【Vol.165】ぎむきょーるーむ 男親のあれこれ、男子にどう影響?

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家庭のことは妻に任せて、稼いで家族を食わせることが、父親の役目…だろ?
えっ、ちがう!?
そんな昭和のお父さんはガラパゴス…って、トホホ。
イクメンっていうけどさ。
やればやったで妻のダメ出し…でしょ?

男親から…

それはものすごい影響を受けることは事実です。
遺伝的な影響……顔が似る.これは実感されているでしょう。それから、非常にこまかく見ていけば、考え方のパターン、物の感じ方などには遺伝的に似ている部分が少なくない.オーバーにいえば、精神構造の50%以上は両親からの遺伝に左右されているともいえます。
さらに親の完璧な庇護下にある乳幼児から、青年期の準備をしだす小学校の高学年から中学校くらいまでの10年ちょっと。親の生き方の影響は大きいかと問われれば、大きいといわざるをえません。
がっかりしました?しかし、問題は影響を受ける、似るということと、それを子ども本人がどうつかっていくかは別問題。親から与えられた性分、受けた影響をつかって、人生80年時代の残りの70年を子どもたちは生きるわけです。そこの生き方こそ、子どものころに体得した者をよくも悪くも変えていく。
お父さんは

お父さんはどんなモデルになるべき?

診察室で、一番手を焼くお父さんの話。相談で多いのは、いま流行の家族的協力感の低いお父さん。イクメンなどという流行があるので、知識は多く、子どもに一生懸命してやりたい気持ちはある。けれど、子ども自身が本当に求めているものと、お父さんの与えたいものが基本のところですれ違っているのに気づかない。典型的な例として、息子が不登校!根性を入れ直す塾へ……ひきこもりぎみ?ひっぱり出す塾を…・と精神科医としてはそれだけはやめて、と言うことをするわけですが、お父さんは息子にとって最善と思い込んで聞く耳をもたない。
逆に息子がピンチというときに、逃げ出したり、見て見ぬ振りをしてしまう。「俺が行くとよけいに荒れるから」とか。女親が適当にあしらえる日常的な問題はいいんです。多くの場合、むしろだらしのないお父さんのほうが子どもは気楽で助かるということもある。でも、女親もお手上げというときに、ここはというときに、出ていかれない男親は困ります。

さて、息子は父をモデルに大人になっていくのだけれど、これからの時代を生きぬこうというときに、経済的な大成功はない。宗教的な悟りも難しい。となれば、みんながそれぞれ、自分のやっていることに自分なりに充足感をもっていくしかない。お父さんがどんな性格でもいいし、どんなふうに息子が似てもよいのです。ただし、自分なり「おれはまずまず」みたいなものを、ちょっと大事にしたり、楽しめたりできる余裕ね。(※6)そこをどうやって見いだしていくかです。
お父さんが自分も、息子も、家族も、それぞれにいろいろあるけれど、「まぁ、そんなことだろう」と認められる度量。もちろん、現実からずれすぎていてはダメですよ。自分のイメージ、独善の世界だけで認めている思い入れは、認めていることにならない。ナルシスティックに認めるのはとくにまずい。あるがままにそって、子どもの実態を大きくくずれずに、認める感覚があればいい。どんな息子も、余裕と度量がないと、なかなか息苦しいものです。
そのためには父親に、「俺は、ここがダメなんだ」という客観的にみて正しい自覚がいちばん必要。そこさえ大丈夫なら、なんとかなる。そして、「なおさなくちゃなぁ」と思っていても、「なかなか上手くいかないなぁ」と「でも、まぁ、そこそこ、こんなところでいいかな」なんてことも、家族と共感しあえること、くり返しますが、どんな努力も独善や逃げであるときは、家族の関係は混迷してしまいます。

家族が楽な気持ちになれる人。それは、できないときに認めたり許したりしていく感覚を共有できる人ということかな。そうなれば、とまどったり、自分をもてあましたり、立ち止まってしまった息子にも、向かう先はやがてきっと見えてきます。(精神神経科医・石川憲彦)
スーパーマン父

ゴリラ・シルバーバックにみる父性
母子関係は哺乳類の出現と共に誕生するが、父子関係は、はたしていつ誕生するのでしょうか。そのヒントは、現在のサルの社会に残っていると考えられ、ゴリラの父性行動がヒトの父親創造に深く関係しているとは、十分考えられています。そこでゴリラの父性行動を観察してみましょう。
ボスゴリラであるシルバーバックとその子どもたちの関係は、思春期になって子どもたちが集団を離れるまで続きます。息子たちは、シルバーバックと共に群を守り、シルバーバックが老齢な場合は、成熟した息子が集団に残り、しだいにシルバーバックに代わってリーダーシップをとるようになります。しかし、息子がシルバーバックに対して優位に振る舞うことはないため、シルバーバックがメスの支持を失うこともなく、死ぬまで群の核としての立場を維持します。

シルバーバックは、乳児にはほとんど関心を示さず、積極的に自分から世話をすることもありません。離乳時期が近づいた幼児が、シルバーバックに関心を示すようになって、初めて子どもとの親密な関係が始まるのです。 乳児は次第に母親から離れ、年上の幼児たちと共にシルバーバックの側で過ごす時間が長くなり、完全に離乳する頃には、母子関係よりシルバーバックと子どもの関係の方が密接になっています。5歳ぐらいになると、自分でベットを作り始めたりします。
ゴリラ

こうして、子どもの依存対象は母親からシルバーバックに移ってゆき、シルバーバックは、メスが赤ちゃんを抱いて近づくことで、その子どもの存在を認知します。そして離乳期の世話を、母親から任されることで、子どもと密接な関係を築いていく。まさに、母子双方の働きかけによって、シルバーバックは子どもとの絆をつくってゆくのです。  「父親の起源」より抜粋