【Vol.166】続・こどもが作る “弁当の日”

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竹下/子どもを台所に入れると、とにかく台所が汚れます。親が食事を作るより手がかかる。危なくてしょうがないから、向こうへ行ってなさいと言う。そういう状態が繰り返されると、料理をすることは身につけなくてもいいんだということを親が教えてくれるので、そのように子ども達は育ちます。
比良松/台所に入る事なく育った子どもは、食べる事は全部お金で済ます人になると思います。恥を忍んで出しますが、これはうちの大学生の普段の食生活です。見てください。(スライド:スナック菓子や菓子パン、パックのままの納豆、既製品のワカメサラダなど、「食事」と言えない単品の食品の写真が続く)健康志向なんですよ、ワカメとかくらげとかあるでしょ(笑)。理想は高いんだけど、自分でなんとかできないから買って済ませるんです。これで一日が終わるんですよ。
竹下/料理を作る事に子どもが関心を持つのは5才がピークです。その時期に子どもを台所に立たせないと、10才の時点で台所に立ちたいという子は100人に1人になるそうです。10年がかりで親が「台所に立たなくていい」って教えている。人間は環境に適応していく、でも、環境そのものを作り替える脳をもっている。今まで料理する事を教えてもらわなかった子どもも、今から愛情込めて向き合えば、料理する人に変っていきます。そういう方向に子どもを育てたらいいんですよ。そのためには、まず親自身が変わらないと。
中学校で弁当の日に取り組んだ子たちを追跡調査して、今年の3月大学の卒論にまとめた人がいます。それによると、「大人になって中学校時代の弁当の日をふり返って、69%がとっても良かった、31%が良かった」。上位よかっただけで100%!その中には弁当を作らなかった子も入っているんです。自分は作らなかったけど弁当の日には意味が合った、と。大人はいじめがあったら困るとか、いろんなことを心配していたけど、終わってみると、一期生はもう26才ですが、よくぞ弁当の日をやらしてくれましたという意見ばかり。ある人は、友人は全く料理ができず食事もまともにできないけど、自分はまともな食事をしている。お前なんでこんなことができる?と聞かれて「弁当の日があったから」と答えたそうです。
比良松/私、二人の娘が入っている学童保育の保護者会で弁当の日を提案したんです。そうしたら、多くの親さんが、私たちは忙しいから子どもを預けているのに、なんでこんなことをさせるんですか、って。私は「忙しいからやるんですよ」って答えたんです。子どもが料理を身につけて、お父さんの帰りが遅いから私作っておくよ、ってなってくれたら、親にとってこんなに助かる事ってないですよね。最初は大変かもしれないけど、でも、未来の事を考えると、親、子ども、家族にとってもきっとプラスになることだから、一緒にやりませんか?と。そうやって実現したら、みなさん、やってよかったって。
竹下/可哀想な子がいるから弁当の日ができないんだということを多くの大人達が言います。でも私がその子たちに言いたいのは、あなた達は可哀想じゃないってことです。可哀想じゃない、一人前になれるから、明るい未来が作れるからと言って台所に立たせて、いずれ親になると、自分の子どもに食事をつくってあげられるから。それが楽しいという事を今身につけようというのが弁当の日の大事な思いなんです。
比良松/可哀想な子と聞いて思い出すのが学童保育での弁当の日です。ある父子家庭の兄妹はいつもコンビニのおにぎりが弁当でした。ある弁当の日、お兄ちゃんが、弁当の日は土曜日だったので、「先生、今日は家に帰ってごはんを食べる」と。それを学童の先生から相談され、お父さんに、できれば炊飯器にご飯が炊けている状態でお仕事に行ってもらえませんか、とだけ伝えてもらいました。そしたら、次の弁当の日にお父さんが朝その子を起こして一緒におにぎりをにぎってくれて、それを嬉しそうに学童に持って来たということでした。我々大人は、できないと勝手に思い込みがちですが、ちょっと大人が考えるだけでもできる方法はあるんです。そういう所が弁当の日が子どもの成長をサポートしているところかなと思います。
竹下/子育てって大変だと思う。うちも子どもが小さい頃は、夫婦で働きながら子どもとの時間をとるのが大変でした。今ふり返って一番良かったのは、こどもに料理を教えたことです。多分身に付けた事を、将来次の世代に伝えて行く力を持っていると思うんです。それは、今世の中で弱っている力の一つじゃないかと思うんです。和食が世界遺産になりましたが、大学生が味噌汁を摂取する割合は、インスタントを含めて10回の食事で1回くらいです。味噌汁は日本人のくらしの中の基本的な料理の一つです。遺産という物は次に受け継ぐ人たちがいるから、遺産として相続されていくんです。特別な人、料亭の料理人だけが作れるというのではなくて、一つ一つの家庭が作って行く。それがみんなを幸せにしていくんじゃないかな。大変だと思っている子育てもちょっと見方を変えて、ちょっとした工夫を考えて、ぜひ、楽しんでいただけたらな、と思います。
(5月14日「みんながハッピーになる台所こそだて」竹下先生と比良松先生のクロストークより)
竹下和男(元校長・子どもが作る弁当の日提唱者)・比良松道一(九州大学准教授)
 
おすすめBOOK
『ひよっこ料理人』料理を作ること、食べること、ときには誰かのために作り、喜んでもらうことを通して、小さな生徒たち、そしてまわりの大人たちまで、心や表情が変わっていく。作り手側の視点で食を描く新感覚料理物語。
『玄米先生の弁当箱』生きていくために、絶対に欠かせない「食事」。国木田大学農学部講師・結城玄米が、楽しく美味しい食事の大切さを教える食育コミック! 魚戸おさむ 小学館





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