vol.178 ボーダーレス社会をめざして-vol.37


NPO法人オープンハウスCAN 理事長 伊藤佐代子

二人のおじいちゃん
私が胃がんの手術をしてから、5ヶ月後に私の父が、その3ヵ月後に義父が他界しました。相次いでおじいちゃんが亡くなり、淳司はどんな反応を見せるのか?未知の世界でした。息子は、葬儀の際一般の方と何ら変わることなく静かで、お焼香も周りの様子を見ながらし、お棺を運ぶ時は誰にも言われなくても自分から動いていました。そんな姿を見て、「よくここまで成長したな」と思ったくらいです。二人のおじいちゃんは、淳司を本当に可愛がってくれました。彼にはかけがえのない人でした。何も問題なく葬儀などは終わったのですが、しばらくしたら淳司に変化が起きました。私たちは、父が具合が悪く死期が迫っているのは分かっていて、覚悟は出来ていたのですが、自閉症の息子には何も分からなかったのだと察します。葬儀などの儀式がばたばたと続き、分からないまま時間が過ぎていったのでしょう。自閉症の人は、見通しがつかないと不安になると 言われます。息子に説明をしている時間などありませんでした。当事者ですからどのように葬儀を済ませるか、終わった後どうすればいいのか、そんなことで頭の中はいっぱいでした。それにもまして、がんの私は自分の事でいっぱいいっぱいでした。息子は義父が亡くなってから、少しづつ自分の部屋から出ようとしなくなりました。部屋にこもり、お昼でもカーテンをしたまま一日を過ごすようになりました。どこかに出かけない?と誘っても全然反応なしでした。あれだけ旅行や出かけることが好きだったのに、ただご飯を食べるためだけに自分の部屋から出るという生活が半年くらい続きました。ただ、幸いなことに仕事にだけは行ってくれていました。しかし、会社からジョブコーチに電話があり、ボーとしている時が多く、やる気があるのか?と連絡があったようです。その理由をジョブコーチに話し、会社に伝えてもらったということがありました。静かな時間が過ぎたなと思ったら、今度は自分に気に入らないと私に怒ってくるということが増えてきました。そんな時、偶然に障害者支援の本の中に、身近な人が亡くなると喪失感があり、その回復には数カ月を要する。「非哀のプロセス」否認、絶望、脱愛着という3段階を経て、自分の内面をいたわり態勢を立て直しを図っていくと書かれているのを見つけました。見守るしか方法がないというのを知り、淳司は淳司なりに苦しんでいたのだなということが分かりました。その後、徐々に回復し現在はお墓参りが彼の仕事になりました。「天国のおじいちゃんは喜んでいますか?」「おじいちゃ~~ん」と天に向かい叫んでいるらしいです。





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