vol.182 ぎむきょーるーむ 続・10代の食生活これでいいのォ?

日本消費者連盟代表運営委員・富山洋子さんに聞く

いつまでも“ふっくら”コンビニおにぎり

食べやすくて、携帯食として人気のあるコンビニおにぎり。しかし、このおにぎりには予想以上に添加物がたくさん!半日以上立ってもふっくら柔らかく、のりも包装からするりと抜け、パリッとした歯ごたえ。まさに添加物のはたらきなのです。

表示だけではわからない

表示は使用量の多い順に書かれています。「塩飯」「ツナマヨネーズ」「海苔」のように、すでに調理済み・加工済みの材料についてはその名称のみでよく、それに使った調味料などの添加物を表示する義務がないので、そこに含まれるぶんを合わせるとかなりな量の添加物が使われていると推測されます。
さらに「一括表示」として同じ目的に使用されている添加物はまとめて「ph調整剤」などと表示すればいいことになっています。表示の最後に「原材料に小麦、大豆を含む」とありますが、この大豆は、輸入されたもので遺伝子組み換えのものを使っている可能性が大きい。

長持ちサンドイッチのナゾ

賞味期限は、おにぎりは26時間。サンドイッチは29時間となっています。柔らかいパンは水分を吸ってビチャビチャになりやすく、ハムやキュウリは変質したり腐ったりしやすいもの。それなのにおにぎりより長持ちするなんてよほど無理をさせているということでしょう。

ファミレス・ファストフード

これら外食産業の多くが輸入食品。このところ話題となっている中国産の野菜のように、日本では許可されていない添加物が使用されていることもあり、その安全性が問題になっています。また、日本ではジャガイモの芽止め以外に使用が禁止されている放射線照射食品も入りこむことがあります。安全性にかなり問題ありです。

「有機」「地場産」って・・・・・・

さて、メニューに『有機野菜』と書いてあるものは安心だと思う人もいるでしょう。有機野菜とは、栽培期間だけでなく、種まきや苗の植え付けをする2〜3年以上前から化学肥料や農薬を使っていない土地で栽培された農産物を指します。そして「有機(オーガニック)という表示は、農林水産大臣から認可を受けた第三者認証機関が生産工程を検査して、厳しい企画に合格した農産物だけに認められ、「有機JISマーク」をつけることができるものなのです。
「特別栽培農産物」というのもあって、農薬や化学肥料をまったく使わない、あるいは、ふつうの栽培法より農薬の使用回数や化学肥料の使用量が半分以下の夫野を言います(かつては「減農薬」「無農薬」という表示もありましたが、現在はそういう表示をしてはいけないことになっています)でも、調理されたものには原材料名や添加物を表示する義務は法律的にもないので、不確かになりがちです。
また、サラダなどのカットされた生野菜は消毒液につけているかもしれないので、野菜だからといって身体にいいかどうか不安です。もう一つ、「産直野菜」「自社農園」「地場産」「契約農家直送」。どこから来たって「産地直送」。本当かどうか私たちには確かめようがありません。こうした言葉にだまされてしまうのは、食べ物の物語を知らないから。それがどのような風土で、誰の手によって育てられたものかについて、私たちがあまりにも無関心だからなのでしょうね。

 

食べ方を押しつけられて
そもそもジャンクフードってなんでしょう?添加物がいっぱいのもの?ファストフード?ジャンクフードか否かは、食べることの関係性の中で位置づけられるとわたしは思います。食べ物はきわめて「個」にかかわってきます。と同時に社会のあり方に深くかかわっています。たとえば放射線照射食品は、肉や野菜を腐らせずに戦地に運ぶために軍事用に開発されたもの。学校給食も一般的になったのは戦時中で、銃後を守る小国民を養うためのものでした。戦場ではまさに食べ物は兵力を養う大切なもの。軍隊がまず現地でしたことは、食べ物の略奪です。そこに暮らしていた人たちのいのちや家や畑を踏み荒らし奪い取った食べ物を食べ、生き延びた兵隊さんたち。彼らが口にしたものは添加物にまみれていない、人々の命の糧となる生きもの、丹精込めて育てたものでしたが、それらは、いまでいうジャンクフードよりつらい食べものだったに違いありません。このように、戦場でも現在の食卓でも、奪い取ることをふくめて、個人が望んでいないのに、社会や国から食べ方を押しつけられることがいちばん問題だと思います。押しつけられて食べざるを得ない、それがいうならジャンクフードの本質だと、わたしはとらえています。(富山洋子)

 

C O L U M N

添加物の魔力をどうする?

