伝統野菜の「桑の木豆」のあるまちで、食文化と元気を発信
山県市 ふれあいバザール生産物直販組合長 山口克己さん
今からさかのぼること30年余り。作っても食べきれない地元野菜を生かそうと、有志が朝市で売り始めたのがそもそもの始まりでした。10年程続けるうちに、ここで野菜を買ってお茶でも飲めたらいいね、そんな会話から「ふれあいバザール」発足へと発展。当時の美山町に申請すると補助金などの後押しも心強く、スタッフが腕によりをかけた食事を提供できる食事処もできました。もちろん食材は地元食材。以来「ふれあいバザール」は地域の食文化を発信する拠点となり、地域に根付いています。
「桑の木豆は、岐阜県の飛騨・美濃伝統野菜に指定されている珍しいインゲン豆の一種です。美山町から山県市になりましたが、この地域の特産野菜をもっといろんな人に知ってほしいですね」と、現在の組合長を務める山口さん。岐阜県民でも知らない人が多い桑の木豆を広めようと、スタッフと一緒に日々奮闘しています。
桑の木豆を使って商品化された、おかず味噌、そばまんじゅう、アイスクリーム、パウンドケーキなど、現在バザールで提供されていて人気を呼んでいます。
「バザールで働く人は全員が女性。だから家族の病気や子どもの学校行事などで仕事を休む時はみんなが交代で補いあって働いています。女性が生き生きと輝ける場なんです。そして、生産者さんは自分の作った野菜が売れることでやりがいにも繋がっています。ここに野菜を持ってくるだけで、スタッフやお客さんなどいろんな人と会話ができて元気が出る、という高齢の方は多いんですよ」
バザールでは、山菜に詳しい人、明るく接客が得意な人、漬け物や加工食品作りが得意な人、経理が得意な人…。スタッフはそれぞれの持ち味を生かし、適材適所で忙しく働きます。
しかし、農産物には厳しいチェックも。栽培記録を提出してもらう。残留農薬があったり、規定外の農薬を使用した物は取り扱えない。そういう品質の管理も山口さんの仕事。必然的に生産者は土つくりから勉強することになります。それはバザールとの信頼関係を築いていくことに繋がっていきます。
地域で採れた新鮮な野菜や、それらを使った料理の味とともに、個性豊かなスタッフや生産者、いろんな人たちがふれあう和やかな雰囲気は口コミで広がり、県外からも多くのお客さんが訪れます。
「現在働く女性スタッフは50代から70代です。年輩の方は若い人と一緒に働けることを喜び、若い人は先輩から知識、経験、料理方法など多くのことを学んでいます。今後の課題は次の世代にここを引き継いでもらうこと、かな。今はとにかく忙しい日々だけど、ゆっくりできるようになったら、花を育てたいなぁ」
その笑顔には組合長ではない、素の山口さんの顔が覗いたようでした。
桑の木豆(くわのきまめ)
岐阜県山県市(旧・美山町)で、昔から自家用に育てられてきた地方野菜。岐阜県の「飛騨・美濃伝統野菜」の認証を受けている、インゲン豆の一種。収穫時期が10月頃で、台風による倒伏の予防のために昔から桑畑が多くあった美山地域で、桑の木に絡ませて栽培されていたことからその名がついた。完熟すると、さやや豆に赤くかすり模様が入り、目に鮮やかな豆になる。このように色づくのは美山地方の豆だけ。完熟した豆は、さやごと乾燥し保存。水でもどして調理するときは、さやごと使われる珍しい豆である。
ふれあいバザール/人気の定食
岐阜県山県市船越416-13
営業時間:10:00~14:30 定休日:月曜日、第3日曜日