無色透明に見える水道水ですが、そこには目に見えないさまざまな物質が含まれています。日本では、水道法で蛇口において0.1mg/L以上の塩素濃度が保たれるよう定められています。しかし塩素は鼻にツンとくるようなカルキ臭を生じさせ、味を損ねてしまうことがあります。また、塩素は有機物と反応してトリハロメタンを生成することでも知られています。発がん性が疑われるトリハロメタンは、なるべく体に取り込みたくないですよね。
煮沸の方法と安全に飲むコツ
水道水を煮沸する
水道水の塩素は熱に弱いため、煮沸によって除去することができます。ただし、その場合は沸騰してから「さらに15分以上」沸騰し続けることが大切。なぜなら、水道水には消毒処理の過程で発がん性があるとされる「トリハロメタン」が含まれている場合があり、水道水を沸騰させることでその量は2〜3倍に増え、沸騰直後には最もその濃度が濃くなるからです。水道水が沸騰してからさらに15分ほど沸騰し続ければ、ピークを超え水分中のトリハロメタンを除去することができます。
なお、気化したトリハロメタンを空中に逃がすため、やかんのフタは開けたままにしておきます。
水道水を汲み置きする
このほか、汲み置きした水道水を日光に6時間以上当て、紫外線によって塩素を分解する方法もあります。日光の当たらない室内で汲み置きするのも有効ですが、6時間ひいては1日放置しても塩素を完全に除去することはできません。室内だとかなり時間がかかってしまうので、水道水を汲み置きするのであれば日光に当てるのが無難です。なお、塩素を除去した水道水は殺菌作用が失われ雑菌が繁殖しやすくなる上、とくに夏場は温度が高く細菌が活性しやすくなるので、注意しましょう。
水道水にレモンを入れる
水道水の塩素を除去する際は、レモンを使うのもおすすめ。ビタミンCには塩素を分解する作用があるので、輪切りしたレモン一切れまたはレモン果汁を水に入れることで除去できます。このほか、ビタミンCが豊富なオレンジやキウイを入れても塩素を除去できるので、レモンがないときは代用するとよいですね。
水道水に活性炭を入れる
塩素を除去する方法としては、水道水に活性炭を入れるのも有効。活性炭には、目に見えない細かな隙間が無数に存在しています。そのため水道水に活性炭を入れると、その隙間に塩素が吸着し取り除かれるというわけ。くわえて活性炭にはミネラルが含まれているため、水道水に入れるとミネラルが溶け出し、まるでミネラルウォーターのような仕上がりになります。
市販の浄水器を使用する
塩素の除去方法には、市販の浄水器を利用するというものもあり。浄水器には活性炭をはじめとするろ過材が使用されており、そこを水道水が通ることで塩素を除去できます。浄水器を蛇口に連携すれば、あとはいつも通り水道水を使用するだけでOKなので、誰でも手間なく塩素を含まない水を味わえます。ただし、浄水器を手入れしないまま使い続けると、劣化により機能が低下します。浄水器のカートリッジは定期的に交換するようにします。
【+α】塩素を除去した後の注意点
塩素を除去した水道水は、いわば「殺菌作用を失った水」です。長らく放置すると雑菌が繁殖する恐れがあるため、早めに使い切るように。「すぐに使い切れない」場合は、塩素を除去した水道水をきれいな密閉容器に入れて冷蔵庫で保存するようにしましょう。ただし、それでも2日以内に使い切ることが大切です。
次は問題の「化学物質PFAS」。煮沸するとどうなる?
PFASに汚染された水道水の対策について考えてみましょう。 まず、煮沸消毒などの処理ではPFASは消えません。 消えるどころか、逆に煮詰めることでPFASの濃度は高まることになります。
浄水器の有効性には、活性炭やイオン交換樹脂(※-1)、逆浸透膜(RO)を使った浄水器では除去できる可能性があります。 PFASが心配な場合は、PFASを除去できる機能の付いた浄水器を使うと良いでしょう。浄水能力を保つために、浄水カートリッジを定期的に交換することも重要です。ただし逆浸透膜(RO)は美味しい水の必須要素であるミネラルまで除去してしまい、純水(※-2)に近い飲料水となるため、美味しい水にはなりません。
※-1イオン交換樹脂とは、水に含まれているイオンを掴み、代わりに元々自分が持っているイオンを離すことで、イオン交換を行う樹脂です。
※-1イオン交換樹脂とは、水に含まれているイオンを掴み、代わりに元々自分が持っているイオンを離すことで、イオン交換を行う樹脂です。
硝酸態窒素(硝酸性窒素/硝酸塩)は?
硝酸態窒素は土や水の中に含まれており、植物の栄養源になる一方で、水質汚染の原因や野菜への残留濃度が問題視されています。また食品添加物として「硝酸塩」と呼ばれ、水に溶けると「硝酸イオン」になりますが、すべて同義語。
窒素は植物が生長するのに欠かせませんが、化学肥料に含まれた窒素が土中で硝酸性窒素となり、水道水源となる地下水にまざることで、私たちの生活に届きます。
硝酸性窒素を体内に摂取しすぎると、メトヘモグロビン血症になったり、発がん性が高くなります。硝酸性窒素は加熱しても消えないどころか、反対に濃縮されてしまうので、乳児に与えるミルクには井戸水を使用しないようにしましょう。
日本の硝酸性窒素
環境省が1994年から3年がかりで河川・湖沼・沿岸部・地下水の硝酸性窒素の汚染実態を調査したところ、特に地下水の汚染が深刻で、全国5548ヶ所のうち259ヶ所で硝酸性窒素の飲み水基準値10mg/lを上回る数値を示しています。また、1994年の水道統計では、上記の基準値10mg/lを上回る「浄水場」は3件であったのに対して、1997年には12件とわずか3年の間で9件も増加しています。実は、現今の「浄水場」はこの硝酸性窒素を除去する機能は備えてはいないのです。
WHO(世界保健機関)では、亜硝酸性窒素(硝酸性窒素が還元 されてできるもの)に よる動物実験を行った結果、新たな毒性を発見、1998年1月、飲料水質ガイドラインとして、新たな基準値を制定しました。
これを受けて、日本でも 1998年6月、水道水質基準として0.05mg/lという非常に低濃度の基準を異例の早さで制定しています。
硝酸態窒素を含んだ水を飲むと…
・酸素欠乏症を引き起こす可能性。赤ちゃんが窒息状態になったケースも(ブルーベビー病)
・発ガン性物質を生成する可能性も。研究者も警鐘を鳴らしています! さらに、汚染された水は、危険なトリハロメタンが含まれている場合も!
硝酸態窒素を水道水から除去する3つの方法
1. 蒸留する(液体を一度気体にしたのち、再び液体にして集める方法のこと)
2.イオン交換によって硝酸態窒素の他すべての陽イオン、陰イオンを他の物質に換える。
3. RO(逆浸透膜)によってすべてのミネラルを物理的に除去(分離する)