● 疑うことがなかったけれど
人間としてはあたりまえのことを幼少時からさせないのは、成長の妨げになるような気がします。朝ご飯だけでなく、食事は三回とるものだし、子どもは早く寝るものだと思うし、早起きは三文の得だとなにも疑わずに思っていました。大人になったら、ちがってきましたが。
(7歳・3歳)
● 小学生までは
早寝・早起きをしなければ、朝食をゆっくりおいしく食べられない。朝食は、脳と体を動かす大切なエネルギー補給源。朝食抜きでは一日を元気に過ごせないと思うから。…といいつつ「早寝・早起き」に関してはいちばん大切にすべきかな…と思っている。中学生になると、それなりに夜やらねばならない勉強もあるわけで…。もちろん、ゲームやネットをやっているくらいなら「寝ろ!」という私ではあるけれど。
(14歳・13歳)
● 朝ごはん、食べないといけない?
早寝・早起きはよいと思いますが、やはり子どもは朝ごはんを食べないといけないのでしょうか?大人ならいろいろ考え方もあり、一日二食、一日一食などもいらっしゃいますよね(青汁だけで生きている方もいるくらいです)。
(12歳・9歳・6歳)
● もって生まれた体質
早寝!わが家の息子たちは、どんなに運動しても、9時半前に寝ることはほとんどないです。いっしょに遊んだ子どもたちの親が「昨日は夕飯食べながら7時前に寝ちゃった?」といっているのを聞くとうらやましく思いますが、これはもう、もって生まれた体質だと思います。
(8歳・5歳)
● 共働きではむずかしい
早寝。共働きで帰宅後は時間に追われて、なかなか早寝させれません(いいわけ)。朝ごはん。食べるだけはかならず食べるようにしていますが、その内容がひどい。ふりかけごはんのみということもたびたびあり。けれど、朝も時間に追われている(いいわけ)のでなかなかできません。(7歳)
● 健康的な生活が送れる制度を
国に人の生活をとやかくいわれたくない。それより、そういう健康的な生活が送れるような制度(たとえばヨーロッパなどは20日以上続けて休暇をとらなければいけないとか)をどんどん入れて変えてほしい。提唱すれば(いえば)いいというもんでもないし、なにも変わらない。(9歳・3歳)
「早寝、早起き、朝ごはん」をいろいろな角度で考えてみると…
「自己責任」が極端なかたちになると… 山田 真
今の時代は新自由主義の時代といわれ、それは自己責任の時代ともいわれます。どんな時代かといいますと、たとえば健康面では、「病気になるのは個人の不摂生の結果だから、病気になっても国は面倒をみない、医療費などは自己負担。だから、病気にならないために、国民一人ひとりはあらゆる努力をしなくてはいけない」と国が宣言する時代だということです。極端なかたちになると、国民はすべて「健康を保つこと」を義務づけられたりしますが、それが実行されたのが『健康増進法』という法律の制定でした。健康であることが国民の義務になっているような社会では、生まれつき病気や障がいをもってる人は不適格な国民としてあらかじめ排除されてしまう危険がありますし、年をとって病気になった人なども非国民あつかいされてしまう危険性があります。それはとてもおそろしい社会です。
そのおそろしさは、「早寝早起き朝ごはん」という一見おそろしげでないスローガンの中にも潜んでいます。国が国民すべてに一定の枠にはまった生活スタイルをとるように求める時代は、やはりとてもおそろしい時代なのです。
やまだ・まこと 小児科医、「ちいさい・おおきい」編集委員
多様性が受け入れられる社会を 桜井智恵子
「早寝早起き朝ごはん運動」ができない家庭はたくさんある。週に一度以上、ひとりで朝ごはんを食べる子は全体の半分だ。子どもが起きるより早く出勤する親や、夜中の仕事で朝早くは起きられないような親、心身ともに弱っている親がいたりと、もういろいろな家庭がある。
社会には黒い人、黄色い人、若い人、お年寄り、障がいのある人…いろんな人間がいる。人びとの多様性が受け入れられることが、その社会のキャパシティでもある。子育てをもっと懐深く共有することは、包容力のある社会を育て、私たち全体の未来の大きな利益になる。
さくらい・ちえこ 大阪大谷大学教員「ちいさい・おおきい」編集委員。専門は教育学
子どもの知的欲求を無視していないか? 藤井誠二
「早寝早起き朝ごはん運動」の背景には学力低下の問題があります。学力を上げるためには、朝早く起きて、ごはんを食べて勉強したほうがいいんだ、と主張している方々が多いし、朝ごはんを食べている子どものほうが学力が高いみたいなことをいわれる…
ぼくはひねくれているから、もし、勉強がほんとうに面白いものだとしたら、朝ごはん食べたかどうかなんて関係ないだろうという気もするけれど。塾に通っているとか、親の教育熱心さとか、いろんな要素もからんでいるはずで、単純に朝ごはんと学力向上をつなげるのには違和感がぬぐえません。
ふじい・せいじ ノンフィクションライター
大人たちの自己満足運動が始まった 岡崎 勝
「早寝早起き朝ごはん運動」は、「早起きは三文の徳」の現代版ともいえる。しかし、わざわざ「国民運動」になってしまうところがすごい。
寝ることや起きることは、非常に個別的なことである。どうも、日本全体が健全という中身に「勤勉な生活」をイメージしているようだ。しかも、「精神力」がその基盤にあるので、怠けることは「社会的に許されない」というムードがあふれている。早寝もいいけど、遅寝もときどきはあっていいんじゃないか?とか、早起きもあんまり早いとつらいよねえ、というときもあっていい。
そして、忘れてはいけないのは、この運動は、「早寝早起きなんていってたら、勉強している時間が短くなるじゃん」という子どもたちのつっこみに耐えられないくらいの、法律や条例で「善意の顔で押しつける」、非常に危険な大人たちの自己満足運動だということなのだ。 おかざき・まさる お・は編集人
※「早寝・早起き・朝ごはん」国民運動とは、平成18年文部科学省が提唱したもので、その推進母体として「早寝・早起き・朝ごはん」全国協議会が設置された。そこが構想するのは、経済界、メディア、行政、各種団体、PTAなどが参画する国民運動。