vol.180 ぎむきょーるーむ 「家事」を子どもが身につけるには


洗濯
・上履きを水につける。持ち帰ったらその場で水につけておくと、汚れが落ちやすくなります。
・下着や衣類の下洗い。女の子だったら生理で汚れた下着、スポーツをしている子だったら砂まみれになったウェアなど、そのまま洗濯機に入れたら汚れが落ちない。汚れは固形石けんをつけてこすればOK。

食事
・調理時の助手として。調理中は手が離せないことも多いです。野菜の皮をむく、切るなど。
・盛りつけ。楽しんでできることの一つ。その子のこだわり、センスが活かせます。
・食器をさげる、水にひたしておく。自分のぶんをさげるとき、家族の食べ終わったものも、いっしょにさげる。
(弁当箱も同じ。これは家族の仕事ではなく、「自分のことは自分で」の領域。)

 

掃除・かたづけ
・ほうき、はたきを活用。掃除機を出すまでもない空間なら、さっと手にとって使えキレイになります。
・出したらもどす。片付かないと悩むより、「出したら元の場所にもどす」を基本に。
・風呂に入り終わったら換気扇もしくは窓を開けておく。
・最後に入ったら栓を抜き、湯垢がつくあたりをスポンジでさっと拭く。(洗濯に残り湯を使う場合はしない)

 

 

10歳前後 性差についての語り方  岡崎 勝
男性の家事を頼りにできる日常があれば
母親にしてもらうことに慣れてしまうと
「男尊女卑」「性別役割分業」という過去の遺物にしがみついているのは、どちらかというと年齢にかかわらず男性が多いのではないでしょうか。
10歳のころの子どもたちはある部分については家事への興味関心は高いので、いっしょにお菓子作りなどすることにはやりたい気持ちをもっています。大人と同じことができるという喜びだったり、親といっしょに過ごす時間が楽しかったりします。
ふつうに家事労働に男女平等意識を持つことは、子どもたちにとって重要です。とくに男の子を参加させることは、とても意味のある、生きるためのスキルを身につける大事なことなのです。
男性が家事労働を忌諱(きき)し、妻など女性にそれを「してもらう」コトになれてしまうと、あきらかに自立から遠ざかります。母親依存、妻依存という男子・男性にいいことはなにもありません。「濡れ落ち葉」「ついてく男」「家庭内生ゴミ」「留守がいい」などと揶揄され、惨めな生活を送ることをなんとも思わない男子・男性は別ですが。

誰でも、やってあたりまえ
もし家族に父親がいるのなら、彼が家事に向き合っている姿をしっかりとみせなくてはなりません。風景のなかに「お父さんが家事をしている日常」があれば、その中で育った男の子は、家事が好きかどうかは別ですが、「家事は家族誰であっても、やってあたりまえ」ということが理解できます。
お父さんがいなくても、家族の協働性はとても大事です。「とてもうれしい」とか「大きくなったから助かる」と頼りにしていることをきちんと伝えるべきでしょう。
お母さん同士の集まりで「夫が今日は休みなので、お昼とおやつを用意してから来たのよ」などといっているのを聞くと、「こりゃーダメだ」と思います。なにがダメか?家族に男の子がいたら、将来いっしょに住んでくれる女性を捜すのはたいへんでしょう。女の子だったら、こんなめんどうな世話をしなくちゃならない男との結婚なんてしないでしょ。
以前、若い女性から「岡崎センセー、誰かいい男いませんか。できれば、家事育児にちゃんと参加してくれる人ですけどね」といわれることがありました。しかし、最近はそういう声すら聞きません。なぜか、そういう「いい男」はすでにゲットされていて、「カスといっしょになるくらいなら結婚なんてしません」というのです。
イクメンなどという言葉が一人歩きしていますが、男が家事をやるのはふつうの時代なのです。(小学校教員)

 

思春期前後 適切な労働対価を 山田 真(小児科)
働ける環境をつくることから
今も役に立っている経験

「昔の子どもはお手伝いをしていたのに、この頃の子はしない。お手伝いさせるべきだ」という人がいます。それで「お手伝い」が学校の宿題になったりします。宿題としてだされると、お母さんが「なにか手伝うことないかしらね」と探すことになります。親が手伝って欲しいと思っていないのに無理に手伝いをさせても、子どもが手伝った喜びを味わうこともないでしょうし、こんな手伝いに意味があるとも思えません。
昔の子どもたちがしていたのは、家事の分担でした。大家族で父母ともに働いている場合、子どもが家事の一部を担わなくてはならなかったのです。僕自身は田舎の開業医の一人っ子で家族は三人でしたが、小学校のころから食材の買い出し係をしていました。看護師さんはいないので、看護師資格のない母が看護師がわりで父の診断を手伝っていました。
ですから、食材の買い物はぼくがしなければならなかったのです。このおかげで、ボクは買い物が好きになりました。いま、連れ合いとの生活で家事分担をしていますが、買い物好きになったことが役に立っています。

子どもの仕事は勉強?

しかし、こうした経験は60年代以上も昔のこと。いまはたいていの家庭で子どもが家事を分担する必要がなくなっているようです。
子どもは労働などせず、勉強をしていればいい、子どもの仕事は勉強と考えられているのが、いまのこの国の状況と思いますが、ぼくは少しちがいます。
中学生の年齢だったら、学校へ行きたくないとき、学校がつらくなったとき、働けるといいと思うのです。たとえば、保育園で働くというようなことは、中学生でもできます。働くという選択肢が認められていないからひきこもるしかなくなるともいえます。
ですから、ぼくは「お手伝い」でなく、子どもでも対価がもらえるような『労働』をできるようにすることを提案しておきます。

やまだ・まこと   小児科医。八王子中央診療所所長。「子どもたちを放射能から守る全国小児科医ネットワーク」代表。『お・は』編集協力人。