vol.176 ボーダーレス社会をめざして

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vol.35
一人暮らし

 以前からの読者の方、お久しぶりです。初めての方のために、タイトルの「ボーダレス社会をめざして」とは何か?少しご説明をしたいと思います。

 私には39歳の自閉症の息子がいます。彼と私が経験してきたことや障がい者を取り巻く社会のことを書きながら、障がいのある人たちをほんの少し理解して頂けるきっかけを作ろうというのがタイトルの趣旨です。4年前の1月まで連載をしていたのですが、2012年3月、私に胃癌が見つかり手術をし、2/3の胃を摘出したことより心身ともにこの連載を続けるのは無理と判断して止めにしました。しかし、すこぶる元気になり、復活することになりました。

 この4年の間に息子の生活が大きく変わったことをまず書かなくてはいけません。2年前に岐阜市内にあるアパートを借り、一人暮らしの練習を始めたのです。毎週アパートに2泊し、会社に行くという練習をしています。洗濯、掃除、食事作りなど一人でしなければいけないことがいっぱいですが、息子はとっても嬉しそうです。
 どうして思い切って一人暮らしの練習を始めたのか?親子喧嘩が発端です。「この家出ていく?一人で暮らす?」なんて私が怒って言ったのに、息子が「はい。アパートに引っ越しします。」と答えたのです。もうびっくりでした。チャンス到来です。気が変わらないうちに、知り合いの人にアパートを借りたいのだけれど、部屋を見せてほしいと連絡し、二人で見に行き、その場で決めてきました。何でも早い方がいいです。その勢いに乗って、市役所へ行きヘルパーさんが使えるよう手続きをしました。部屋を使えるようにしなくてはいけないので、息子と一緒に家財道具などを買い揃えました。息子は私と一緒に行動するのを嫌うので、めったにないことですがこの時ばかりは仕方なく一緒に買物をしてくれました。2週間くらいですべて用意しましたので、忙しかったこと忙しかったこと。お茶碗等の食器など、こまごましたものまですべて息子本人が選びましたので、満足そうでした。体中から嬉しいオーラが出ていて、希望にあふれる感じがしました。

 障がいがあっても何も変わらないんです。多くの人にお手伝いをしてもらって、自立または自分らしく生きることができるよう環境を整えなくてはいけないとつくづく思いました。これは親の大切な仕事ですね。これから私自身の癌のことも交えながら、障がいのある人に係ることをお伝えしていこうと思います。

NPO法人オープンハウスCAN 理事長 伊藤佐代子