vol.192 ぎむきょーるーむ 学校に行きたくない 

「お腹が痛い」「頭が痛い」「行きたいけど、宿題が終わってない…」「もう、死んだほうがいい!」
学校に行き渋る子どもの言葉も姿もいろいろ。
「行きたくない」と言葉にできる子もいれば、体の不調を訴える子も。中には暴言や暴力など「荒れる」というかたちで表現する子もいます。
「学校に行くのが辛い」のはわかった。
でも、どうして?
学校でなにかあったの?
ひょっとして、いじめられていたとか…。
「学校に行きたくない」子どもの声として聞こえてくるのは…

【低学年の場合】 「体育がいや」「給食を早く食べられない」「先生がこわい」「○○ちゃんが遊んでくれなくなった」「ぼく(わたし)が怒られてる気がする」「みんなできるのに、ぼく(わたし)だけできない」「一人でいたいのに、みんなと遊びなさいといわれる」 etc

【高学年から中学生の場合】「疲れる」「先生がぼく(わたし)の意見を聞いてくれない」「勉強がわかんないからだるい」「テストがあると気分が重くなる」「部活がきつい」「なんとなく…」「クラスでいじめがあるのがつらい」「友だちにハブられた」「LINEで排除された」「もうこれ以上がんばれない」 etc

子どもは、期待に応えたい、大人が安心できる言葉はなにかと、がんばってそこにあわせようとすることがあります。
自分でもそうしてよいかわからなくても、その場しのぎのことをいってみたりします。
学校のことは親にも先生にもなにも話してくれないことも。
大人は不安にかられてあれこれ問いたい。
けれど、気持ちをこらえて、そっとしておく時間も必要です。

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学校に行きたくない理由を考えるときに

答える人:山下 耕平(NPO法人フォロ事務局長)

 「学校に行けない原因はなんですか?」と親や先生が聞く場合、「その原因を潰せば行くようになる」と考えておられることが、ままあります。でも、そういう見方では、ボタンをかけちがえてしまうことが多いように思います。
 

きっかけはあるかもしれないけど、それは自分でもよくわからないとか、いろいろなことが重なってそうなったということのほうが多いのではないでしょうか。もちろん、はっきりとこれが原因という場合もありますけど。
 子どもにとっては「これが原因だから、ここをこうしよう」とやっていくとしんどい気がします。
 理由はともあれ、子どもが学校に行けないというとき、あまりそれをなんとかしようと思わずに、まずは「休むこと」を受けとめられたらいいんだろうと思います。だけど、初期ほど、それは難しいですよね。
 ぼくの見てきた経験からいうと、この時期にあまり親子でがんばりすぎて、それでも「行けない」となってしまうと、苦しみや傷を深めてしまうことが多い気がします。
 できれば、初期の段階から、がんばってどうにかしようということは少ないほうがいいのかなと思います。
 とくに学校の先生は、原因を探そうとしてしまいがちです。でも、それは「わからない」ものであって、あまり行けない原因にフォーカスしないほうがいいとぼくは思います。

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対談 「いい親」の対応をしなくても

岡崎 子どもが学校に行かないと相談してくる親御さんのなかには、「子どもに『学校に行かなくてもいい』っていわなきゃならないんですよね?」と聞いてくる人もけっこういます。ボクが「それはそうじゃないんじゃない?だって行ってほしいんでしょう?だったらそういったほうがいいんじゃない?」というと、「でも、そういったら子どもを抑圧するから」と。「いや、でもお母さんが『行かなくていいよ』といって顔をひきつらせてる抑圧のほうが強いから、それはいっていいと思うよ」と話すんですが、「そりゃあ行ってほしいけど、あなたがしんどいのに無理して行くことはないのよ」というくらいで。
山下 これはもう不登校の鉄板ネタみたいになっていますけど、昔から子どもたちがよくいうのは、「『学校に行かなくてもいいよ』といっているお母さんの目が笑っていない」(苦笑)。

里中 私も最初はそうだったと思います。
山下 階段をのぼる足音とか、ドアを開けたときの音とか、ちょっとした所作から子どもが感じとっているメッセージがある。それと言葉が食いちがってしまうと親も子どもも逆に苦しい面はあると思うんですよね。
里中 親は「いい親」をしなくちゃいけないって、すごく思っているんですよね。だから子どもにいってはいけないと思ったら、それをすごくがんばろうとしてしまう。「無理しなくていいんじゃない?」って親の会で私はよく話しますが、「この程度の親です」というのを子どもにも見せた方が楽なつきあい方ができると思うんです。
 だけど、親は子どもにとって権力がすごくある人だから、それをふりかざすことをしてしまうのはまずいですよね。立場が強いということは自覚して、これまでにしてまずかったことは、これからはしないようにすればいいんです。
 親自身が「こうできなかった」と自分をすごく否定してしまうと、子どものほうも否定感が強くなってしまうので、それよりもこれからどうしていきたいのかを親も子もそれぞれが考える、というような感じになれるといいのかなと思います。そこにたどり着くまでがなかなか難しいですが。

対談した人
NPO法人フォロ スタッフ:里中 和子、山下 耕平
お・は編集人:小学校教員 岡崎 勝

NPO法人フォロ …2001年、大阪で不登校の子どもを持つ親たちを中心に設立され、フリースクール、親のつながり、相談事業、なるには(18歳以上の居場所)の4つの活動を展開。