VOL.161 ママたちの座談会「子どものしかり方」

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次世代を担う子どもたちを愛し、その子がいきいきと、心身ともに健やかに成長することを目的とした座談会です。

第10回 自然派ままたちの座談会
参加者
Aさん :高1、中1、小4、1才男子
Fさん: 小2女子、
1才男子Iさん: 小3女、年少男子

子どものしかり方

わたしって叱りべた?「しかる」は「ほめる」ことと同じくらい重要。問題はしかり方???わかっているつもりでも、ねぇ…
ついカッとなる自分…同じ悩みを持つままたちに話を伺いました。

●子どものしかり方って難しい

Iさん:こっちは本気で困ってる、というのがどうしたら子どもに伝わるんだろう?って思ってます。
わが家は家族揃って夕食を済ませたらお風呂に入って、という生活のリズムで今までやってきてるのに、変なタイミングで本を読みだしたり、さあ出かけようというときに、ちょっと待って宿題するから、って。そんなことがざらなんです。
何回も言ったり、予定をイラストに描いて貼ったりと色々努力したので、もうどうしたらいいのか。時にはつい手が出てしまいます。もう三年生だからわかってもいいはずなのに。自分の中で限度に近いです。

Aさん:うちは、三男が一学期の間、計算ドリルと漢字ドリルを1ページもやってなかったの。これは彼の問題だからと放っておくと本当にやらない。先生も怒らないから困りもしないんです。
それで「学校に行くのはあなたの権利。でも学校から出された宿題は義務。あなたが義務を放棄するなら権利をうけることもできないよ。学校からの義務をやる気がないのだったら、家に居て家の仕事をしなさい!」と言ったら、やるんだけど、基本的に本人が困っていないから、結局言わないとやらない。どうしたもんかなって思っています。

Fさん:私の場合、しかれないというか。つい嫌みな言い方になっちゃうんですよね。横目で見ながらボソッと「こうすればよかったんじゃないのぉ?」みたいな。
ちゃんと言葉にできず、お互い嫌な空気になって、それが続いてコミュニケーションがとれなくなって、ちゃんと話しができなくなっちゃった。それで今は気になる事には目をつぶって、楽しい会話だけをすることから関係を修復しようとしています。
そもそも、朝ごはんをきちんと食べずに学校に行くようになったのが始まりでした。だって、家を出る1時間前に起きるのに、髪型を整えるのに30分もかけてるんですよ(笑)。自分にない個性を理解出来ずに、だったらご飯を、という気持ちがその時は強くて、こうなっちゃったんです。

Aさん:この間友達が、その子がなんでそれをしているのかがわかると腹の立つ事もなくなるし、落ち着いて話しができるんじゃない?って言ってたんだけど、でも、親としてここは譲れないというところはあるよね。私の場合、例えば人に向かってナイフを向けてるとか、死ねって言ったり、万引きをしたりとか、そんな時は悠長にしてられないわ。

● 大事な日頃のコミュニケーション

Aさん:子どもも1人の人格だから、親子で気持ちをすりあわせる事も大事かなと思う。私はこう思うけどあなたはどう思う?とか、社会通念はこうだから、お母さんはあなたにこう言うんだけど、あなたはどう思っているの?とか。

Iさん:よくしゃべる子はまだいいんだけど、あまり話さない子はどうしたらいいのかなあ。

Fさん:怒る時って、何かをやってほしいのにしてくれないとか、すごくモヤモヤするじゃないですか、そのモヤモヤをうまく話し合いで解決できたらなあって思うんです。そうしたらお互いスッキリするよね。

Aさん:まず、自分が幸せであることがすっごく大事だと思う。余裕があるから。

Fさん:それは思う!それには夫婦仲は大事よね。

Aさん:以前自分が、パパや息子の言動が気に食わない、っていう時期があって、しょっちゅう怒鳴ってた。そしたら家族の体調が悪くなっちゃって。自分が安定しているのって凄く大事だなってつくづく思ったの。夫婦関係でもうまくいかないことがあると結構イライラするしね。

