We are what we eat.(私たちの体は食べ物でできている)
フランス南部に位置するバルジャック村では、村長と村民熱心な働きかけにより、小学校の給食を全てオーガニック化するという前例のない施策が講じられている。国民の健康よりも生産者や企業の利益を優先する現代の食産業の実態に真正面から触れ、人間と自然の調和をスクリーンに美しく描き出した意欲作。
ガール県のあるラングドック地方は、1年を通して温暖な気候aがブドウ作りに最適で、古くから優れたワインの産地としてとして有名。南フランスの陽気な太陽と、地中海から吹き込む風によって育まれた葡萄は「太陽と風のワイン」といわれ、フランスを代表するテーブルワインとして有名です。舞台となるバルジャック村もブドウ栽培が盛んな南フランス、セヴェンヌ山脈の麓に位置する小さな村。
しかし、劇中にあったように、村人の63%が所得税免除の低所得だと言う事実があります。ガール県はオーガニック農家数が278世帯、フランス国内において、オーガニックの学校給食導入のリーダー的存在です。現在、ガール県内では75戸の農家が有機栽培のための転換期を過ごしています。
美しい自然に囲まれた南フランス、バルジャック村。ショーレ村長は子どもたちの未来を守るため“学校給食と高齢者の宅配給食をオーガニックにする”という前例のない試みに挑戦しました。大人たちは「オーガニックは値段が高いのに、村の財政でまかなえるのか」と戸惑っていましたが、オーガニック給食や学校菜園での野菜作りを通して自然の味を覚えた子どもたちに巻き込まれ、小さな村は少しずつ変化していきます。(でも、すべての子どもが野菜好きになるには、時間がかかります。フライドポテトが大好きな低学年のフィリップは、まだ抵抗しています!!)
子どもたちの未来を考える
オーガニックライフのススメ
映画の冒頭、ユネスコ会議での「あなたの周りに、がんや糖尿病にかかった人はいますか?」という健康科学研究者の問いかけに、出席者のほとんどが挙手しました。ヨーロッパでは、がんや糖尿病などの生活習慣病の70%は食習慣を含む、環境に原因があると言われています。あなたはこの数字をどのようにとらえますか?
地球の温暖化、環境破壊にも農業のあり方と食生活が密接に関係しています。この映画は、有機栽培農家と一般農家との対話や、家族をがんで失った主婦の体験を通して、私たちでもできる新しい生活を見せてくれます。
ジャン=ポール・ジョー監督の想い
「環境問題を考えたとき世界を変えていくには、子どもたちと母親、そして未来の母親である女性の存在が大きいと思います。この作品を作るにあたって私は最後に希望を必ず残したかったのです。今すぐに行動すれば希望は失われないという希望です。ドストエフスキーはこういいました“美こそ世界を救う”と。この作品は自然の美しさへのオマージュです。そして自然の美しさを守る事こそが、子どもたちの未来を守る事だと私は信じているのです」
── 『未来の食卓』製作のきっかけは?
2004年、私は結腸がんに侵されました。がんはフランスにおける死因の一位です。私の場合、そのがんは外科手術によって摘出され、今では完治しています。私は自分の病気の原因を追究しようと考えました。そして、多くの事実を知るにつれて、これを作品にし、世界中の人々に知ってもらうことが自分の職業の使命だと思いました。死を覚悟するような深刻な状況で「生」について考えたとき、私の生命だけでなく全ての生き物、植物、動物、昆虫を含めた環境のことを真剣に捉えるようになりました。そして、私はドキュメンタリーの映画作家として環境保護のために生涯を捧げようと思いました。
── 給食のオーガニック化をテーマに選んだのは?
毎日給食を食べる子ども達の姿を記録したかったのです。06年の3月、フランスの市民団体アン・プリュス・ビオからガール県にあるバルジャック村を紹介してもらいました。バルジャックはまさにその時期、給食のオーガニック化を進めており、村の外観は一見美しい。ですが、実は土や水は汚染されていて、そこに住む人々が苦しんでいる。その事実とのギャップが私のイメージとぴったりでした。
── 子どもたちが給食や校庭の畑での野菜栽培を通して変化していき、子どもから影響されて保護者の意識が高まっていく姿がありますが、監督は予想していましたか?
親が子どもから影響を受ける事は、食に関わらず多いと思います。親は子どもを愛していますから、子どもの要望には応えたいと考えるのが普通です。9~10歳の子どもたちは色々なしがらみに捉われてなく、自分の感じたことを率直に信じることができる。だから、世の中を変えていく強さを一番持っていると思います。
── フランスでは上映後どんな反応がありましたか?
上映後にディスカッションを行い、中には市議会委員がいて地方で環境問題についての議案を提出したいと言ってくれたし、母親たちにも現在起こっていることがよく分かってもらえたました。バルジャックの人達は、全国から共感の声が届けられ、この映画を誇りに思っています。
★この作品のフランス語原題は、「子どもたちは私たちを告発するでしょう」。今の食品がどれほど化学汚染に汚され、それを食べる人の多くが身体を病んでいっていることを訴えた。
★村では、子どもたちに安心したものを食べてもらおうと、給食をすべて有機野菜や自然食、つまりオーガニックに転換するという、大胆な変革が行われていた。
★この作品での衝撃は、いかに我々が自分たちが口にしているものに毒が多いか、ということ。メタボ予防にと、野菜を多く食べても、農薬に汚染された野菜を食べ続けると、メタボから脱する前に命がなくなる、と言ってもいいくらい、今の食物事情は人を危機へとおいやっているのだ。この作品を見たあと自分の無知を嘆くばかりでした。
★今の環境問題とは、人類の良心が試されていることだ。人類の歴史は、自分たちの欲望のために、自然を壊すことにほとんどを費やしてきた。その欲を捨てなければ、真に環境問題を考えることなどできないと思う。
★オーガニックとは、作る人間と食べる人間との繋がりを大事にしている欲のないもののはず。その意味では、オーガニックとは人類の良心そのものなのかもしれない、とこの作品から感じずにはいられなかった。
★ほとんどが事実と正確なデーテに基づいたものであるから、この作品が訴えるオーガニック食品の重要性には、観る者はどんどん惹きこまれてしまう。それほどに、今の環境問題、人類の未来への危機意識を我々は早急に高めなければならないことに、危機感が募ってくる。
オーガニックの意味は、英語の「organic」という単語が元で、「本質的な」という意味や、生物由来の物質を指す「有機物の」、「有機的な」などの意味がある。 オーガニック商品は、有機栽培や有機農法といった生産方法や加工方法から、食品・化粧品・衣類などの商品まで幅広く含むのが特徴。