VOL.163 暮らし上手 -医・食「そうだ、笑ってみよう!」part1

01

笑う門には福来たるといいます。確かに笑顔でいると福や幸せが寄ってくるような気がしますよね。では、私たちの身近な幸せである健康はどうでしょうか? 笑うことと健康は関係あるのでしょうか?「笑い」がストレスを解消し、病気を遠ざけることがさまざまな研究で明らかになりつつあります。生活習慣病の予防に「笑い」は大いに役立ちそうです。今回は、「笑い」と免疫力の関係をご紹介します。

ユーモアや笑いが「生きる力」を与える

2010年に起きた、チリのサンホセ鉱山落盤事故。その救出劇は、今もなお感動的な出来事として世界中の人々の記憶に残っていることでしょう。33名の鉱山作業員が地下700メートルの避難所に閉じ込められ、17日間連絡が途絶えたものの、その後無事であることが確認され、事故から69日後に全員が救出されました。 後日、作業員のチームリーダーが朝日新聞のインタビューに対し、過酷な状況の中、生き抜いた理由について、「希望があったこと、楽観的であり続けたこと、そしてユーモアを忘れなかったこと」と答えました。このことは、ユーモアや「笑い」がいかに、「ヒトの生きる力」と密接に関わるかを物語っています。

赤ちゃんは大人の「笑い」を真似て育つ

米国で行われた調査では、大人は1日に平均17回笑うと報告されています。「笑い」といっても、単に笑顔になるだけでなく、「ハ、ハ、ハ」と声を発する「笑い」もあります。ほとんどの動物は笑顔ができますが、ヒト以外では知能の発達した猿以外、笑い声を発することができません。笑うことは、脳にとって非常に高度な作業であるようです。人間の赤ちゃんには「天使の笑顔」といわれるような、寝入りばなに見せる笑顔があります。赤ちゃんをあやす時は、笑顔で接したり、褒めたりしないと、笑わない子どもに育ってしまいます。赤ちゃんは大人に笑顔を褒められることで、笑顔と「笑い」を学習していくのです。

年齢とともにストレスが増し、笑えなくなる

02「笑い」に関する様々なデータが報告されています。「声を出してよく笑う」を性別でみると、男性40%、女性60%で、女性のほうがよく笑うことが分かっています。 世代別ではどうでしょうか。「よく笑う」は30代が65%、40代が50%、50代が45%です。やはり年齢が若いほうがよく笑うようです。ある調査報告によると、小学生は1日に平均300回笑うが、70代では1日に2回程度しか笑わないと報告されています。 なぜ年齢を重ねるにつれて笑わなくなるのか。これについては、ストレス説が有力です。年齢とともにストレスが増え、笑えなくなるということです。ただ、先の調査では、人生で最もストレスが多いのが30代、40代ですが、60代、70代のほうが「笑い」の回数が少ないことから、ストレス以外の要因も大きいのではないかとの見方もあります。 つまり、脳機能が「笑い」と密接に関係しているのではないか、ということです。ただ、「笑い」により脳機能が高まるのか、脳の認識機能が高いことから「笑い」が促されるのか、どちらが一体先なのかということは、今のところまだよく分かっていません。

「笑い」は最高の”クスリ”!!

03「笑い」は、ストレス漬けの現代人にとって最も必要なもので、そして健康的でお金もかからず、しかも自分も周りも幸せにしてくれるものだからです。 「笑いの効用」は、まず何と言っても免疫力をアップすることです。ナチュラルキラー細胞(NK細胞)を増やして抗がん作用を高めたり、体内に侵入した病原菌などを撃退するのです。 大笑いすると酸素の取り込みが通常の3~4倍に上がり、脳に酸素がよく行き渡り、頭がよくなったり、記憶力の向上など、脳の若返りに役立つほか、ストレス解消に繋がります。 「大笑い」して身体がリラックスすると、アレルギーの原因たるIgE抗体が減少し、アトピーが改善するのだそうです。アレルギーの赤ちゃんをもつお母さんは、ぜひとも授乳時は笑ってあげて欲しいもので す。さらに「笑い」は、リウマチにも効果があります。関節リウマチの患者さんたちに、落語家、林家木久蔵さんの落語で大笑いさせた後、関節リウマチを悪化させるインターロイキン-6の値を測ったところ、その値は劇的に下がっていたそうです。そして、「現在あるどんな薬を使っても、短期間でこれほど数値を下げることはできない。」と感動したそうです。これを伝え聞いた木久蔵師匠は、「笑いはリウマチにキクゾー」と言ったとか、言わなかったとか… 「笑い」だけが薬ではありません。感動・感謝・喜び・祈り等々ポジティブ(前向き)な心の持ち方も、また様々な眠っている遺伝子をスイッチオンさせ、人の生命力向上に役立つのです。まさに心と身体は一体なのです。東洋医学が教える「身心一如」(身体と心は一つの如し)なのです。以上の考えは、また新潟大学教授、安保徹博士の「免疫論」、即ち、ストレス等で緊張した交感神経を和らげ、リラックスすることによって副交感神経優位を実現し、免疫力を向上させようとする考えと軌を一つにするものです。今日、「笑い」は単なる娯楽の域を遥かに超え立派な学問となっています。人がストレスで病気(気の病)を作り続ける限り、「笑い」は最高の”クスリ”であり続けるでしょう。