vol.177 大地と森とミツバチと私たち

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F:船橋康貴さん 環境活動家、一般社団法人ハニーファーム代表理事(写真・左)
Y:Yaeさん 鴨川自然農園で半農×半歌手として活動。(写真・中)
N:萩原・ナバ・裕作さん 岐阜県立森林文化アカデミー 准教授(写真・右)
*シンガーソングライター ASUMIさんの歌を間にはさみながら、内容は深く、雰囲気は楽しいトークで盛り上がりました。

ミツバチとつながり
F:今日この会場のあたりにもいっぱいミツバチが飛んでます。ハチというと日本の人は怖いという感覚ですが、欧米は感謝の対象。「ご飯(作物)を作ってくれてありがとうね」。だから庭の花や、窓辺の花も、ミツバチのため。
Y:え〜、お花はミツバチのため!
F:はい、景観のためじゃないんです。いのちの循環があるということを小さい子も知っている。
Y:舟橋さん、ミツバチとのつながりは何年前から?
F:5年です。もともとは地球環境のシンクタンクで、地球温暖化対策とかに取り組んでいました。でもちっとも改善できない。そんなとき、ミツバチと出会ったんです。ミツバチを先生にしたら環境問題は解決するって思った。だけど今、ミツバチは危機的状況なんですよ。そしてそれは、今食べているもの、それがなくなるってことに繋がっているんですよ。
Y:ミツバチがいないと、食べ物がなくなる?
F:ミツバチの受粉でおおよそ人間の食べるものの7割ができている。ミツバチがジャングルや森に入って、受粉をするから、実がなる。それを動物が食べる、フンといっしょに種を落とす。そこから芽が出て、その根本が森のダムになり、たまった栄養豊富な水が川や海の生態系を維持している!ミツバチがいなくなると、この「いのちの循環」の仕組みが止まる・・・ぼくはこのことを一生懸命あちこちで話している。でも、なかなか74億人に伝わらない。で、誰ならたくさんの人に伝えられるかなと考えたときに、おー!くまのプーさんだと思った。ミツバチの受粉で食べ物ができているんだというメッセージを、プーさんが主人公のアニメーションで、世界中にいろんな言語で伝えてほしいと、実は昨年6月にウォルトディズニーの本社へ直談判しに行って来たんです。
N:プーさんも蜂蜜が食べれないと困るんですよね。
F:困るんです。
Y:ミツバチと食べ物が直結しているということを知らない人は多いと思います。
F:こんなに深刻だっていうこと、こんな楽しいマルシェもできなくなるってことを知らない人もいますよ。
Y:鴨川自然王国は千葉県の南の方にあり、そこに大山千枚田っていう棚田があります。昨年、すっごい雨の中で、稲刈りをしました。もともとは手作業で有機農業をやってきたんですよね。多くの人が関わることで、食糧の自給率がすごく高かった。機械化することによって、農薬も使うようになり、その分やっぱり生態系に異常をきたしてきた。田んぼにね、ウナギがいたんです。すごい豊かだなと思うんです。ところが、農薬を使い出したときから、ウナギが腹を見せて死んでたんですよ。地元のおばあちゃん、さみしそうでした。私たちはそういう豊かさを取り戻していかなきゃいけないよね。

みつばちの巣F:ミツバチが減っている原因の一つが、農薬にあることとは別に、ボディーブローのように徐々に生態を弱くしていくことにも注目したいです。環境主要生物であるミツバチが元気だと他の虫も動物も人間も元気なんです。実は、ミツバチは温暖な沖縄が育ててくれています。ところが、沖縄も農薬の使用によって、ミツバチの生育に影響がでてきました。さらに農薬が地下に染み込み海にいき、サンゴが死にはじめた。ミツバチの象徴というのはハニカム(ミツバチの巣)の六角形。沖縄の紅型にも六角形のデザインがあって、それはサンゴの象徴だとか。海の環境主要生物である珊瑚がダメになったら、海は死ぬでしょう。ともに環境主要生物。繋がっている感じがしますね。
Y:千葉の定置網の漁師さんたちは、海をキレイにするならまず山、川をキレイに整備するって。海と山とのつながりを昔の人たちは理解していたのでしょうね。

