「美しさを引き立たせる」
「いけばなでは、花材が本来持っている美しさを引き立たせるのが主目的。ですから、華道家の意図よりも花の個性を優先します」。これは3歳から生け花の指導を受けたという華道未生流笹岡家元・笹岡隆甫さん(1974年生まれ)のことばです。たとえイメージと違った花材(草花や枝物など)が届いても、それが生きるデザインに修正するとのことでした。華道を習わずとも、私たちは笹岡さんの「花が本来持っている美しさを引き立たせる役目に徹する」ということばを忘れないでいたいものだと思いました。人間の世界もきっと同じです。家族も含め、周囲の人が持っている美しさを引き立たせていけたらいいですね。万象が輝くよい季節です。目をこらせば、まなざしをあらためれば、この地球のかけがえのなさや希望、可能性など、見えてくるものがいっぱいありそうです。
以下、ご参考(笹岡 隆甫さんのことば)
もし、太陽に向かって伸び上がるようなデザインを考えていたとしても、崖にかかったように垂れ下がる枝が入荷すれば、その枝のおもしろさが生きるデザインに修正します。(中略)
私たち華道家は、花を使って自己表現するのが仕事ではありません。だから、無理をして自分の我を押し通す必要はないのです。個性を前に前にという風潮の昨今ですが、むしろ自分は一歩引いて、花が本来持っている美しさを引き立たせる役目に徹する。それでもやはり祖父のいけた作品と私がいけた作品が違うのは、きっとそこに消そうと思っても消しきれない内なる個性というものが出てくるからでしょう。無理をして個性的になんかならなくてもいい。誰もが魅力的な個性を内に秘めているのですから。
(参考:笹岡 隆甫さんのことば、 京都新聞 ’ 08/11/9 より)
「因縁無量」
小才は人に会っても縁に気づかず、中才は縁に気づいて縁を生かさず、大才はそでふれあった縁をも生かす。柳生家家訓だそうです。このことばを知ってから、縁を意識するようになりました。ご縁はそこらじゅうに落ちているのですね。ご縁といえば、10数年前、こんなことがありました。初めて向かった綾部市内のある町で道に迷ってしまいました。ふと、庭先に植えられていた粟(あわ)が目についたので、「めずらしいですね」と祖母くらいの年齢の方に声をかけたら、意気投合。それがきっかけとなり、以来、仲良くさせていただくようになりました。人の出会いとは不思議なものです。まちが元気になっていくためには、「柳生家家訓」のように生きることが大事だと思います。勇気を出して、話しかけてみると、思いがけない展開が生まれかもしれません。
※半農半Xとは・・・半農は環境問題、半Xは天職問題(どう生きるか)を背景とする。持続可能な農のある小さな暮らしをベースに、天与の才を社会に活かす生き方、暮らし方。ex.半農半漁、半農半大工、半農半看護師、半農半カフェ、半農半絵描き、半農半歌手、半農半鍼灸師、半農半カメラマンなどなど。
塩見直紀(しおみなおき)半農半X研究所代表
1965年、京都府綾部市生まれ。20年前から「半農半X(エックス=天職)」コンセプトを提唱。半農半X本は中国語訳され、台湾、中国にもひろがる。著書に『半農半Xという生き方 実践編』など。