、そう感じてもらった時に学びの場を提供したいと思っているの。お料理教室とか、家計の勉強会とか。ここは“きっかけ”にしてもらう場所。集まって、楽しくて、はい終わり、にはしたくないんです。それから世代間交流をしたい。高齢者の方と、子どもたちがもっと交流して、おじいちゃんおばあちゃんから学ぶみたいな。でも今はコロナだから、それもなかなか実現しにくくて…。

あき:コロナねぇ。でも、あーだこーだ言ってても何も始まらない。何かやってみないと。ホッとできる場、この居場所の中で生活の基本が身につくような仕掛けをしたいね。うちも学校が本当にやだって言い始めたから、息子がホッとできる場所、欲しいなって思う。

りな:ちょっと学年の大きい子が来ると下の子を面倒見てくれたり、手伝ってくれるとありがたいので、「えんがわ」が空いてる日は来てもらいたいわ。「えんがわ」は基本的に第1第3木曜日にオープンしていて、第3に子ども食堂をやっていて。隔週月曜日に解放日を設けようかなと思っています。自由にここで遊んでってくださいって。ここで炊いたご飯で「おむすび講座」もいいかもね。超シンプルで、極意を学ぶ、みたいな。基本のきから。手のひらに塩をこすりつけてこうやって握ると美味しいんだよって。

あき:おむすびはやっぱ白米かなぁ。でもぬか漬けを食べれば栄養面はよし。この前、あるお母さんに「ぬか漬けはどうやって作るの」って聞かれたから、「米ぬかと鷹の爪と塩と水だよ」って言ったら、「そんだけで作れるの」って。そんな日常を切り取ったことを学べたりできる居場所って、本当はお母さんに必要なのかもね。

編集部:コロナ禍だからこそ「家でもない、学校でもない第3の居場所」が必要と感じたのは、リード文にあるように「共有体験の空白」が気になったから。今回「子どもの第3の居場所」をテーマとした対談でしたが、お二人は「お母さんケアが大事」と口を揃えました。共有体験が必要なのは、まずお母さんなのかもしれませんね。


各務 亜紀(かかみ あき)・「つくろ!の会」、「ここね」とともに「心と身体を健やかに育むための情報発信」をしている。畑活で野菜つくり、料理教室で体つくり、ここねでは精神を整える。全ての根っこはつながっていると、多くの人に伝えている。

後藤 里奈(ごとう りな)・親子サロン「えんがわ」主宰。毎月第1・第3木曜日。第3では子ども食堂も開催。地域に根ざした親と子の居場所つくりに奮闘中!来年から自主保育「親子園」を計画している。





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