vol.174 メディアよもやま…ばなし 連載3

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本土の新聞からは伝わらない沖縄の素顔

この10月26日~30日、沖縄に世界各地から1万人ものウチナンチュ(沖縄人)が集って「第6回世界ウチナンチュ大会」が開かれています。沖縄から職や食を求めて、海外へ移住した人たちやその家族は、今や40数万人。ハワイを中心とするアメリカとブラジルへそれぞれ20万人、メキシコ・ボリビア・ペルー・アルゼンチンなど中南米に多く、それぞれの移住先で沖縄県人による親睦団体を作って、活発な情報交換や地位向上運動などを続けてきました。そうした世界中でのさまざまな取り組みや、スポーツ・芸能などの活動を沖縄の県紙『琉球新報』『沖縄タイムス』が、毎日細かく報じていることを、私は恥ずかしながらほとんど知りませんでした。またカリフォルニアのバークレー市議会は、沖縄県人会の働きかけで、普天間基地の辺野古移設に抗議する沖縄連帯決議を採択し、ハワイのホノルル市議会は辺野古移転の賛否で揺れているということで、移民たちはそれぞれ移住した先で、故郷の平和を求めて一生懸命運動しているのです。%e6%b2%96%e7%b8%84%e3%82%a4%e3%83%a1%e3%83%bc%e3%82%b7%e3%82%99
これら沖縄の新聞は、失業率や児童の相対的貧困率が本土の倍近いこと、一人家庭の貧困率や学生のブラックバイトの割合が全国一であることなどを、さまざまな家庭の具体的な実態からレポートしています。もちろん辺野古基地や東村のヘリパッド建設に対する村人たちの体を張った闘いは、いつもトップニュース。去年の安保法制審議の最中に、某党の「芸術文化懇話会」講師である著名作家が「(政府に批判的な)沖縄の2つの新聞は潰してしまえ」と暴言を吐きました。彼の情報力・創造力の貧困さには呆れますが、本土のメディアを見ているだけでは、沖縄の人たちが置かれている切迫した雰囲気は、ほとんど伝わってこないことも確かです。(私は、9月末に沖縄・読谷村で、「FMよみたん」や沖縄国際大学の有志が中心になって開いた「第14回市民メディア全国交流集会in OKINAWA」に参加して、こうした情報格差の実情や、さまざまな工夫を凝らした沖縄からの発信の一端を知ったのですが、これは別途報告したいと思います。)
さてあまたの沖縄の歌い手の中で「ネーネーズ」の唄声は、一際胸の奥深くまで響きます。出稼ぎ、移民などで別れた親しい人への切々とした慕情や哀しみ、深い愛、支配者への不屈の思いを独特のトーンで歌い上げて美しい。世界中に移民を送り出してきたポルトガルの民族音楽ファドにも通じるようです。

つだまさお・プロファイル
1943年金沢市生まれ。京都大学卒業後1966年~1995年NHK(福井・岐阜・名古屋・東京)で報道番組の制作・開発に従事する。その後東邦学園短大、立命館大学でメディアやジャーナリズムの在り方を教えたり、全国の市民メディアをつなぐ仕事に携わる。ぎふメディアコスモスの中から発信する市民による市民のための放送局「てにておラジオ」代表。