Fさん:パパが仕事で忙しくて、家の事を何もかも任せっきりになってしまうと、こちらは手一杯でストレスがたまっちゃう。するとつい子どもにあたったり、言葉が過ぎてしまうこともあるわ。

Aさん:親子でも、夫婦でも日頃のコミュニケーションって大事だねえ。

そもそも「しかる」ってなんだろう

ー 社会的によくないことをしたらしかる。
「わたしはそれがイヤなの」
という理由でしかってもかまわない

01わたしは、しかることの定義は「いいこと悪いことの区別を、厳しい態度で子どもに示すこと」だと考えています。

しかるべきこととして「危険なこと」「人を傷つけること」「人の迷惑になるようなこと」があげられます。

でも、そのほかにも「洋服にシミをつけられるのがどうしてもイヤ」「飲み物をこぼされるのがキライ」など、人によってはあまり気にならないことだけれど、自分はどうしてもやってほしくないことってありますよね。そういうことでも、いっしょに暮らす家族として「ママはそれがイヤだからやめてね」と伝え、しかってもいいと思います。

子育てをしていれば、しからずにすむということはありません。いいこと、悪いことの区別をつけて、繰り返ししかりつづけなくてはならないと考えたほうがいいと思います。

とはいえ、ずっと言い続けたとしても、せいぜい「大人になって必要なときに、直すことができる」ようになる程度。しかることはそれくらい気が長い作業だということを覚えておいてください。

無藤隆先生・お茶の水女子大学教授、
お茶の水女子大学附属小学校校長

ー しかる基本は「命にかかわるとき」だけ。
あとは子どもの力を信じてあげよう。

子どもを絶対にしからなくてはならないのは、基本的に「命にかかわるとき」だけだ、とわたしは思っています。

事故にあいそうだったり、大ケガをするのではないかというときには、大声で「絶対ダメよ!」と子どもをビビらせてもしかる必要があります。

それと、人にダメージを与える場合。ハサミでつつくとか、高いところでふざけて押すとか、そういう他人の命に関わる場合も、しかるべきだと思います。

しかるのではなく、「お願いする」でも十分

たとえば、自分で歩く力があるにもかかわらず、母親に「だっこだっこ」とだだをこね、母親が疲れ果てていた場合、つい親はしかりとばしてしまうのではないでしょうか。

けれど、しかればしかるほど子どもは抵抗して、状況は悪くなるものです。そんなときには、たとえば「お母さん、とても疲れちゃったの。自分で歩いてほしいな」と、真剣に子どもの目を見てお願いする方が、しかるよりも効果があるのです。

「それでは、子どものごきげんをとっているのでは?」と思う人もいるかもしれませんが、それはちがいます。おごそかに、親が真剣であることを、言葉をつかってきちんと説明するのです。

たしかに、子どもときちんと向かい合い、言葉で説明するのはエネルギーも根気もいることです。でも、子育てというものは、本来めんどうなもの。粘り強く、根気よく、言葉で伝えていってほしいのです。

諸富祥彦先生・千葉大学教育学部助教授

「これが理想のしかり方」という
具体的なイメージがもてますか?

02こどもの心を豊かに育みながらも、社会のルールを守り、他人を思いやれる人間に育てていく…そのために必要な「しかり方」には、動かしがたい法則があります。

必要なのは、あくまでも「子どもの目線に立ったしかり方」です。そしてそれはママの心も軽くしてくれるはずです。

部屋を片づけるとき、頭の中に完成形のイメージがなければ、ゴミの山の移動をするだけですよね。同じように、「正しいしかり方」をイメージしなくてはなりません。まずはそこから始めてみましょう。

「しからなくていい」ことってなんだろう?

▼大人と同じような「見通し」「判断力」を求めてしかってはいけない
▼子どもが「できない」ことを、しかってはいけない
▼生活リズムを整えることで、しからなくてすむ場合も多い
▼子どもは「親の姿」を見て学ぶ。しかる前に自分を見直して
▼マナーに関することは、何度も何度も何度も言い続けるべき

「子どものしかり方がわかる本」(主婦の友社)より抜粋

vol.160 ママたちの座談会「小さい子とテレビ」