ビランジ Melandryum keiskei 原産地:日本(本州中部の山岳地帯)日本特産種 撮影:長屋泰郎
ビランジ(ナデシコ科)は、本州の山地の日当たりのよい岩場に生える多年草。高さは10~30cm程で、若い茎や若い葉の色は暗赤色である。夏に赤紫~ピンク色の直径2cm程度の花をつける。
長野県が西限とされている高山植物で稀少種のビランジの群生地が、1999年、板取村川浦のダム建設予定地だった近くで見つかった。発見者は地元の自然愛好家・長屋泰郎氏。植物地理分類学会会員の故・成瀬亮司さんによると、「ビランジは長野県の伊那谷などの深山にまれに見られる多年草で、淡いピンク色のちいさな花をつける。ビランジの群生地はおそらく岐阜県内でははじめてで、ここが本州の西限となるのではないか。板取村の急しゅんで深い谷は、日射が少なく冷涼な環境のため、高山、亜高山性植物が残存できたようだ。山系一帯をよく調べて、貴重な種は保全すべき」と話した。当時、大規模な揚水発電所の計画がすすんでいた。(関連記事:環境特集Part-1)
船頭 高橋由香子さん
船ことばっておもしろいんですよ。
岐阜市内を流れる長良川。鏡島大橋と下流の河渡橋の間、岐阜市一日市場(ひといちば)の右岸堤防上に船頭小屋があります。ここにちいさな看板があり、小紅の渡しの由来、利用時間や休航日、乗船心得などが書かれています。
かつて岐阜市の長良川には、それぞれその土地の地名がついた12から13ヶ所の渡しがありました。しかし、そのほとんどに橋が架かり、姿を消していくなかで、たった一つ残った「小紅の渡し」。遠い昔につけられた名前は地名ではなく、そのいわれも定かではありません。
「小紅という名の由来は3つの説があります。1つ目は、乗り場に紅を採る草が生えていた。2つ目は、川を渡る花嫁が水面に顔を映して紅を直した。3つ目は、お紅という名の女性の船頭がいた、など。人それぞれの思いで解釈し、由来はハッキリしなくてもロマンがありますよね。」
「それにしても、船ことばっておもしろいんですよ。基本的に船頭の世界は口伝。独特な話しことばがあります。たとえば、船を縛るのを「しって」(長い手)。船を捕まえることを「とって」。一音一音に意味があるんですね。そんなことばの由来にはまって、いろいろ調べてみました。「あか」は水のこと。「あ」は天で「か」は動くと言う意味。あかは船にたまる水のことを指すのですが、天から動いてきたもの「風」「水」なんでしょうか。わたしは鵜飼観覧船に20年ほど船頭として務めましたが、「鵜のみにする」ということばも、鵜は魚を丸呑みにしますので、まさに鵜飼から来ているんですよ。また、鵜匠さんたちは「まわし場」と呼ばれる待機場所で漁の開始を待つのだそう。今でも段取りを整えることを「まわし」といいますよね。今の暮らしと、伝統的な文化や、口伝で伝えられていることばがリンクしていて興味が尽きません」。そう語る高橋さんのお話しは多岐にわたります。
移動手段はもっぱら徒歩
高橋さんは以前はバイクに乗っていましたが、自転車に変え、今では歩くことを基本としています。緩やかな時間がとても気に入っていると。渡し船のゆったりした時間も同じかもしれません。同時に視点が変わると風景も変わります。川面に遊ぶ水鳥、川面に映る雲のかたち、堤防を走る車、その遠くには金華山・・・普段なにげに映る景色も、船から見ると趣も変わる・・・。ちょっといい時間。小紅の渡しの上には鏡島大橋、下には河渡橋が架かってはいますが、小紅の渡しを利用する人は、毎月21日にある弘法さまの命日に鏡島弘法への参拝客だったり、レンタサイクルで周辺を走る人が利用したり、さまざま。あくまでも、県道の一部としての利用が基本。風情と実用を兼ね備えた小紅の渡しは、現代のめまぐるしく変わる状況のなか、古き良き時代へとタイムスリップしたような感覚になりました。
女船頭としてキャリアを積んだ高橋さんは、仲間がいればこそ、とも言う。男社会に女性がなじむのにやはり時間は必要だった。同期に女性が4人いたからここまでこられたと。しかし、移動手段を基本『歩き』にシフトした高橋さんには、流れる時間を楽しむ、という想いにぶれはない。
小紅の渡し
運航時間 4月~9月 8:00~17:00
10月~3月 8:00~16:30
料金 無料
休航日 毎週月曜日及び12/29~12/31
ただし、月曜日が祝日もしくは21日と重な る場合は、その翌日を休航日とする。(悪天候、 増水時は欠航となります)
乗船場所 北岸:岐阜市一日市場
南岸:岐阜市鏡島(鏡島弘法 乙津寺 北)
お問合せ先 岐阜市土木管理課 058-214-4719