【Vol.167】記者雑感

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五輪を巡って、この国のトップたちはどうしておかしな発言を繰り返すのだろう。東京誘致のプレゼンで「福島第一原発の汚染水はコントロールされている」と言い放った安倍首相。そしたら今度は、いったん白紙に戻った新国立競技場に関して森喜朗元首相が「もともと、あのスタジアムは嫌だった。生ガキみたいだ」。この人の好みなどどうでもいいが、カキの産地にいる者としてはちょっと腹が立った。
とはいえ、フィギュアスケートの浅田真央選手を「あの子、大事な時には必ず転ぶんですよね」と評した人物だから、生ガキぐらいなら「またやった」と思える。しかし「国がたった2500億円も出せなかったのか」には感覚を疑った。
この金額は、住宅や道路の建設といった復旧・復興事業に気仙沼市が今年度見込む約2600億円とほぼ同じだ。集中復興期間が終わる来年度以降は一部が自治体の負担になる。数億円の独自の出費を求められただけで市の担当者は「元々豊かではない財政を圧迫する」と強く反発していた。
また、不通になったJR気仙沼線について、南三陸町は鉄路での復旧をあきらめた。安全なルートで復活させるには、大きな地元負担が生じる可能性が高いのが理由のひとつだ。その費用は気仙沼市などと合わせて400億円。「たった2500億円」にはるかに及ばない。
こんなことを呉服屋さんと喋っていると、彼は「報道も来年の3・11震災5年で一段落でしょう。次は10年ですか。ああその頃はオリンピックか」と、話はまた五輪に戻ってしまった。各種競技場建設のせいで復興工事の人手を取られる、メディアも五輪ばかり取り上げて被災地を忘れている……。ここにいると、どうしても五輪に対して批判的というか、ひがみっぽい声が耳に入る。「関東や西日本に地震が来て、オリンピックどころじゃなくなるかもしれないけどね」。どういうつもりで彼が言ったのか、怖くて尋ねなかった。
私が寝起きする事務所兼住居は2階近くまで津波に漬かった。震災後に床を張り替えるなどして使っているが、「後遺症」なのか寿命なのか、木製のドアは腐って穴が開き、エアコンは壊れ、電気も一部つかなくなった。勤務する会社に修理を頼んだものの、作業を請け負う地元業者になかなか来てもらえない。高台移転先の造成がいくらか進み、家の新築工事に忙しいようだ。市役所勤めの男性は「公務員として、ほかの被災者より先に建てるのは抵抗がある。いちばん後でいい」と話していた。政治家トップに欠落している慎みや思いやり。こんな言葉を聞くと、少し救われる。
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2012年に岐阜から赴任しました。がれきの片付けは震災後3年で終わり、高台移転先の造成や水産加工会社の再建なども少しずつ進んでいます。それでも「元の生活」に戻ることは決してありません。現地で見聞きし、思ったことをご報告いたします。
     現役新聞記者(宮城県・気仙沼在住)





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