vol.197 ボーダーレス社会をめざして vol.56

抱え込まない

NPO法人オープンハウスCAN 理事長 伊藤佐代子

 障がい者の生活支援サービスを行っているNPO法人に関わって、もう20年ほどが経ちます。この20年の間に支援サービスの利用をお断りしたことが2,3件あります。「誰でもいつでも利用できる」というサービスを謳い文句にしていた事業所だったのにです。優秀なスタッフがいるため、かなり対応が困難な人でも受け入れていました。しかし、利用されるご家族の方が、ここしか見てもらえないという気持ちになられた時が危険です。本来は役所の相談窓口に行き、いろいろな人に関わってもらいサービスを使うことを考えるべきなのです。支援に自信あるからと言って一つの事業所が、抱え込まないことが大切です。自信過剰がいちばんいけなく、謙虚であるべきです。
 行政に関わって下さるようにするにはどうしたら良いのか?お断りすることが一番なのかなと思い、お伝えしました。ご家族はきっと「見捨てられた」と思われたでしょうが、そうではありません。若い障がいのある人には、これからの生活があります。その後、私が思った通り、行政主導で会議が始まり良い方向に向かいたくさんの人に関わって頂けるようになりました。
 また、書道でもお断りをしたことがあります。親御さんが熱心で、字が書けることに喜びを見つけられているようでした。しかし、ご本人は最初こそ珍しかったのか、書いて下さいましたが、時を経つごとに書道をする状態ではなくなっていきました。書道は芸術の域のものなので、喜んでやってもらわなくては意味がありません。「私には、お子さんを教える能力がないので、お断りをします」と言いました。書道をする前の段階だと判断したからです。障がいのある人と書道をすることは、決して簡単なことではありません。誰が書道をするのか?ご本人です。何より書道を楽しむことができないのであれば、「ごめんなさい。」と私が謝るしか方法がないのです。
 しかし、私以外の人だっら、もっとうまく指導ができるかもしれないなとは思いました。自分の子どもに関しても同様です。「私しか、この子を理解できない。」なんて思わないことです。私がいなければもっと、子どもは自由に生きられるかもしれません。人はそれぞれです。相性があります。苦しい時は一人で抱え込まないで、いろいろな人に関わってもらえるようアンテナを精一杯張り巡らせ、いい人に出会えたら躊躇せずキャッチすることです。





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