自然と人
Y:今は昔からの農業も、土からも離れてしまった。ナバさん、子どもたち、土に触れたときどんな感じになります?
N:
なんだろう、子どもだけじゃなくて大人もね、生き物にかえるっていうか。畑仕事とかに夢中になっちゃう。土のじわじわ感、大人が変わるんですね。
Y:田んぼに入ったとき、私、感激しましたね。あの、むにゅ〜っていう、なんていうの?泥に足を取られずぶずぶって、ゆびとゆびの間に泥が入る感覚…快感だったりするんです。なんていうか、こう、地球にガーって入っていく感じ。
F:土を触ったあとは、心地よい疲れってありますね。あれはたぶん、全部いろんなモノ(毒素)が出ていくんじゃないですかね。
Y:田舎に住んでいる私の周りの子どもたち、土に触れることがあんまりなく育って、目の前に田んぼがあるのに入ったことがないし、山があるのに山で遊んだことがない。遊び方も親が知らないしね。
N:そのとおりですね。岐阜は、8割くらいが森。このあたりは違いますが、子どもたちの周りにはたいてい森があるんだけど入れない。危ないから、とか、大人がどう遊んだらいいか知らないし。それで、森の幼稚園を立ち上げた。ここにはこんなに川があって森がある!なら、毎日外でしょう!って。特徴は小規模。10〜15人くらいの子どもたちを、お母さんたち3、4人がいっしょに大家族みたいな感じで面倒を見る。手作りの教育を森の幼稚園でずっとやってきました。
F:ぼくも去年から、「ハニービースモールスクール」というのを始めました。最近は自分たちでひみつ基地なんかを作り出したりして。そんなことをやっていると、戦争ってなぜ起きるの?どうしたらそれが起きないか、ちっちゃい子でもみんな語れるんですよ。ちゃんと待っていれば語るんです。今は大人がどうなの?って、せかしすぎて、違うでしょ、こうでしょって言うから、言わないだけでね。
N:その、待てるっていうのがいいですね。
Y:スローだからね。
F:自然の中だと待てるんです。
N:そう!!そこ!ふだんお母さん大変でしょ、朝早く早く!とか、せかすんですよ。でも、森の中に入るとお母さん方もおおらかになって、待てるんですね。そして少人数だから待てるとも言います。とっても大事なことですね。
F:やっぱり自然に戻っていくということをもう一度考えないといけないね。自然としっかり繋がることで、幸せを十分に感じることをしていきたいですね。

楽園
F:ASUMI さんの『楽園』という歌の中に「なにもないけど、すべてある。」そんなフレーズがありましたよね。自然っていうところに子どもたちを連れて行くと、なんにもないじゃんって言うんですよ。でも、結局すべてがそこにあるということに気づいていくんだよね。これ、とっても大事なことですよね。

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N:大事ですよね。森の中で子どもは次から次へと遊びを作っていけるんですよ。そういう能力が発揮できるなにかが森にはあるんじゃないかな。
Y:そうだよね、蜂に刺されるからやめなさいって言う、そういう大人にはならないよね。
F:どうしたら、刺されないのかっていうのもわかるんだよね。
Y:虫が嫌いな子どもって多いじゃない?私もあんまり好きじゃなかったんだけど、虫って危ないのとそうでないのとがいるでしょ。ちゃんと知識として身につければ、すごく可愛く思えてくるのね。
N:よく子どもたちとやるんだけど、毛虫をね、手のひらの上に這わせるんです。
Y:えっ、そうなの?かぶれない?
N:かぶれない。かぶれる毛がついているのは背中だけだから。
Y:背中を触らなきゃいいんだ!毛虫って、野菜喰われると思って、害虫!って感じでみてました。毛虫とは違うんだけどキャベツの葉っぱにモンシロチョウの幼虫がついて、葉っぱがレース状になってしまうんですよ。
F:ぼくの知り合いの畑では一番外の葉っぱだけレース状になって、虫が2枚目から絶対手を出さないって。

Y:私なりにちょっと分析したのね。虫って、自分の食べるものが絶滅したら自分のいのちがないじゃん。そのキャベツが、次の世代に繋がるために、残しているんじゃないかなって。でも、人間だけは、全部絶滅させちゃう。
F:食べ尽くし、使い尽くし・・・いくつかの文明がこの地上から現れては滅びているのは、全部、環境問題といわれているんだよね。ここで、お二人に悩み相談です。アインシュタインが、ミツバチがいなくなったら4年で人類が滅亡するって言ってます。そうならないために、私たちはどうすべきでしょう。
N:気づいたら動き始めるしかない。あと、人に言いまくる。伝えまくる。なんか一瞬でも誰かにハッとさせることをやれば、みんなフッと振り向くでしょ。
Y:そうですね、「楽しいことは正しいこと」と言った人がいて、楽しいっていうことにみんな欲求を持つでしょ。鴨川自然王国では、楽しくなければ人生じゃないっていう言葉を私の父が残しているんですけど、とにかく楽しさに邁進しようと思っています。
N:さっきの楽園、楽園ですよ。楽園を作っていけばいいんですよね。
F:いいね!まとまってきました。ボクもね、Yaeさんといっしょで、すべてを陽気にがモットー。だから、ミツバチがいなくなって、食べ物がなくなるのをなんとかしようと、深刻になると重たいから、プーさんに手紙を書こうよって。それがプーさんに届いて、プーさんが語ってくれて、ディズニーが本気になったら、みんなが知るようになって、つながっていくよ。とにかく陽気に。プーさんに手紙を書こう!!!

最後にメッセージをひと言づつ。
N:我々は猿だったんだよね。猿は森から来たんですよ。たまには森に行こうよ。これほど人が住んでいる平地に近い場所に森がある県というのは、岐阜県しかないんですよ。
Y:3人の子育てをしながら、やっぱりいっぱいいっぱいなのね。でもその中でも、自分を解き放ち、あー気持ちいいなぁ、みたいなそういう瞬間をね、もっと作っていこうかなって思います。
F:では最後にぼくから。みなさんお買いものに注意して下さい!お金というのは、投票権(券)です。すごいエネルギーを持っています。いいことをしてくれる企業やミュージシャン、幼稚園のおじさんに投票してあげて下さい。買い物で社会が変わる、一通のプーさんへの手紙で社会が変えられる。みなさんは無力だと思わないで下さい。一番力を持っている人です。なので、社会、世界をいい方向へ変えるのは、みなさん自身です。

(つながりフェスティバル2017年3月12日トークライブより 文責にらめっこ)