友だちは年金、定年後は楽しく、充実した人生を送ろう!
セカンドライフアドバイザー ウィ! エルダーマン代表 上鵜瀬 孝志さん
いわゆる団塊の世代として生まれ育った上鵜瀬さん。第一次ベビーブームの昭和22年〜24年に生まれた団塊の世代は800万人を越す。小中高時代から常にひしめき合い、社会の中でも競争を強いられてきた。
「定年が視野に入ってくるようになった50代、それまでの競争という価値観そのままで、地域や家庭に帰ったって通用しない。今から男性のネットワークを作っておかないといけないんじゃないかという思いがありました。それで「ウイ!エルダーマン」という活動グループを設立したんです」
エルダーマンのキーワードは「驕らず、威張らず、腐らず」、「来る人拒まず、去る人追わず」。楽しくなければ人生じゃない!と言いながらも、実は楽しいだけではない。それまでの人生で得た技術なり経験を、社会のために活かす活動もする。社会に貢献し、人と繋がることで、それぞれが自分の存在意義を見出すという奥深い団体でもある。
エルダーマンの活動は多岐にわたる。セミナーの開催、フリーマーケットに出店し売り上げを寄付、学校の余剰机をリフォームしベトナムに送る、懇親会(飲み会)、芝居、旅行…。仲間とともに様々な活動をする中で定年後の生き方について感じたことを書き溜め、一冊の本にしたのが、「定年そして、10万時間」だ。
10万時間というのは定年後から男性の平均寿命までの時間。定年までの40年間会社に拘束されていた時間もほぼ10万時間。同じウエイトが定年後にかかることになる。しかも、人生100年時代などとも言われる昨今、10万時間どころか、もっと多くなることもある。その時間をどう使うのか。
「仕事の関わりではなく、社会との関わりの中で自分の存在意義を確認できるかどうか。自治会のことをやるとか、ボランティアをやるとか、なんでもいい、それが豊かな人生に繋がっていくんじゃないかな。」と定年を機に価値観の転換を上鵜瀬さんは提案する。
多くの同年代の女性は、子どもが手が離れた段階で価値観の転換をすでに済ませて、女性同士のネットワークもできているという。
1つのアンケート結果がある。「定年後に旅行に行くなら誰と行きたいですか?」というもの。夫の1位は妻。それに対し、妻が夫と答えたのは6位。
「現実は、こんなにも夫婦間にズレがあるんです。夫婦といえどもそれぞれの人生、妻には妻の人生があるでしょ。親に育てられた子どもから学生までの時代、社会に育てられた会社員の時代を経て、定年後は自分で自分を育てる時代です。自分の人生だもん、妻に頼るんじゃなくて、自分で存在意義を見つけていこうよ」と語る。ただ、 そういう生き方をしていくには、友だちの存在が欠かせない。
「友だちは年金って僕はよく言ってるんだけど、飲み友だちや趣味の友だち、そういう友だちが多いほうが人生はより豊かになるよね。友だちって、知人以上、親友未満というふうに僕は考えています。友だちのプライバシーや、過去にどういう仕事をしていたかとか、家族がどうとかという話は知らなくてもいいんです。その人がこれから何をしたいのかが大事。」
退職した男性には、過去の実績や肩書きにとらわれ、そこにしか自分を説明するものがないという人も意外と多い。
「それでは寂しいし、後ろ向き。そこから抜け出さないと誰も相手してくれなくなって孤立しちゃうよね。人に対して上から目線になりがちな人もいる。だけど、僕らの年代まで生きてきたら、どういう境遇であってもそれぞれいろんなことを乗り越えてきた実績がある。財産やポストの問題じゃなくて、その年までお互い生きてこれたねって話。いかに相手のことを尊重できるか、そこも大事にしたいよね。」
「自然災害や病気、この先、誰だっていつどういう状況におかれるか分からない。ならば、一日一日を充実したものにできるといいよね。そうなると楽しいじゃない」。
これからの時間をどう過ごすのか、それは自分自身が決める、のである。
かみうせ たかし
コピーライター、「イマージ」主宰。「ウイ!エルダーマン」ネットワーク代表。
広告代理店を経て独立。広告制作会社「(有)イマージ」を設立。2000年、団塊世代の男性を中心とした市民活動グループ「ウイ!エルダーマン」を設立し、各地で定年後の生き方などをテーマに講座やセミナーで講師を務める。
趣味は昭和の車(旧車)のカタログ収集と美味しいものを食べること。
名古屋市在住。
H.P http://kamiuse.com/
本の帯には「定年よ、大志を抱こう!」。本文にはダジャレやオヤジギャグが満載。難しくなりがちなテーマも楽しく痛快な語り口で綴られている。