vol.192 しょうがいをみつめる vol.3

学びのユニバーサルデザイン

 私が考えるこれからの教育は、通常学級、特別支援学級・学校という垣根をなくして、共に安心して暮らせるクラスです。そのためには、「学びのユニバーサルデザイン」という視点が非常に重要になってくると考えます。

 始まりは、通常学級における特別支援教育において、授業や学習環境をユニバーサルデザインの視点で捉えようという動きで、10年くらい前から取り入れられている視点です。何をもってユニバーサルデザインとするのかの定義は現時点では統一したものは定まっていません。
 『学びのユニバーサルデザイン』を提唱している1つの団体として、米国の研究団体C A S T (Center for Applied Special Technology)があります。
 C A S T は障害のある児童生徒をいかにして通常学級に適応させるのかという問題を追求していました。追求すればするほど「障害は誰にあるのか?」と自問することに。そこから、90年代に「障害は学習者ではなく、教育カリキュラムの側にあるのではないか」という視点が生まれたそうです。

 私が10数年前、勤務していた小学校の通常学級では、視覚に敏感な子どもたちのため、教室全面にできるだけ掲示物を貼らない配慮がされ始めました。これまでは時間割や係り活動表、お便りなどが掲示されていました。そういった掲示物を教室背面に移動することで、気が散らずに集中できるとの理由からでした。視覚に敏感な子どもだけでなく、多くの子どもから教室がすっきりした、集中しやすいという意見が出されました。
 また、特別支援学級では、授業で使う印字された教科書が読めない子どもに対して、この子はどうして読めないのか、視覚障害か、知的障害か、読字障害かもしれないと、人に当てていた視点で教材研究がされていました。教科書が読めないのなら、教科書を読み上げるCDを使ってみよう、点字教科書はどうかな、と様々な媒体の中から本人が適したものを選んでいく。その子に障害があるから学べないのではなく、学びの手段が、印字された教科書1つに絞られているために学べないという視点の切り替えが『学びのユニバーサルデザイン』の第一歩でなのです。
 また「学びのユニバーサルデザイン」では、「学びのエキスパート(学ぶ意欲と目的を持ち、学び方がわかり、方略的に学ぶことができる学習者)」を育てることを目指しています。

 これまでの教師や学校教育の役割は、「学習者に知識を授ける」ことでした。授業とは、字のごとく「知識を授ける業」なんですね。しかし、これからの時代は、「学びのプロセス自体を提供する」ことが重要になってくると考えます。来年から施行される新学習指導要領の目指すところとも重なるのだと思います。

 C A S T では、『学びのユニバーサルデザイン』の根拠として、脳科学が基盤にあります。親子でも、双子でも、脳は2つとして同じものは存在しません。だから、学習プロセスも一人ひとり異なるという前提において、学びのための多様な手段の必要性が裏付けられています。

 『学びのユニバーサルデザイン』という言葉を私が知ったのは、つい最近です。このように名付けられていなくとも、実践している教師・学校はあるでしょうし、まだこれからというところもあるかもしれません。現時点では一教師の裁量に寄るものが大きいのかもしれませんね。





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