毎年この季節の畑にはウットリします。というのも小さな命がたくさん出てくるから。カエルやミミズ、てんとう虫、ミツバチなどの小動物、そして目には見えないけど活発になる微生物さんたち。中でも花菜は格別命を感じさせてくれます。
何度も何度も取られてもそのたびに新しい花芽を健気に伸ばすお野菜さんたちに心から「ありがとう、ごめんね」と言いながら、今日も私はせっせと摘ませていただいています。
寒い冬をじっと耐え忍んでいたお野菜たちは春のお日様の力を感じると一気に花芽を出し始めるんです。それは自分の子孫を残そうとして花を咲かせて種を飛ばそうとするから。いわゆる菜花と呼ばれるもの以外にも小松菜、白菜、大根の花芽、ブロッコリーの脇芽、珍しいものではネギ坊主。そんなのもとても美味しいんですよね。
野菜さんの立場に立ってみれば花を咲かせて種を結ぶ直前に私に取られちゃうわけですから「結婚式前夜に手折られるようなもんだ」とは師匠の言葉。
それでも「その野菜が自分の力を振り絞ってエネルギーと栄誉をためて創り出した花芽という場所。そこをいただくということは本当にその野菜の命をいただくということ。こんなにもありがたいことがあるだろうかと思うと毎回泣けてくるんだよ」とも言われました。
消費者である私たちは他の命を常に手折って生きている。そこを忘れないようにしたいなと。想いを新たにする春の畑です。