vol.220 ボーダーレス社会をめざしてvol.79

NPO法人オープンハウスCAN 理事長 伊藤佐代子

障害者差別解消法

2024年4月から、障害者差別解消法が改正されました。障害者差別解消法とは、障がいを理由とする差別の解消を推進するための国内法制度です。「障がいのあるなしに関わらず、すべて命は同じように大切であり、かけがえのないものです。ひとりひとりの命の重さは、障がいのあるなしによって、少しも変わることはありません。
このような「当たり前」の価値観を、改めて、社会全体で共有していくことが何よりも大切です。」(内閣府が出しているリーフレットから引用)障がい者が、障がい者でない人と等しく、基本的人権を享有する個人として、その尊厳が重んぜられることを目的としています。今回の改正によって、民間事業者にも合理的配慮の提供が義務化されました。努力義務から法的義務になりました。
一般の方にはちんぷんかんぷんかもしれませんが、合理的配慮とはいったい何なのでしょうか?日常生活・社会生活で提供されている設備やサービスなどで、障がいのない人は簡単に利用できても、障がいのある人にとっては利用が難しく、結果として障がいのある人の活動などが制限されてしまう場合があります。
例えば、・学校の受験や入学を拒否される。・不動産屋さんで、障がい者向け物件はないよと断られる。・保護者や介助者がいないとお店に入れない。・お医者さんが、本人を無視して介助者や支援者、付き添いの人だけに話しかけるなどです。
では、合理的配慮とは…障がいのある人やその家族などから、配慮を求める意思表示があった時に、負担が重すぎない範囲で対応することが求められるものです。相手側に負担が重すぎる配慮は受けられません。例えば、 ・会合の時に、聴覚障がいの方には、手話通訳や画面で説明するなど、障がいのある人の特性に応じた対応をする。 ・障がいのある人から、「自分で書類に書きこめないので代わりに書いてほしい」と伝えられたら、代わりに書いても問題がないようであったら、その人の意思を十分に確認しながら代わりに書く。 ・意思を伝えあうために絵や写真カードやタブレットを使う。 ・電車の乗り降りで段差がある時は、スロープなどを使って補助するなど簡単な手助けで障がいのある人が暮らしやすくなります。
1年ほど前に柳ヶ瀬のハンバーガーショップで、入口に階段があったため、車いすの人が中に入れず困っていらっしゃるのを見かけました。店内に入りたいと伝える手段もないようでした。お店の中はとても混雑していました。しばらくすると店員さんが気付かれたようで対応をしていらっしゃったのですが、今年からは、お店に入れるような対策をしなければいけなくなります。障がいのある人が、そこでこのお店に入るのを諦めてしまわれるかもしれないのですから。 そんな諦めがないようにするのが合理的配慮です。障がい者側から無理難題はいけませんが、障がいのない人は、その時にできる限りの力添えを惜しまないことです。コロナが5類になってから、障がいのある人の青年学級(高校卒業後の障がいのある人の集まり)が復活しました。軽度の人が多いのですが、少しの手助けで彼らはとてもいきいきとしていらっしゃいます。4年ぶりにバイキングに行ったのですが、お店では普通に対応をして下さいました。当日、支援する人が細かい手続きなどをするのですが、少しのお手伝いで彼らが楽しみにされているイベントが行えます。
日本国中の障がいのない人がこの法律を知り、手助けをして下さったら、どんなに障がいのある人たちが楽になる事でしょう。