vol.184 夢か悪夢かリニアが通る! vol.13

さよなら椿魚市場

JR名古屋駅西口近くで戦後約70年にわたり市民に愛されてきた「椿魚市場」が5月末、営業を終えました。JR東海が進めるリニア中央新幹線の名古屋新駅建設のため、立ち退かざるを得なくなったからです。最後まで営業したのは、マグロ専門店など7店。「長い間ありがとうございました」「体に気を付けてね」。場内には、店員と客が互いを労わり合う声が飛び交いました。 ジャーナリスト・井澤宏明

最終日の営業をほぼ終え、記念写真に収まる椿魚市場の人たち(5月31日)

戦後の露店から70年
戦後、椿神社周辺の露店からスタートした同市場。1950年ごろには、神社向いの約500平方メートルの敷地に木造の市場が建ち、30店余りが入りました。
東海道新幹線の開業(64年)に伴う区画整理で3分の2になった敷地に、鉄骨造りのビルが完成したのは67年のことです。
親子2代続く店も多く、家族同然の付き合いを続けてきました。トラックが来れば、手が空いている人は皆で魚介を降ろします。
リニア予定地にかかるのは市場のほんの一角。残った土地で商売を続けたいという人もいましたが、高齢の店主が多いため、土地を売って7店とも店を畳むことを決めました。
「魚富」の橋本博さん(84)は新制中学を卒業し、17歳からこの市場で働いてきました。「65年もやった商売やで、ぱっとやめよと言われても寂しい」とこぼします。リニアについて問うと、「我々高齢者には何の魅力もないな。忙しい人はいいだろうけど、新幹線でも速過ぎるぐらいだもんね」。
長男の隆夫さん(55)は「仕方がないですよね。サラリーマンの方でもリストラや倒産はあるので」と忙しく包丁を動かしていました。翌日から、別の市場でアルバイトをしながら、お得意さんへの配達を続けています。
新駅工事で立ち退き対象となる地権者は駅東西の約120人。「一日でも長くおりたい」と立ち退きに応じていない家もあります。
椿神社の杜の一部も予定地にかかり社殿も移動する必要がありますが、氏子の一人によると、土地を交換するか売却するか、まだ結論が出ていないそうです。

大深度地下から脱出できる?
名古屋市や春日井市では5月、リニアの大深度地下トンネルの住民向け説明会が開かれました。地下40メートル以上の深さの「大深度地下」使用認可を国土交通相に申請したことから行ったものですが、説明会開催の告知をトンネル上の住民に戸別に行わないで、自治体の広報誌や回覧で済ますなどずさんな対応が明らかになり、各会場で不満の声が上がりました。
10日に名古屋市東区で開かれた説明会には約130人が参加しました。会場には、JR東海の若い社員が大勢詰めていましたが、これらの社員がルート上の家を戸別に回ることがそんなに難しいとは思えません。
説明会では、地震などで緊急停車したとき、大深度地下から地上へどのように避難するのかを巡り、参加者から様々な疑問が投げかけられました。
JR東海によると、緊急時には車内からハシゴと階段でトンネル下部の避難通路まで降り、最寄り駅か約5キロごとにある非常口まで歩いて移動、エレベーターや階段を使い地上に脱出します。
これに対し、「乗客全員が避難するのに何時間かかるのか」という質問が出ましたが、担当者は「避難通路はしっかり加圧して火や煙は入ってこない構造になっており、避難の時間は関係ない。ゆっくりでいい」と回答。他の参加者から「乗客がパニックになる可能性がある。慌てなくていいと言うのは不親切だ」と指摘され、「開業までに、訓練を通して避難時間を決めていきたい」と答え直す場面もありました。
「車いすなどの障害者はどうするのか」という問いに対しては、「乗務員が背負って降ろす。乗客にも協力していただく」との答え。歩行困難な乗客を避難通路から車両で救出する計画も示しましたが、大深度地下でのバリアフリー対応が極めて難しいことをうかがわせました。
大深度法によると、国の認可を受ければ、大深度を地権者への補償なく使用することができます。JR東海は東京、神奈川、愛知の3都県の計50・3キロで大深度の使用を計画しています。

最終日もいつもと同じようにマグロをさばいた(宇野商店で)

 





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