vol.177 トラスト活動って知ってる?

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日本のナショナル・トラスト
日本のナショナル・トラストがはじまったのは、高度経済成長期まっただなかの鎌倉でした。以来、全国にナショナル・トラストの輪が広がり、将来世代に引き継ぐべき日本の豊かな自然が、幾多の開発から守られています。

市民による初めての土地の取得
1960年代の高度経済成長期、各地でさまざまな開発計画がたてられ、多くの自然豊かな場所がその対象となりました。古都・鎌倉においても、鶴岡八幡宮の裏山である「御谷(おやつ)の森」が宅地開発の対象となりました。行政による解決が難しかったことや、一刻も早い対応が必要であったことから、御谷を守りたい鎌倉の市民が立ち上がり、英国で取り組まれていたナショナル・トラストを取り入れて募金活動をはじめました。1964年のことです。そして2年後、市 民からの寄付金900万円と、鎌倉市からの600万円を合わせた1,500万円で1.5haの土地を買い取り、御谷の森を守ることに成功しました。

全国に広がるナショナル・トラスト
現在では、全国50以上の地域で、それぞれの風土に根ざしたナショナル・トラストを展開しています。活動分野も、土地や建物の取得をはじめ、普及啓発や環境教育、まちづくりなど、多岐にわたっています。

トラスト活動の必要性
守られている本来の自然は国土のわずか5%。日本は国土の70%は森林で、一見、自然が多く残っているように感じられますが、その40%はスギやヒノキが植林された人工林です。植林地を含まない自然の森や草原など、本来の自然は、国土の20%しかありません。そして、そのわずかに残された本来の自然も、法律等で保護区に指定され、確実に守られているのは国土のわずか5%※です。
※環境省第2~5回自然環境保全基礎調査植生調査及び国土交通省 数値情報自然保全地域データ等より

行政の取り組みを補う民間の活動
豊かな自然や美しい風景を守るため、行政によって公有地化や国立公園などの保護区の指定が進められています。しかし、重要な自然でありながら、保護区に指定されていない場所や、国立公園など保護区でありながらも私有地も多く含まれ、いつ失われてしまうかわかりません。このような、行政だけでは守りきれないところを、民間によるナショナル・トラスト活動で自然地の保全と再生を進めていくことが必要です。

山や森が荒れる原因のひとつ?
山の地主のひとりごと…として聞いてください。
先祖代々から守ってきた山林があるのですが、自分が生まれた年に、オヤジがヒノキを植樹してくれた。下草刈り、間伐、枝打ちなどできる範囲内で山を守ってきた。次世代にどう残そうかと考えたとき、60数年育ってきたひのきを伐採し、あえて植樹せずそのままにしておけば雑木が育ち自然林になると考えていた。しかし、見積もりを見てびっくり。木材市での買い取り価格から、手数料、伐採人件費などを差し引くと、手元に残るのはわずか約1割の50万ほど。60年かけて見守ってきた山林の価格がそれだけ…。でも、これが現実?!外国の業者がやってきて、水源だ、伐採権だとポンと大金を積まれたら、そりゃ心が動くわ。山に愛着が持てず、ほったらかしにしている地主の気持ちもわかるなぁ。(関市在住 K・M)

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平成29 年3月13日、公益財団法人 奥山トラストは、岐阜県白川村で自然林43haを購入。今回取得したのは、庄川源流域の標高約1200m付近にある、ブナ林やシラカバ林からなる100%の天然林です。取得したトラスト地の周囲も原生的な天然林となっており、一帯が岐阜県「水源地域保全条例」の指定地域となっています。

ツキノワグマ爪あと

ツキノワグマ爪あと

周辺では、カモシカやツキノワグマ等の生物の痕跡が確認されており、水源の森としても、多種多様な生物の生息地としても保全の意義のある場所。森林全体が還移過程にある天然林であるため、今後は手をいれることなく、自然状態のまま永久に保全をしていきます。また、岐阜県在住の当財団支援者の方々とともに、トラスト地内部の動物や植生調査等を進め、地域の貴重な財産として水源の森をトラストする意義を広めていきたいと考えています。かつては日本のどこにでもあった奥山の豊かな原生的な森ですが、開発やスギ・ヒノキの人工林化により、その多くが失われています。文明の基盤である奥山水源域の豊かな森を保全・復元していくことは、21世紀の重要な課題であり、当財団にもさらなるナショナル・トラストを進めてほしいという声が多く届いています。今後も、次世代のため、全ての生きもののため、水源の森を守るナショナル・トラスト運動を全国で進めていきます。
公益財団法人 奥山保全トラスト 理事長 室谷悠子

公益財団法人 奥山保全トラストについて
奥山保全トラストは、今、わずかに残る「奥山」の豊かな森を、市民から集めた寄附金で買い取るナショナル・トラスト運動によって保全しようと設立された自然保護団体です。
かつて日本の奥地には、多種多様な生物にあふれる鬱蒼とした巨木の森が広がっていました。そして、この森から湧き出る滋養豊かな水は、あらゆる生き物の生命を育み、農業、林業、漁業、工業、全ての産業と都市の水源を支えてきました。私たちの祖先が「奥山」として大切に守ってきたその森は、戦後数十年の間に、道路や観光開発、スギ・ヒノキの拡大造林などのためにその多くが破壊されました。近年、世界的な水不足を背景に、海外の資本が残された日本の水源地を取得するという憂うべき事態も発生しています。
《奥山保全トラストの事業》bear
①原生的な森林の購入や保全 ②や性動植物の生態調査や研究 ③環境教育・環境保全に携わる人材の育成





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創刊:1987年
発行日:偶数月の第4月曜日
発行部数:22,000部

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