vol.200 わたしたちのサスティナビリティ

東京大学 助教 工藤 尚悟

 サステイナビリティ(持続可能性)という言葉を耳にする機会が増えてきました。背景には国連が提唱する持続可能な開発目標(通称:SDGs)があり、目標時期の2030年が迫ってくるなかで、いよいよ本格的に動き出す必要があります。
 
 しかし、このサステイナビリティという言葉が意味するところについては、もやっとした掴みどころのなさを感じている方が多いのではないでしょうか。意味のところでひっかかってしまうので、実際の行動となるとますます距離を感じてしまうのではないでしょうか。
 
 ここでサステイナビリティの意味をその語源から確認したいと思います。サステイナビリティの語源はラテン語の”sustinere (to hold upright)”であり、その意味は「下から支える」です。ちょうど水をすくうために両手を広げたときのような格好で、何かを下から支え、手渡していくという意味です。
 
 さて、この広げた両手に何をのせて次世代へと手渡していきたいのでしょうか。またその実現のために、私たちは何をすればよいのでしょうか。こう考えることがサステイナビリティに取り組むことの本質です。
 
 サステイナビリティに取り組む時にもう1つ大事なことは、「どの主語で考えるか」ということです。私は、ここで「わたし」という個人ではなく、「わたしたち」という複数人の主語を用いることがとても重要だと考えています。
 
 なぜなら、「わたし」が大事にしたいものの追求は、時として他のわたし(=他人)が大事にしたいことと衝突してしまうからです。この時に起きがちなことは、どちらが正しいのかという正義の押し付け合いか、お互いを尊重するが故の不干渉です。これでは気候変動などすべての人々に関わる課題に取り組むことが困難となってしまいます。このような状況を回避するために、「わたしたち」という主語を用いて、次世代に手渡して行きたい物事や価値観を考えていくことが大切です。
 
 「わたしたち」という主語を使って、私たちがこれまで大事にしてきたことをまもりながら、次世代が暮らす社会において大切にされて欲しいことがきちんと大切にされるような仕組みをつくり、更にそのような考え方を次世代につなげていくこと。これが、わたしたちのサステイナビリティを実現していくことだと考えています。

工藤尚悟(くどうしょうご)プロフィール:秋田県出身。東京大学大学院新領域創成科学研究科・助教。サステイナビリティ学博士。研究テーマは「人口減少社会における持続可能な地域づくり」               https:///www.shogokudo.net


オンラインで、サステイナビリティ学博士工藤さんと対話しよう!この指とまれ〜

 私たちが住む地域をより良い形で次世代にバトンタッチしていくことを考え行動することが、サステイナビリティを実現していくことにつながります。前号の工藤さんのコメントの中にあった「まもる」「つくる」「つながる」をキーワードに、できることはたくさんあると思います。最低5人以上集まれば、「オンラインで工藤さんと対話する会」を実施したいと思います。
主催:つくる・みらいの会 (今尾)058-383-8666