【Vol.166】記者雑感 From気仙沼 連載19

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7560億円。気仙沼市がこの春試算した復旧・復興に必要な金額だ。既に終わった物も含まれている。震災前の一般会計当初予算が約280億円だった自治体に、27年分のお金がつぎ込まれようとしている。港や道路、下水処理場などが一気に壊れたのだからある程度仕方ないとはいえ、途方もない金額だ。これはあくまで市の事業で、震災を契機に一気に工事が進んだ三陸道は国、同じく本土と離島・大島を結ぶ橋建設は宮城県の仕事なので、もっと多くの金が被災地には使われている。
それにしても不透明なのが、「復興」と「復旧」の意味だ。「復興」は高台移転や区画整理など、新しい街を作る内容が多いのでまだ分かる。一方、「復旧」が怪しい。全く同じ状態に戻すと聞いていたが、震災前に1.8メートルだった防潮堤を5.2メートルに上げるのも該当するのだという。そして、新しい工事ではないから環境アセスは不要、となる。また、震災遺構として残すつもりの気仙沼向洋高校跡地に、市は資料館を新設する。少し離れた所で津波に壊された観光施設の「復旧」として国から金が出るそうだ。たしか「遺構は教育施設」と定義していたはずだが……。

 
6月1日号の市広報と一緒に、市内の4地区・数千世帯に各地区の津波避難地図が届いた。その一つ、唐桑半島の中井地区のを見て驚いた。避難場所に「小野寺一平様宅北側(20.6メートル)」「小山良悦様宅西側(36.3メートル)」などと個人の家と標高が載っている。避難経路には「傾斜がきつい」「ブロック塀倒壊のおそれ」といった注意書きも。行政が机上で知り得ない地元住民の体験と意見を採り入れた。いいできだ。今年度中に全14地区分を完成させるという。
市の担当者によると、2014・15年度で予算は2600万円。「防潮堤や広い避難道がない状態で、今回と同じクラスの津波が来ても助かるように作った」という前提を聞いて、少し混乱した。じゃあ地図が行き渡れば、海岸の巨大構造物も立派な道路もいらんのやないの?幸い、気仙沼にはまだ着工していない事業がたくさんあるんだし。
集中復興期間(11〜15年度)が終わった後の財源を地方自治体が一部負担することになり、沿岸の市町は慌てている。そもそも、無人島を防潮堤で囲う(塩釜市)とか、人口100人の島に100億円の橋を架ける(女川町)という行為自体が変だった。自分の金ならやらないけど、人が出してくれるから作っちゃえという発想。無論、どちらも税金なのに。

 
2012年に岐阜から赴任しました。がれきの片付けは震災後3年で終わり、高台移転先の造成や水産加工会社の再建なども少しずつ進んでいます。それでも「元の生活」に戻ることは決してありません。現地で見聞きし、思ったことをご報告いたします。    現役新聞記者(宮城県・気仙沼在住)





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