情報過多の時代ですが、食べ物の選び方・食べ方を変えられない、変えようとしない。みんな、「わかっているけどやめられない」のはなぜか。それは添加物のメリットがあまりにも大きすぎるからです。添加物のメリットは「安い」「(調理の手間がかからず)簡単」「(24時間いつでも買えて)便利」「(見た目が)きれい」「おいしい(味にしたてることができる)」という5つに集約できます。
「知らなかった」という方もいらっしゃるかもしれませんが、裏側の表示を見れば全部書いてあります。うすうす気づいているのに、確かめようとせず、そういう食べ物を子どもに食べさせ続けるのか。それは、多少の犠牲を払っても、目先の5つのメリットを得たいからでしょう。結局、人は楽ということが好きなんです。でも、子どもの健康を犠牲にしてまでも、添加物によって得られるメリットがほんとうにいいのかどうか。「安いし簡単だし、おいしいからまぁいいや」では、もはや価値観の崩壊でしかない。崩壊した価値観のもとで育てられた子どもの心と体は、いったいどうなるのでしょう。

子どものときから食べ慣れた” つくられた”味

子どもたちが添加物がつくりだすおいしさの虜になるのは、なにも小学生、中学生になってからではありません。じつは、カップラーメン、スナック食品などの”ジャンクテイスト好き”になる下地は、乳幼児のころから家庭の食卓でつくられています。
一般的に体にはあまりよくないと思われているカップラーメン・スナック類と、いまやどの家庭でもあたりまえに使っているだしの素、スープの素、調理用タレなどとは、添加物の基本構造が同じ。食品裏の表示をみればすぐにわかりますが、共通するのは、「食塩」「化学調味料(アミノ酸)」「たんぱく加水分解物」・・・・これが加工食品の「黄金トリオ」、うまみのベースです。この黄金トリオの配合比率をさまざまに変え、そこに香料やエキスを混ぜることにより、どんな味もつくりだすことができる。こうした手軽に使える”○○の素”の味をわが家の味として、乳幼児のころから教え込んでいるのだから、やがてスナックやカップラーメンに出会ったときに、慣れ親しんだ味と同じものをそこに見いだし、やめられなくなるのです。

(安部司) 食品ジャーナリスト。食品業界の裏側を公開する『食品の裏側—みんな大好きな食品添加物』(東洋経済新報社)を出版し大きな反響を呼ぶ。

晴れときどき、ジャンクフード

自分の食べ物の芯をどこにもつか

エッセイスト  山本ふみこ

お楽しみ路線でいこう
ジャンクフード、ファストフード。それぞれの家の食の番人たち(多くは母親)は、かなりその安全、味覚への影響を心配している。食べる一方の立場にある人たち(多くは若者)にしても、ジャンクフードに味覚をひっぱられ、ファストフードに舌をならされていくことを、潔しとしていない。ほどほどにしないとなあ、とか。でも、しかたない面もあるんだよなあ、とか。
問題はどうやって、日本の食べ物(食べ方)、昔の味をとりもどすか。
ゆっくりがいいんじゃないかと、思う。

勘と眼力を鍛えて
おやつには、芋や野菜、くだもの、乾物類、餅、ご飯を使ったものを食べるのが好きだ。それにご飯と味噌汁中心のごはん。だけど、たまには、ジャンクフードによろめき、ファストフードに遊ぶ。
大事なのは、それぞれ自分の食べ物の芯をどこにもつか決めること。勘とか眼力を鍛えて、食品を選ぶこと。
いま、自分が考える理想の芯と、食生活がずれすぎているな、という人だって、ゆっくり理想に近づけばいい。てくてく歩く速度で、無理しないで。
てくてく歩きのあいだに、理想のおやつ、理想のごはんを、むずかしく考えていたことに気づくはずだ、自分の描く理想って、素朴ってことか?という具合に。もしかしたら、食べすぎていたことにも、気づくかもしれない。
事を急ぐと、頭でっかちになり、おやつとごはんを簡単にやさしくこしらえる面白さを味わえなくなる。たまには、どうしたって世話になる、コンビニやファストフードの位置づけが見えなくなる。

やまもと・ふみこ
1958年生まれ。エッセイスト、作家、著書に『わたしの葬儀』(晶文社)『人づきあい学習帖』(オレンジページ)『台所あいうえお』(バジリコ)『子どもと一緒に家のこと。』(ポプラ社)『家族のさじかげん』(家の光協会)など多数。