vol.222 ボーダーレス社会をめざしてvol.81

NPO法人オープンハウスCAN 理事長 伊藤佐代子

 

現在、読書がマイブームで、BSテレビ東京の「あの本読みました?」とNHKの「理想的本箱」の番組を見ることが一番の楽しみになっています。この番組で紹介された本を次々と図書館で予約し、読んでいます。その中で柴崎友香さんの「あらゆることは今起こる」と瀬尾まいこさんの「夜明けのすべて」の2冊の本を続けて読みました。
「あらゆることは今起こる」は、まさか障がいのことが書いてある本だとは、全然思わず予約しました。なんと著者の柴崎友香さんご本人の事だとは??知りませんでした。医学書の分野で出版されています。読み進めると何だか、普通の本ではないなと思いだしました。ADHD(注意欠如・多動症)・ AD (自閉スペクトラム症)という文字がやたら出てくるのです。障がいの分野で働いている私は、少しは分かるのですけれど、一般の人がこれを読んでくれるのだろうかと疑問に思いました。しかし、かなりの人気があり、図書館では予約待ちになっています。障がいのことを皆さんが知りたいのか、自分もひょっとしてADHDかな?と疑問に思っている人がいるのか?もともと柴崎友香さんの小説のファンなのか?
ADHDと診断されたご本人は、薬を飲むと「36年ぶりに目が覚めた」と書いてありました。ご本人は小説家であるがために、分かりやすい内容で、こんなことがADHDの人の頭の中では起こっているのかとびっくりさせられました。「私は私の身体しか体験できない」とか、「複数の時間が流れている」とか、「平行世界がある」とか、私にとっては、摩訶不思議な言葉の数々。ADHDであるご本人が、本を書いているのは稀だとかで、一読に値します。障がいを知らない人には、ハードルが高いかもしれませんが、書かれているような人は、私の周りにいるよねと思われるかもしれません。しかし、大変な日々を暮らしていらっしゃるという事がよく分かりました。
どうして締め切りや予定が分かっているのに、さっさとやらないの?という私の昔からの疑問に初めて答えてもらえた気がしました。決して約束を忘れているのではなく、頭の中は超忙しく働いているのだそうです。
また、瀬尾まいこさんの「夜明けのすべて」は、PMS(月経前症候群)の女性とパニック障害の男性が、最終的に不安を抱える友人として助け合い、生きていこうとする話でした。PMS という障がいは、知らなかったのですが、パニック障害はよく耳にする障害です。私自身も随分前に、睡眠を削って仕事?をしていた時に、ふらつきや動悸がし、担当医にパニック障害かなと言われたことがあります。全然信じてはいませんでしたが・・・。
パニック障害と言われた時に、ある小学校へ講演に行った事を思い出します。講演中に倒れないかなとまず、心配しました。念のため友人に車を運転してもらい、付き添いをお願いしました。友人は、「倒れたらかっこ悪いからね」と一言。「倒れたらかっこ悪い」を呪文のように講演中、心の中で言っていたのを覚えています。また、教室のドアをすべて締め切られると息苦しくて不安でたまらず、20cmほど開けてもらい話しました。会場へ行く途中にもトラブル発生です。少し長いトンネルがあったのですが、あの閉鎖された暗闇が怖くて、怖くてたまらなく叫びたい気持ちになりました。その時、自閉症の人が大声で叫んでいるのは、これなのかもしれないなとちょっと気持ちが分かったような気がしました。
その時は、障がいを理解するための試練?なんて思っていましたが、それはないですね。自分の容量以上の事はしないという事に尽きると思います。