vol.193 緊急特集 中村 哲さんを悼む

中村 哲 なかむら てつ
ペシャワール会現地代表。PMS総院長。1946年福岡市生まれ。九州大学医学部卒業。国内の病院勤務を経て、1984年パキスタン北西辺境州の州都ペシャワールに赴任。その後、東部アフガニスタンへも活動範囲を拡げ、ハンセン病や結核など貧困層に多い疾患の診療、農村復興のため水利事業に携わる。

なぜ、どうして……、
ペシャワール会の中村 哲医師が死去

 12月4日、アフガンで支援活動を30年以上行なってきたペシャワール会の中村哲さんが武装集団に銃撃され死去された。友人からのメールでそのことを知った私は、驚きととともにその事実が信じられなかった。政治、思想をこえてアフガンの現地で救援活動を行ってきた中村さんは、戦乱とは関係なく、現地の人々の尊敬と支援を集めて黙々と活動してきたのである。その中村さんが標的となり死去したのである。
 ペシャワール会は1983年に中村哲医師の活動を支援する目的で結成された日本の民間支援団体です。パキスタンのペシャワールから始まった医療活動はアフガニスタンにも拡大され、医療活動とともに生命の根源である「命の水」を求めて井戸掘り、カレーズ(伝統的な地下水路)の修復活動へと進展しました。また、アフガン戦争では空爆の下で食料援助を実施しました。
 2000年の大干ばつから続く干ばつの影響、戦乱による治安の悪化によってアフガンの国土は荒れ、多くの難民が生まれました。中村さんによれば、報道されるのは戦乱のようすばかりですが、アフガン荒廃の根本的な原因は継続する干ばつの影響です。当初行なっていた医療活動から、命の水を求めての飲料水源確保事業から(掘った井戸は現在1600)、「緑の大地」計画のもと2003年から砂漠化した大地を緑の農地にするために用水路の建設が始まりました。用水路によって荒廃した大地に緑がもどり、ふるさとに帰還した難民は約15万人と推定され、その水利事業によって現在約65万人の人たちの生活を支えています。
 そんなペシャワール会の活動を支えているのが約2万人(会員・寄付者)の日本人の真心です。民間による支援活動ですが、その活動はすでに国家的な事業といえるほどに成長しており、その活動の根源は現地の人たちと中村哲氏の強固な信頼関係にあります。当たり前のことですが、現地の人たちの思いにそった、アフガンの人たちのための支援活動です。いまだに戦乱は治まらず、治安悪化のアフガンにあって、用水路建設、農村復興が進むアフガン東部、クナール川流域は暗闇の中の光明です。医療活動から井戸掘り、そして「緑の大地」計画による用水路建設、農地の確保、「命の水」は「平和の水」となってアフガンの国土を潤す。ペシャワール会の活動はすでに30余年、武力によらない真の積極的平和主義を実践してきたのがペシャワール会、中村 哲医師でした。
 なぜ、どうして中村さんが狙われたのか、アフガン国内の混乱を狙った武装集団の正体、思惑が私にはまったく理解できません。ただただ驚きと悲しみでいっぱいです。日本に帰る中村さんの棺をガニ大統領が担ぐ報道写真を見て、アフガンの人たちとともに涙があふれてきました。
 08年にペシャワール会の現地スタッフであった伊藤和也さんが殺害される事件があったが、「私たちペシャワール会は、変わらずに事業を継続して、皆さんと苦楽を共に致したいと思います……皆さんの協力と要望がある限り、ペシャワール会の活動をやむことなく継続されることを誓い、弔辞と致します」と中村医師。
 中村さん死去という大きく深い悲しみを乗越え、今までの活動を変わらず継続していくことが残された私たちのつとめであろう……ただただ合掌。

(新年になったら、中村哲医師追悼の集いとペシャワール会の報告会を計画したいと思っています)  
黒野こうき(岐阜ペシャワール会を応援する会・代表)

記憶に残る中村さんのことば

「憤りと悲しみを友好と平和への意志に変え、今後も力を尽くすこと誓う」
伊藤和也さん(ペシャワール会スタッフ)が2008年に殺害された時の追悼の言葉。

「100の診療所より1本の用水路を」

「誰もがそこへ行かぬから、我々がゆく。
 誰もしないから、我々がする」

「戦争協力が国際的貢献とは言語道断である」

「9条がリアルで大きな力だったという現実」

2016年5月27日 各務原市民会館大ホールにて ペシャワール会は、パキスタンでの医療活動に取り組んでいた医師の中村 哲を支援するために1983年に結成された非政府組織。






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