vol.193 ボーダーレス社会をめざして vol.52

NPO法人オープンハウスCAN 理事長 伊藤佐代子

「くん」「ちゃん」って虐待?

 15年ほど前から、岐阜のスポーツクラブに通っています。がんになってからは、時間があれば優先的にスポーツクラブに行くようにしています。先日、そのクラブで「ちょっと聞いていいですか?」と声をかけられました。話を聞くと一升餅の話でした。孫が出来て娘の所に紅白の一升餅を送ったのだけれど、小さな子にお餅を背負わせる行為そのものが虐待にあたるかしら? 送ったのをすごく後悔しているとのことでした。
 一升餅とは、一歳の誕生日を祝い、一生食べ物に困らないように、これからの健やかな成長を祈る伝統行事で、風呂敷にお餅を包み斜めに背負わせ歩かせるようなことをするのです。地域によっていろいろあるようですが。私は、「それは虐待にはならないでしょう。紅白のお餅でしょ。そんな気遣いをして下さったお母様に感謝されるでしょう」とお答えしました。
 虐待のつもりなんて毛頭ないと思っている行為も一つ間違えば虐待と言われてしまうことがあります。それが、障がいのある人の呼び方です。○○くん、○○ちゃんなどの呼び方は虐待にあたるかもしれないと最近は言われ始めました。ちなみに息子に「ヘルパーさんにどう呼んで欲しい? あっちゃん・伊藤さん・淳司さん?」と聞きますと「淳司さんです」「あっちゃんではだめ?」「僕は41歳です。淳司さんがいいです」とはっきり答えました。何度聞いても変わりませんでした。41歳なのでと言われた時には、ギクリとしました。ちゃんと分かっているのだなとちょっとびっくりしました。
 平成24年に障害者虐待防止法ができ、当たり前のことなのですが、障がいのある方の気持ちを汲みとろうと多くの人が考えています。ご本人が嫌がっていなくても、「くん、ちゃん」とよぶことは虐待にあたる場合があります。見下すように○○ちゃんと呼んだり、○○くんは、明らかに年少者に対する呼称になり気をつけなければいけません。年齢にふさわしくない呼び方はどうなんでしょう?
 幸いにも息子からは、明確な回答を得られ、年齢相応に成長してきていることに正直感心するより、甘く見ていた自分を反省しました。しっかりと大人になっていました。呼称は、人格・人間関係をも示す大切なものであり、ご本人が一人の大人であり、それにふさわしい対応がされるようにと考慮する必要があります。ご本人、ご家族がどう呼んで欲しいのか教えていただき、周囲から見ても適切な呼び方、ご本人を尊重している呼び方を考えなくてはいけないと思います。





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