vol.187 ボーダーレス社会をめざして vol.46

NPO法人オープンハウスCAN 理事長 伊藤佐代子

 

声なき声

「その“あざ”どうしたの?」「たたかれた」「誰に?」話を聞いていると、働いている所でたたかれたようです。これは、私が入浴介助の仕事に入っている時の話です。テレビで、障がい者施設で暴力を振るわれている映像が流されたことがあります。遠い所で起きている事ではありません。身近にある話なのです。
一方的に聞いただけで、何が真実かは定かではありませんが、さっそく相談支援センター(介護保険のケアマネージャーに相当する相談員)に電話をしました。私には通報義務がありますし、暴力を受けたその方を守るためだからです。その相談員の方は、次の日にその人が行っている事業所をアポなしで訪問してくれました。強気でいたその事業所の方が、“あざ”の事を話すとおとなしくなったとか?その後、行政にも報告をしたそうです。近い将来その事業所は行政処分を受けるだろうと思います。
言っても分からないからたたく???平成24年には「障害者虐待防止法」という法律ができてからの対応としては、信じられません。時代錯誤としか思えません。障がいのある人は虐待されていても、虐待だと認識できない場合があるので、自分から被害として訴えられないことがあります。その障害者虐待防止法は、虐待に気付いた人は、行政の担当窓口への通報義務を謳っています。早めの対応や支援が、虐待されている人の問題の解決につながるからです。虐待防止法は、虐待によって障がい者の権利や尊厳がおびやかされることを防ぐ法律です。虐待例としては、身体的虐待・・・障がい者の体に傷や痛みを負わせる暴行を加えること。また正当な理由なく身動きが取れない状態にすること。
・性的虐待・・・障がい者に無理やり(また同意と見せかけ)わいせつなことをしたり、させたりすること。
・心理的虐待・・・障がい者を侮辱したり拒絶したりするような言葉や態度で、精神的な苦痛を与えること。
・放棄・放任(ネグレクト)・・・食事や入浴、洗濯、排せつなどの世話や介助をほとんどせず、障がい者の心身を衰弱させること。
経済的虐待・・・本人の同意なしに障がい者の財産や年金、賃金を使うこと。また障がい者に理由なく金銭を与えないことなど、たくさんの虐待例があります。 あってはならないことですが、現実にはある虐待です。声なき声をいかにすくい取るか、周りにいる人の務めだと思います。