NPO法人オープンハウスCAN 理事長 伊藤佐代子
賞味期限
「おいしいお店に行こう!」と障がいのある人に誘われ、いざ食べに行くと「あれっ?これっておいしいの?」思うことがあります。人には味覚の差は当然ありますが、雰囲気、見た目、先入観でおいしさは全く違った物になるらしいです。
自閉症と言われる方には、感覚過敏という特徴がある人がいます。主には「聴覚・視覚・触覚・嗅覚・味覚」の五感の一部、または複数からの刺激を過敏に感じることです。食べることが出来るものが、数種類しかないという人、お母さんが作ったふりかけ以外は食べないという人、焼きそばが好きで、私たちが作って出しても「入れた調味料が違う」と言って食べられない人など、いろいろな方に今までお会いしました。舌触り・匂い・味・外観いろいろな条件がそろって食べられないようです。
知的障がいの方と自閉症の方とは食べ物に関しては、ちょっと違います。知的障がいの方で、賞味期限を全く気にしない人もあります。「もう捨てたほうがいいんじゃない」と言っても「食べます」と言ってガンと捨てない人もいます。食に関しては、多かれ少なかれ問題はあります。お店へ入ると同じメニューを毎回注文する人もいます。食べ物自体の温度も気にします。息子は料理が冷めたものはちょっと苦手です。電子レンジがあれば、冷めた料理はほとんどチンします。カレーは、小学校の5年生から突如食べられなくなりました。何が起きたのか分かりませんが、カレーの匂いを嗅ぐだけで小さなパニックになります。ですから、我が家ではカレーが食べられません。
息子は、他に食べられないものはないのですが、傷んでいて少し酸っぱい味がするから、やめておこうということが分からないようです。味覚に関しては、少々不安な所があります。どうしたらお腹を壊さないでこれから生きていけるのか? 考えた末に、賞味期限だったら目で分かるからそれで、食べられるもの・食べない方が良いものを分けようと思いました。運よく、彼の頭に賞味期限がインプットされました。しかしです。賞味期限を過ぎても食べられるものはありますが、すべて捨てることになってしまいました。
ある日、冷蔵庫の中を見ると、調味料がありません。少しぐらい賞味期限が過ぎていても使えると思い、入れておいたのが、残念!ありません。捨てられました。困ったものですが致し方ありません。彼が長い人生を生きていくために、食中毒にならないためには、この選択肢しかありません。味覚に頼って判断することは、非常に難しいようです。