VOL.148 まいまいの看護師見習い奮戦記~From Newyork~ NY貧乏Nurseものがたり-10

01part -10

One Day

ホスピスボランティアとして、この一年間、ほぼ毎週末たずねていたおじいちゃんが、ついに死んだ。

実は彼2週間前に足に血栓ができて痛みがひどくて、うちの病棟のホスピスの部屋に入院してた。
ホスピスなので症状緩和と痛み緩和のみやったけど、彼にとっては辛い最後やったと思う。

うちは知り合いだったせいもあって担当になることが多かったけど、3日目くらいからは意識も朦朧として会話はもうなりたたなくなってた。4日目くらいからは幻覚や幻聴があったと思う。それ以降は、もううなり声とも痙攣ともとれるようなのの繰り返しで、家族もそばにいて苦痛だったと思う。本人とはもう意思疎通ができなかったから、痛みがあるのか、体の向きかえたいのか、どうしたいのか、なんでうなってるのか、はっきりとはわかんない。

家族はどんな心境でいたかわからないけど、彼がちょっとでもうなり声をあげるとすぐに、痛み止めや精神安定剤をリクエストしにきた。
静かに眠っている状態にしてあげたかったのだろうと思う。

末期の患者さんはみんな、機能低下や体力が低下して喉の痰や水分がを自分自身では吐き出せないから、すごい呼吸が苦しそうな、まるで自分の痰や唾液におぼれているような音がする。これは周りが思うほど本人はそれほど苦しさや息苦しさは感じないそう。でも聞いてるほうは、いたたまれなくなる音で、患者さんが痰におぼれてるように聞こえる。それを抑える薬も何回も注射した。

彼が病院にいる間、うちは何回も何回も痛み止めと精神安定剤と痰を減らす薬を投与した。
何度も抵抗を感じた。それが本人の本当に望んでることかわかんないまま投与するんやもん。

あまりにも頻繁に家族がリクエストしにくるから、まわりの看護師たちは”きっと家族は早く患者さんに逝って欲しいんやろう”っていってた。
そんなことはないとは思うけど、薬は死を早めることにもなる。
結局そういう状態が一週間くらい続いて彼は死んだ。

今は、彼の最後が痛みの極力ない、安らかな状態だったことを願うばかり。

なんかね、本人の意思表示がきっちりと事前にあると、それにそってケアができるからいいけど、意思疎通ができなくなってからやと、痛み止めとか精神安定剤とか、そういった薬をどれだけどんなふうに投与するか、難しい。
文化や宗教や考え方の違いで、最期の時期は本当にみんなそれぞれ受け止め方が違う。

最期まで苦しみぬいて死ぬ。
それは精神が肉体の苦から開放される瞬間なのか。
薬で痛みや苦しみをできるだけ抑えて昏睡状態になってしまうと、魂だけが苦しみ続けるような気もしないでもない。
でも最期まで闘い抜くことが、悲痛すぎるときもある。

難しいなって、あらためて思った。

おじいちゃん、ボランティアとして一年間いろいろお話きかせてくれてありがとう。
時々きかせてくれた歌声は素敵だったよ。

また、天国で会おうね。

 

Other Day…

輸血があって、ちょっとテンパッたけど無事終わってホッとする。
次からは、きっともう少し自信をもってできるようになると思う。

ただ、誰かの血が誰かの体にはいっていくのって、いつもいつも不思議な感じがして、どうにも、なんだかなじめない。

でも輸血がおわるころには、誰かの血は誰かの血と混ざり合ってちゃんと血を受けた人の体の一部となって循環されていくのね。

輸血終わると、たいていの人は本当に顔色が良くなったり、体のしんどさが軽くなったりする。

不思議…

プロフィール

まいまい
ニューヨークの片隅在住。2010年6月に看護師国家試験取得。不況のあおりで就職難民・・・そんな日々の中で遂に2011年10月に就職!感じたこと、気づいたことをお届けさせていただきます。