暮らし上手 -医・食 ぐずる子、さわぐ子は食事で変わる!「腸を整えよう」

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化学物質から身を守る「腸脳力」

 

情緒不安定な子どもたちは、加工食品から体内に取りこまれる食品添加物や農薬など、化学合成物資の被害者とも言えるでしょう。そうした、人体にとっては毒性をもった成分によって脳の生理現象が起こり、問題行動につながっていくからです。そんな毒から身を守ってくれているのも、じつは腸なのです。腸の中に食物が次々に運ばれてくると、腸はその栄養分や化学成分をいち早く分析し、すい臓、肝臓、胆のうに命令して、適切な反応をひき起こさせます。
たとえば、タンパク質や脂肪が体に入ってくれば、すい臓に命令してそれを分解してくれる酵素を腸に分泌させます。また、胆のうに指示して胆汁を腸に流し込みます。
また、食物と一緒に有害物質が侵入すれば、腸はこれをいち早く察知して大量の液体を分泌し、強制的に下痢を起こすことで、毒物を体外に排泄してくれます。じつは、下痢は生体の大切な防御反応として、とても重要な働きをしているのです。もし、この働きがなければ、私たち人間はたちまち毒素で中毒を起こして死んでしまうでしょう。
このように、腸は体に必要な物は取り入れ、有害な物は排泄するという善悪を判断する脳のような働きをする驚くべき「腸脳力」を備えているのです。
化学物質から子どもを守るためにも、腸の働きを健全化させておくことが、何よりも大事なのです

 

腸内環境が変われば意識が変わる

 

腸が「考える臓器」であるなら、腸内に入ってくる食べ物の質や量によって、考え方=意識が変わるということになります。
戦後、日本の食生活はカロリーという熱量の大小が中心の考えに重きが置かれ、「たくさん食べる人は健康だ」というような常識がまかり通るようになりました。
近年では肥満や生活習慣病の増加を受けて、量より質のほうが大事だと思う人が多くなりましたが、厚生労働省が「一日30品目を」とすすめてきたようにいろいろな食品をまんべんなく食べても調子が良くない人が大勢いますね。
それは「食物の質」の吟味に誤りがあったからにほかなりません。食物に含まれるビタミンやミネラル、食物繊維や酵素、抗酸化物質といった、ごく微量な栄養素こそが大切であり、それがないとうまく食べ物が燃焼しない不完全燃焼とでもいうべき状態をつくり出してしまいます。
少しの食べ物で元気に活動するためには、「食べものに備わる生命力」という質の吟味が大切になります。食材を選ぶのはお母さんの役割ですから、子どもたちの健康はお母さんの選択支にかかっているといってもよいでしょう。

 

人間はお腹にぬか床を抱えて生きている

おなかの内部には約300種類、100兆個の腸内細菌がいて、なんとその重さは1,5キロにもなるそうです。私たちは、おなかに微生物がたっぷりと含まれているぬか床を抱えて生きているといってもよいでしょう。
ぬか床の管理が悪くなると腐敗してしまい、悪いムシがわき悪臭が立ちこめて不愉快な状況がつくられてしまいますね。それと同じように、腸内が腐敗してくると、人間の意識や気分にも不機嫌な状態がつくられます。その結果、怒りっぽくなったり、過度に不安になったり、落ち込んだりといった精神の不安定な状態に陥りやすくなります。
ぬか漬けといったらきゅうりやなす、かぶやにんじんなどが定番で、肉やたまご、魚や乳製品などの動物性食品をぬか床につけることはありませんね。これはぬか床に入れると腐りやすく、管理が難しい食べ物だからです。
動物性食品の摂取量が多くなるほどに、おなかの腸内細菌の集団にも異常が起きて「悪玉菌」といわれる腐敗菌が増えて、腐敗毒素であるインドールやスカトール、フェノール、硫化水素、アンモニア、アミンなどの硫黄酸化物や窒素酸化物といった有毒成分が腸内で大量発生するのです。こうした「おなかのぬか床の腐敗」を防ぐためには、動物性食品を減らして、野菜や穀物を主体とした食事に変えることです。

 

大切な日々のぬか床管理

 

02おなかのぬか床をじょうずに発酵させるためには、塩の種類が重要なポイントになります。
微量ミネラルを除去した精製塩が市場に出回った当初、漬け物の味が悪くなったため、クレームが殺到したことがありました。そこで、当時の日本専売公社(民営化で現在は日本たばこ産業)は、にがりを含んだ粗塩を漬けもの用の塩としてあらたに売り出したのです。
乳酸菌には天然塩に含まれる微量ミネラルが必要のようで、質のいいぬか床づくりに海水を煮詰
めたり、天日乾燥してつくられて自然な塩を吟味して使うことが大切です。そしてそれは、ぬか床は毎日かき混ぜないと腐敗してしまうので、それが手間だからといって断念する人が多いですね。同様に、人間のおなかのぬか床も、たえず撹拌してあげないと腐ってしまうのです。
でも、人間のおなかの内臓までには手が届きませんね。では、いったいどうしたらよいのでしょう。それにはまず笑うこと。笑いによって横隔膜が振動することで、おなかのぬか床がゆらぎ、ほどよい撹拌 が行われるからです。
実際、「腹を抱えて笑う」ことで免疫力が上がることがわかっていますが、それはおなかのぬか床の発酵状態がよくなるため、といってもよいかもしれません。
ぬか床を冷蔵庫で長期保管しておくと、発酵が止まってしまいますが、それは低温では乳酸菌などの微生物の働きが悪くなるためです。ということは、おなかが冷えている子どもたちは、腸内細菌の働きが悪くなって、食べたものが不消化になり、下痢や軟便、腹痛、アレルギーなどの疾患や、食べても太れないといった体質になりやすいのです。

 

食物の皮が元気なぬか床をつくる

ぬか床には、ときどき米ぬかをあげないと発酵状態が悪くなってしまいます。同様に、おなかにもぬかつきの玄米を入れてあげる必要があります。麦ごはんや雑穀ごはんでもかなりおなかは元気になりますが、やはり、玄米ごはんに含まれるぬかの量はダントツに多いのです。
玄米だけでなく、果物や野菜の皮には亜鉛やカルシウム、マグネシウム、鉄分などの微量ミネラルや、食物繊維、酵素、ポリフェノールといった微生物の栄養となる成分がたくさん含まれていますから、皮ごと食べたいですね。

 

よくかめば、100年もつぬか床に

 

さらにおなかの発酵状態をよくするのが、だ液です。だ液に含まれているアミラーゼが、発酵促進剤として働きます。だから、だ液をたっぷり出したいのですが、ひと口30回以上かめば、だ液の分泌が盛んになり、おなかの腸内細菌の状態がよくなります。
それから、ぬか漬け上手のおばあちゃんから熟成したぬか床をもらってきて、家のぬか床に混ぜると、弱ったぬか床でも発酵状態がよくなります。これと同じように、人間の腸にも伝統製法でつくられたみそや醤油、漬け物や、塩こうじ、玄米甘酒、米あめといった発酵食品を入れてあげれば腸内環境が改善していくのです。
玄米と伝統製法の味噌汁、漬け物をよくかんで食べ、笑って過ごすことで、100年以上もつ丈夫なぬか床を腸内に作り上げましょう。

「ぐずる子、さわぐ子は食事で変わる!」より 岡部賢二・著廣済堂出版 1,200円+税