NPO法人オープンハウスCAN 理事長 伊藤佐代子
自分の展覧会
息子は40歳の自閉症スペクトラム障害(最近はこのように言います)。7月に本人の希望で絵の個展を開きました。展示、キャプション作り、お客様の案内など本人が主になり行いました。開催当日までカウントダウンのメールが、毎日私に届き、「お母さんとお父さんは見に来て下さい」と言い、本当に自分一人でやるつもりのようでした。知り合いの方にも「来て下さい」とお願いをしていたようです。今までの展覧会ではなかった姿です。きっと今までは、私に展覧会をやらされていたのでしょう。自分の好きな絵をすべて展示できるということは、彼にとってすごい喜びだったようです。これまでは、私が展示する作品を選んでいました。今回はすべてOKとし展示の方法もすべて本人に相談し、本人が好きなように額に入れました。息子の作品展ですから好きなようにやればいいのだと・・・。やっと私がそんな気持ちになりました。するとこのように楽しみにする展覧会になったのです。
支援する人の自己満足ではいけない、支援する人の思いが一番ではいけないということがよく分かりました。もう嬉しくて嬉しくて仕方がない、ニコニコと久しぶりに見る笑顔でした。やっと思い通りの展覧会ができたのだなぁとちょっと反省しました。展覧会が始まると、来て下さったお客様に絵の説明をしていました。長時間、会場にいなくてはいけなかったのですが、静かにご来客を待っていました。
その中で印象深かったのは、会社の方が見に来て下さったことです。最初、会社には案内状は持って行かないと言いはっていたのですが、途中から店長さんだけに持って行く、次にブレークルームに案内状を置かせてもらうと本人が考えなおしていきました。たぶん、会社と自分の趣味の世界とは違うと考えていたのだと思います。しかし、案内状を会社に持っていったお陰で、会社の方が来て下さいました。メッセージの中に「いつも裏方のお仕事でお店をささえてくれてありがとう。」と書いてありました。なんと嬉しい言葉でしょう。お話をさせてもらうと皆さんに見守られながら、可愛がって頂いているのがよく分かりました。我が家とは全然違う一人の社会人としての息子の様子を聞くことができました。
もう一人幼稚園、小学校とよく遊んでくれた同級生が来てくれました。彼は毎回、展覧会を見に来てくれます。「絵が少し変わって来たね。進化してる」って。
展覧会は、作品の発表の場とは言いながらも、息子の大好きな人たちとの良い出会いの場にもなっていました。笑顔笑顔の息子を見ることができた展覧会は、最高でした。