vol.202 ボーダーレス社会をめざして vol.61

NPO法人オープンハウスCAN 理事長 伊藤佐代子

家事

 先日、息子が馬肉を買ってきて、おいしく味付けした焼き肉にして食卓に出してくれました。自分の食べたいものを買い、作って食べることが出来るようになりました。それも家族の分まで作ってくれました。
 10年先を見据えながら子育てをしなくてはいけないと思い、自閉症の子どもを育ててきたつもりです。「自分のことは、自分でできるようになってほしい」と考えていましたので、小さい頃から家事をできることから少しずつやらせていました。実際にどのようにしていたのか、小学3年生の頃の記録が残っていましたので、読んでみました。
 実は、数年前まで私の脳は、息子が小学生の頃の記憶が完全に封印されており、その頃の記録があっても読めない状態でした。辛い思い出しか頭の中には残っていなかったからです。情けない話なのですが、クラスの子にいじめられた、先生に辛く言われたなど強烈なマイナスの記憶しか残っていなくて思い出したくなかったのです。実際、障がいのある子どもが普通学級に通うという事は、親に相当な覚悟がない限りできないものだと思っています。
 数年前にどうしても調べなくてはいけないことがあって、その記録を読んでみますと、とっても楽しそうな日々がその中にはありました。近所のたくさんの人に支えられ毎日、毎日楽しそうに暮らしている姿がありました。記憶って実に曖昧なのですね。とりあえず小学3年生の4月から夏休みまでの記録を読んでみました。
 5/31(土)朝、町内の掃除だったので、淳司もほうきを持ってお手伝い。ほうきの扱いが大変上手になっていた。学校でずいぶんやらせてもらっているのだなと感謝。家でも躾けねばと思う。
 6/2(月)花が買ってきてあったので(インパチェンス)10株、花壇に妹と植えてもらう。「じょうろでお水もやって!」と言う。じょうろを取り合いながらやる。
 6/8(日)伊木の森のアスレチックへ行く。お弁当作りのお手伝い。二人にチーズ巻きとおにぎりを作ってもらう。『おにぎり』という絵本(こどものとも)があるのでそれを見せ、本の通りに「手にお水をつけ」「塩をつけ」というふうに。妹も淳司も上手に作っていた。
 7/9(水)『ぐりとぐら』の本のカステラを作るというので、宿題をやって7時半頃から作る。これも自由勉強の一つとして。小麦粉を入れ・・・。というように、文章と動作を一致させやった。上手にでき、皆で食べた。おいしかった。 
 楽しそうな毎日の中で、家事手伝いを取り入れています。家族から認められ、喜ばれる経験はかけがえのないものです。大きな力として蓄えられること間違いなしです。